家族

『テレビ電話』

便利なもの。そんな認識でしかなかった。

物心ついたときからそばにいてくれて、安心を与えてくれて、空腹を満たしてくれる。ときにはお金を与えてくれたりもする。

5月の第2日曜日、6月の第3日曜日、なんとなく世間のニュースに合わせて祝ったりするけれど当たり前だった。いることが、そして自分によくしてくれることが。

就職をして実家を離れる。それでも関係は変わらない。連絡は月に1回も取らないしたまに地元に帰れば、米をもらいに寄っていた。

日本を2年離れることが決まった。頑張ってねと送り出してもらいながら思う、20代の2年と50代、80代の2年は違う。人間の2年と犬の2年も違う。

途上国の人々は幸せそうだった。家族と健康でいられるから幸せだ、お前の家族はどうだ、離れて悲しいだろう、と。

なんとなく電話した。便利な時代になったものでテレビ電話が無料でつながる。電話に出た母親の顔にはいくつも線が刻まれていた。面と向かって話すことなんて何年ぶりなんだろう。初めて自分の大切なものだと家族を認識した。

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