2024.5.21 快晴

濱口竜介監督の映画「悪は存在しない」を観る。
蓮實重彦が朝日新聞で激賞していたので。「絶対に観ろ」と。
観終わったとき、かすかに手が震えていたような気がする。
そういう、とても静かで美しく、インパクトの強い映画。

映画館のある商店街の中の、小さなビストロで夕食。
初めての店だったが、ちょっと大雑把な料理で、そういう料理を作りそうなシェフだった。
料理はセンスだ。

店を変えて、コーヒーと甘いもの。
ここはとてもおいしいデザートを出す。
作っている若い男性は、大学で彫刻で学んでいたらしい。

どういう流れだったか忘れたけど、カート・ヴォネガットが読みたくなり、「はい、チーズ」を図書館で借りて読む。

あと、夫が買ってきた「出会いはいつも八月」(ガルシア・マルケス著、旦敬介訳)。
最初のうちはガルシア・マルケスらしいなと思って楽しく読んでいたが、だんだんと普通の不倫小説のようになってしまった。
未完のものを遺族が出版したという。本人はそれをどう思うか。

母の本は、「ウー、うまい!」(高峰秀子)と「チキンライスと旅の空」(池波正太郎)の二冊。

父の相続関係の手続きがほぼ終わり、一息ついている。
母は今、6度目か7度目のガンの再発中であるが、それでもなお、たぶん結婚後の人生で一番穏やかな日々を過ごしていると思う。
というか私たちにとっても、父の不在は、生まれて初めての穏やかな実家をもたらした。

少し前まで私は、父を施設に入れてそこで死なせたことに対して、簡単に言えば心の痛む思いを消せないでいたけど、今は、そのように人生を終えていった父に「ありがとう」という感情を持つようになった。
父があのような形であっさりと人生を閉じたことは、父から私たち家族へのの最大の贈り物だったと思う。