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ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語~第十三集③

思いがけず3回に分けることになってしまった「消えた火薬」の回の最後になる。


许多人都会有这样的习惯吧

考え事をしている時の癖を指摘されてしまった梅長蘇。はっとして指をこするのをやめてそれを認めつつ最後に言った。

许多人都会有这样的习惯吧
ーよくある癖では?

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第13話
梅長蘇

「许多」は「多い」「たくさん」、「许多人」で「たくさんの人」と言う意味になる。「都」は直前の「许多人」を指して、「みんな」「いずれも」という副詞、「会」は可能性を表す助動詞で、「~するであろう」「~するものだ」というニュアンス、「有」は存在を表す「ある」。「这样」はこのような、連体修飾の「的」を伴い「习惯」は「習慣」、「这样的习惯」は「このような習慣」となり、最後に推量の助動詞「吧」がつく。全体で「多くの人みんなにこのような習慣があるものでしょう」となる。

誰にでも癖はあるものだという一般論にして言い訳したところで、さもありなんと思った靖王の回答を次に見ていこう。

我认识的人中也有一个这样的

我认识的人中也有一个这样的
ー私の知り合いにも同じ癖があった

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第13話
靖王

「我」が一人称の「私」、「认识」は「見知っている」と言う動詞で、「人」を知っている時によく使われる。その後、連体修飾の「的」「人」「中」が続き、「私が知っている人の中に」という意味になる。「也」は前回も出てきた「~も」という副詞で、「有」はここでは「いた」になる。

後ろの「一个」は「1つ」という意味だが、今回は文脈上「一人」であるためだ。次の「这样」は先ほどの梅長蘇のセリフにもあった「このような」だが、指しているものは梅長蘇が言う癖の事である。最後の「的」は文末助詞で、既に発生していることを表す。この既に発生したことは話題になっている癖を持った人物の存在である。全体で「私が知っている人の中にも一人このような(=癖がある)の(=人物)がいた」。

この癖が第十二集でフォーカスされた理由が、ここで視聴者にようやくはっきりする。この癖は「林殊」の癖でもあり、正体を隠している梅長蘇が迂闊にも「林殊」であることを無意識にほのめかしてしまっていたのだ。この時内心相当慌てたであろう梅長蘇の気持ちを視聴者も一緒に味わえる。そしてドラマ視聴2週目の時は第十二集の時点で「あっ!」て思えてくる。

梅長蘇は靖王から聞いた毒草の効果から、この計画の首謀者の意図を「皇后を年末の祭礼に参加させないこと」だと想定した。でもそれは何のために?

場面変わってその祭礼で使う祭壇を準備した人物が何者かにそれを報告していた。報告された人物は後ろ姿しか映らない。

その後皇帝が碁盤に指した手の間違いを皇帝付きの宦官・高湛さまが指摘する場面になり、そこへ皇太子の母である越貴妃がやって来た。何気ない一場面だが、これは高湛さまが「賢い」ことを実は示唆している。高湛さまの動きはこの物語において地味に重要だ。

我说不行就是不行

梅長蘇はついに皇后が倒れた理由と火薬の件がつながっていることに気付いた。飛流が蜜柑を食べなかった事もポイントの一つだ。外出しようとする梅長蘇を妟医師が止める。梅長蘇はどうにか説得して外出させてもらおうとするが、絶対ダメだと言って許可しない。

我说不行就是不行
ーダメと言ったらダメだ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第13話
妟医師

「我」は一人称の「私」、「说」は「言う」と言う動詞、「不行」は「よろしい」「大丈夫」と言う意味の「行」を打ち消して「だめだ」「許されない」という意味になる。その後「就是」で意思の確定を強調する副詞が来て再度「不行」と続くところを見ると、相手に対する反発の気持ちを含んだ強調と見える。したがって「私がだめだと言ったら(絶対に)だめだ」と言う意味になる。ほぼ字幕は直訳であると分かる。

どうしても行かねばならない梅長蘇は飛流に命じて妟医師の制止を振り切った。妟医師が飛流にされたことは老体には酷ではなかろうか・・・

その後梅長蘇は言豫津の家である言侯府を訪ねた。梅長蘇は父親の言闕さまに用事があったがいないため戻りを待つことに。その際、言豫津と遊びに来ていた蕭景睿に言闕さまが20歳で単身敵軍営に赴き、弁舌で敵連合を崩壊させるに至ったことを語った。あまり父親とコミュニケーションを取ってもらえていない言豫津は知らなかった。言闕さまかっこいい。

戻って来た言闕さまに梅長蘇は、火薬を祭壇に仕込ませて年末の祭礼で皇帝を暗殺する計画をしていることを言い当てる。

かつて皇太子が影響力を持っていた戸部では、今も非合法の爆竹の製造所を営んでおり、皇太子の収入源になっている。そこで使われる火薬が運びこまれているのを新しい戸部証書の沈追が調べていたのだ。

それらに更に言闕さまは、自分が皇帝を暗殺するための火薬を紛れるように見せかけ、都に持ち込んでいた。言豫津が梅長蘇宅に持ってきた蜜柑には、微量だがその火薬の匂いがついてしまい、鋭い飛流がこれに気付き蜜柑を食べるのをやめてしまっていたのだった。

祭壇で火薬が爆発したら、皇帝と一緒にいる妃も死んでしまう。皇后は言闕さまの妹なので、彼女がその場にいなくていいように一時的に具合を悪くさせたのだった。

大逆でも主君殺しでもかまわない覚悟で計画したことを白状した言闕さまは、梅長蘇から「宸妃のためか?」と聞かれて驚く。宸妃は、靖王や林殊が敬愛する祁王の母だ。

言侯は太師(天子の師)の長男で、林燮(林殊の父親)と皇帝と幼い頃から一緒だったと言う。そして栄華や困難を共にと思っていたが、皇帝の即位後残ったのは君臣の立場のみで、しかも皇帝は即位後に言闕さまが慕っていた林燮の妹を奪い、宸妃にした。せめて宸妃が後宮で安泰ならよかったが、赤焔事案で自害し林家も滅ぼされたことで、世俗に見切りを付け冷酷な皇帝を殺す策を練っていたのだった。

このように話す言闕さまに梅長蘇は根本的に解決しないことを指摘する。皇帝を殺した後には内乱が起き、無実の罪で死んだ者たちの汚名は残り続け 祁王も林家も愛したも宸妃も浮かばれない。分かっていてもやるしかないと考えていた言闕さまに梅長蘇は、息子の言豫津を巻き込むことにもなるので、息子のために引き返せと説得するのだった。

🖌今回の気になる単語帳

令尊 lìngzūn
他人の父親に対する「ご尊父」という言い方。梅長蘇が言豫津に言闕さまのことを指して「お父君は?」と聞く時にこの言葉を使っていた。

不在乎 bù zài hu
気にかけないという意味。梅長蘇と靖王が人を用いることついての議論をしている時に梅長蘇のやり方に靖王が批判的なニュアンスで意見した時に梅長蘇が言った。また、同じ十三集内で言闕さまが梅長蘇に皇帝暗殺計画について指摘された時に「大逆でも主君殺しでも構わぬ」と覚悟を語る時にも使われた。

无所谓 wúsuǒwèi
どうでもよい、どちらでもかまわないという意味。「不在乎」を梅長蘇が使った時の靖王との会話の続きで登場した言葉。「殿下がどんな手段で私を試そうと構わない」と言った。続けて「なぜなら私には信念があるから 決して揺るがぬ信念が」と言いながら炭に手を当てて、赤く燃える炭がアップで映った。「赤焔軍」を連想させられる。

言闕さまの「不在乎」と梅長蘇の「无所谓」はいずれも字幕で「構わない」と訳がついた。これらのニュアンスの違いはいずれしっかり理解したいところだ。

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