ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語~第九集③
サブタイトル「見切り時」を扱うのは今回で最後だ。
梅長蘇が誉王に慶国公をあきらめるよう仕向け、その件で靖王府を訪ねるところから。
祁王哥哥选的地方当然不错
馬車で靖王府門前に来た梅長蘇は、自分が「林殊」として靖王とここへ初めて来た時の事を思い出す。靖王が17歳になって自分のこの屋敷を持つことができた時だ。屋敷の場所は靖王の兄・祁王が選んでくれたと言う。その時の林殊のセリフ。
「祁王哥哥」で「祁王兄さん」、「选的地方」で「選んだ場所」、動詞「選ぶ」の「选」に連体修飾の「的」がついて「地方(場所)」を修飾する。「当然」はそのまま「当然」「当たり前」の意味、「不错」は「すばらしい」である。「間違っている」と言う意味の「错」に打ち消す「不」がついて、「間違いない」から転じて「すばらしい」という意味になるのが面白い。
直訳すると「祁王兄さんが選んだ場所は当然すばらしい」、つまり「祁王兄さん」をほめているので、字幕の方がストレートに伝わりやすい。林殊は自分は同様の待遇を父親から受けていない、と靖王を羨ましがった。
咱俩好兄弟 我的就是你的
梅長蘇の回想シーンで、屋敷を持った靖王を羨ましがっていると、靖王が林殊に言った。
「咱俩」は「私たち二人」という口語表現、「好」はここでは「仲が良い」という意味で、後ろの「兄弟」を修飾して「仲が良い兄弟」となる。「我的」は「私のもの」、この「的」は単独で述語になる「~のもの」という所属を表す。「就」は強調の副詞で「是」は「~である」という述語になり、最後の「你的」はその前の「我的」と同じように所属の意味で「あなたのもの」である。
全体で「私たち二人は仲の良い兄弟だから、私のものはまさにお前のものだ」という感じだろうか。中国語の場合、2つの文の意味のまとまりが、それぞれ理由とその説明のかたちになっていれば、必ずしも「因为」「所以」などの因果関係を表す接続詞がなくても通じる、と中国語の先生が言っていたような気がする。
林殊と靖王が高貴な出自でなかったら、「俺たちは兄弟だから、俺のものはお前のものだぜ!」という感じになるが、いずれにしても日本人の感覚では、なかなかここまで言い切る関係性は、実の兄弟でも考えにくい。中国人にとっての「友達」を「兄弟」と表現する関係性の濃密さは、日本人のそれとは違うそうだ。思えば、三国志演義の劉備・関羽・張飛だってものすごく強い結びつきで描かれている。
そう考えると、字幕の「自分の屋敷と思えばよい」くらいが、日本人には受け入れやすい訳だったのだろうと想像する。
这里还是和以前一样 一点都没有改变
靖王府の門前で回想していた梅長蘇が、当時を懐かしんでつぶやいた言葉。
「这里」は「ここ」、「还是」は「相変わらず」「いまだに」「やはり」など、変化がないことを表す副詞である。「和」は「~と」で、「和以前」で「以前と」、「一样」は「同じである」なので、「这里还是和以前一样」は「ここは相変わらず以前と同じだ」という意味になる。
「一点」は「少し」、「点」は量詞の扱いであり、前に「一」がつくと少量であることを表す。そして「一」+量詞+「都」+否定形の動詞で少しも~ないという意味になる。この文章では、「一」+量詞「点」+「都」+否定「没有」+動詞「改变」の構造になっている。「没有改变」は「変化しない」という意味なので、後半の文章は直訳しても字幕通り「少しも変わっていない」になる。
靖王府に移っていた庭生に飛流は予定通り、金の鎖帷子を渡した。案の定靖王が、貴重すぎると返そうとしたが、「飛流から」という名目で結局庭生に渡すことができた。このシーンは・・・・・いや、何も言うまい。
靖王府では靖王と梅長蘇が誉王の件で話すシーンになり、そこに林殊のものと思しき弓があった。その弓についての場面が、梅長蘇=林殊とわかっている視聴者は切ない気持ちになる。
🖌今回の気になる単語帳
看茶 kànchá
茶を「見る」?って思ったら、古い言い方で、客にお茶を出す時に召使いに命じる言葉らしい。誉王が慶国公をあきらめる前、刑部の斉敏が訪ねて来て便宜を図るよう示し合わせるシーンにて。
死心眼 sǐxīnyǎn
一本気、頑固な、あるいはそのような人の事。誉王が慶国公を救うべく梅長蘇を訪ねて来た時に言った言葉「靖王那个死心眼的人 不好打交道啊(字幕:靖王は頭が固いため話が通じぬだろう)」から。先に字面から見たら、全く想像できなかった意味だった。
岳父 yuèfù
卓青遥が謝玉に呼び掛けた時の言葉。字幕は「義父上」だった。「舅」と同じ意味ではなく、妻の父を指す。恥ずかしながら、日本語でも「がくふ」と呼んで同じ表現があることをこの度知った。中国語から日本語を学んだ。
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