黄酒とは?<後編>黄酒代表の"紹興酒"について深堀!おすすめの飲み方なども解説
前回は、黄酒がどんなお酒なのかを解説いたしました。
今回は、黄酒で最も代表的な酒である"紹興酒"について紐解いていきます。
黄酒?紹興酒?何が違うの?そんな疑問をお持ちの方は、「中国酒=紹興酒」という固定概念をポイっと捨てて頂いて前回の記事からお読み頂けるとしっくりくるんじゃないかなと思います。
これから書く内容は僕のblogにまとめていますがnoteではその入門編のような簡易版としてわかりやすくまとめていきます。
そもそも紹興酒ってどんなお酒?
紹興酒は多くの方がご存知だと思いますが、「紹興酒って何のお酒?」と聞かれて即答できる方は、結構少ないのではないのでしょうか?
日本酒は米 (うるち米)の酒、ワインはぶどうの酒、ビールは麦の酒、というのであれば、紹興酒は米の酒、厳密には"もち米"の酒です。
さらに言えば、もち米に麦曲(麹)を用いて醸した黄酒。
おおまかな製法は日本酒と似ています。「作り方が似ているのに色や味が全然違うのはなぜ?」と疑問に思う方はこちらの記事がご参考になるかと思います。良かったらご覧になってみてください。
もち米に麦曲を使用する黄酒は結構ありますが、それらが全て紹興酒というわけではありません。紹興酒を名乗るにはさまざまな基準をクリアしなければなりません。
紹興酒の定義とは?
「紹興酒は紹興で作られてるから紹興酒なんだよ!」
日本ではあまり知られていないのですが、紹興酒の「紹興」は地名です。
浙江省紹興市。場所は上海の南西に位置し、大きさ8,256㎢、人口約450万人と日本から見ればなかなか大きな都市です。(四国で最も大きい高知県が7,104 km²、僕の住む神奈川県で最も人口の多い都市である横浜市は370万人ぐらい)
2018年、初めて単身で紹興へ行きました。観光地は賑わっているものの、水源豊かで昔ながらの街並みが心を落ち着かせてくれます。
この紹興市で造られているから紹興酒というのは一部合っているのですが補足が必要です。なぜなら紹興産であること以外にもさまざまな基準が設けられているからです。
中国にはGB(中国国家標準規格)といって、技術や製品に対する国家基準が定められています。日本でいうJIS(日本規格協会)のようなものですね。
紹興市で作られている黄酒でも、この基準をクリアしていなければ紹興酒とは言えません。伝統的な製法を守る紹興酒メーカー14社は2013年にそうした非紹興酒との明確な違いを理解してもらうため、日本で「紹興黄酒」という団体商標登録を取得しています。紹興酒の正式名称は「紹興黄酒」なのですね。
ちなみにこのシールが正式な紹興酒の証です。今年から新しくなり、今後は下のシールが少しずつ増えていくはずです。
紹興酒ってどうやって造られているの?
先にも書いた通り、紹興酒と日本酒の製法は似ています。すごく簡単ではありますが、こんな流れで紹興酒は造られています。
黄酒のところでも解説した通り、紹興酒も日本酒同様に甕の中で醸造する並行複発酵で造られます。
各製造工程を紐解いていくとさまざまな違いが見えてくるのですがそれは先の↑の過去記事を見て頂くとして、注目したい点は「カラメルの添加」そして「ブレンド」についてです。
紹興酒は今後カラメルを添加しなくなる?
紹興酒は着色のためにカラメルを添加します。これはここ数十年の動きのようなので2000年以上の歴史をもつ紹興酒においては新しい試みといえます。
最近ではノンカラメルの紹興酒が日本に入ってきました。
ノンカラメルの紹興酒を飲んでみて思ったのは「カラメルを入れなくても着色してるじゃないか!」「十分じゃないか!」ということですね・・・今後ノンカラメルの動きは加速していきそうな気がしております。
紹興酒は"ブレンデッド黄酒"
これも意外と知られていないのですが紹興酒はブレンドも重要な工程のひとつです。
※この解釈、ちょっと間違っているかもしれません。今紹興酒専門家資格のテキストを編集しておりますが、完成する頃には正式なブレンド方法が明確になる予定です。
ブレンドは紹興酒だけのオリジナルな工程ではなくて、ウイスキーでもありますし、日本酒もブレンドするようですね。(タンクごとの酒をブレンドして味の調整をすると唎酒師のテキストに書かれていました。)
しかし最近ではノンブレンド紹興酒も登場してきています。これも今後のトレンドとなっていきそうです。今までブレンドしたものが普通の紹興酒であるならば「純粋な原酒を飲んでみたい!」と思うのは自然なことですね。
紹興酒に合う料理・おつまみとは?
「紹興酒に何を合わせていいかわからない・・・」
黄酒専門店長時代によく言われました。紹興酒は家飲み文化が未発達で、「紹興酒にはコレ!」という定番おつまみがまだ存在しません。
まずは難しく考えずに、ご自宅でエビチリや麻婆豆腐、餃子など一般的な中華料理を食べるときに合わせてみることをおすすめします。
ただ数人で飲む場合は、みなさんが「美味しい!」と感じるような飲みやすい味わいの紹興酒を選んだ方が良いです。お酒選びが大事です。
僕がおすすめする銘柄は、ブログやYouTubeで紹介しているので気になる方は参考にしてみて頂ければと思います。このおすすめは主観だけではなくてお客さんなど周りの方の反応も加味した上でピックアップしています。
銘柄の話になってしまいましたね・・・。
おつまみの話に戻りますが、紹興酒は中華だけではなく、ジャンルの垣根を越えて楽しめる酒です。個人的に「こんな料理に合う!」と思うものを一覧にしているのでこちらもご参考頂ければと思います。
常温?ザラメ?紹興酒のおすすめな飲み方とは
紹興酒はさまざまな飲み方で楽しまれています。他の醸造酒と比べても多い方ではないでしょうか?ざっくりまとめるとこんな感じです。
どんな飲み方がおすすめなのかはその酒の特徴によって変わります。一般的には常温か熱燗ですが、日本ではロックや熱燗+ザラメ、干し梅投入などが親しまれている印象ですね。
個人的には、まず常温で味を見ることをおすすめします。そこで味の特徴を掴み、「ちょっと酸味が強いな」と思えば冷やしてみたり氷を入れてみる。「ヘビーだな」と思えばソーダで割ってみる。「ウマ!」と思えばそのまま常温で楽しんだり、ぬる燗にして旨味をさらに膨らませてみる。
味の特徴が掴めれば楽しみ方を広げることができます。
人それぞれ。酒もそれぞれ。紹興酒然り、です。
紹興酒ってどこで買える?
紹興酒はスーパーやコンビニではほとんど見かけません。あっても1種類。2種類あると「品揃えいいな!」と思ってしまうほど・・・。
お手軽さを求めるならば、やはりWEBです。Amazonや楽天などのショッピングモールは種類が豊富!僕が前に運営していた酒中旨仙などの専門店は他で入手できない中国酒が揃っています。
僕は、直接中華食材屋さんに行くことが多いです。その店舗が独自で仕入れている紹興酒と出会えることが稀にあるからです。
あとは、単純に楽しいから(笑)
よく行くのは、上野や池袋、横浜などの中華タウンですね。紹興酒だけではなくて白酒も一緒に見られるので、中国酒全般を見たい方はお店に直接行くのが良いかと思います。
一緒に紹興酒を楽しみましょう!
紹興酒は、古い歴史を持ちながらまだまだ未開拓なジャンルとも言えます。伝統を重んじるのは大切なことですが、少しずつでも革新的なことをしていくことでさらに文化を深めていけるはずです。
紹興酒、引いては黄酒は伝統を守るあまり、止まってしまっている部分が多くあります。僕はそこに面白さ、ポテンシャルを感じますし、まだまだこれからやれることがあると思っています。
日本でもっと気軽に紹興酒や黄酒全般を楽しんでもらえるようになったらいいなと。ただ、今でも十分「紹興酒好きです!」という方は結構いらっしゃるんですよね。ぜひぜひ一緒に楽しんで頂けたら嬉しい限りです!僕1人では無力です。。。
今後も紹興酒などの黄酒や白酒の情報を発信していきます。よろしくお願いいたします。