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紹興酒に粗悪品はあるのか?

干杯!

「日本で飲める紹興酒をリスト化してほしい」

そんなご依頼を受けて、ここ2ヶ月ぐらいでまとめておりました。ようやく完成!

紹興酒だけでなく、その他地域の黄酒(いわゆる地酒)もまとめて、合計150種ぐらいでした。取りこぼしがなければ・・・(たぶん、ある笑)

その中で、こんなリクエストもありました。


「粗悪品があったら、教えてほしい。」


粗悪品(そあくひん)
出来の悪い品。粗悪な品物。

weblio辞書より



そう言われたとき、僕は正直、困惑しました。一応、リストの中の紹興酒引いては黄酒は大抵飲んだことがあるのですが・・・少し悩んだ結果「ほとんどありません」と答えました。


この言葉の裏側にある気持ちは、なんとなくわかります。

それは、伝統的な製法で作られたしっかりとした味の紹興酒と、質が一定に達していないものを一緒にしたくない、という気持ちです。

実際に「粗悪品が流通しているから、紹興酒の支持率が上がっていかない」というお話もされていました。

そう言いたい気持ち、わかります。でも、僕はこの言葉に違和感を感じ、ちょっと違うなと思ったのです。

紹興酒の未発展と粗悪品の存在はあまり関係ないんじゃないかな、と。

なぜなら、そもそも日本にメインとして流通してきた紹興酒は、伝統製法を謳って作られた正統な中国トップクラスのメーカーのものだからです。

トップメーカーでなくても、日本に流通している紹興酒はほぼ中国が地理表示保護産品(原産地呼称)として認定しているもの。(シャンパンやテキーラと同じようなもの)

品質を国が認めているのです。

多くの人がメインメーカーの紹興酒を飲んできて、その結果が今ということ。

この現実をフラットに見たとき、粗悪品が紹興酒文化の発展の邪魔になっていると言っていいのかどうか?


もしもし万が一。超マイナーなメーカーが作る粗悪品の紹興酒があったとしても、その流通量はほんのほんの一部。なので、それらを口にしたことがある人もほんのほんのほんの一部といっていいでしょう。

それで「粗悪品のせいで紹興酒文化が発展していない」というのはちょっと違うよなって思います。

というと、紹興酒大手メーカーに携わっている方々は嫌な気持ちになるかもしれませんが・・・(批判をするつもりは毛頭ございません)

でも、この現実は直視しないといけないと思います。

僕は多くの紹興酒引いては黄酒をたくさん飲んできましたが、メーカーが書いていないようなマイナーで安価な酒でも「美味しい!」と思うものにたくさん出会ってきました。

それは、自分だけの感想ではなくて、周りの人にも飲んでもらったりしました。結果、「美味しい」と言ってもらうことが多かったです。

実際、YouTubeの企画で紹興酒振る舞い企画をしていたときの酒は20年物でありながら1000円で買えてしまうという、価格と質のアンバランスなものですが、20歳ぐらいの若者からも「これイケる!」という声をいただきました。


何をもって、粗悪品とするのか。


例えば、本物の紹興酒に味を似せて何か人工的に添加したり、ブレンドや熟成に失敗して風味が著しく落ちているものは粗悪品と言っていいと思います。

でも、紹興酒の正統の味って、どんな味なの?と。その基準が明確にない今、粗悪品として分類することは不可能ではないでしょうか。

僕が今関わらせていただいている紹興酒専門家資格の立ち上げは、この点で貢献できるのだと思いますが、まだ時間はかかりそうです(来年?)

例えば、たまに開封直後なのに既に濁っていたり、味が酸化して薄くなっていたりするものはあります。それは粗悪品じゃなくて、単なる「不良品」。


粗悪品って、なんだ?


ちなみに紹興酒ではないのですが、前に某コンビニで売られている300円台のチリワインと2000円ぐらいのナチュールワインを飲み比べてみたことがあります。

300円台のワインは、味はそれっぽくなっていますが香りに果実感がなく、工業的な印象を受けました。

それと同じようなことなのかな?と考えれば僕も粗悪品についてイメージが湧きます。

でも、僕は日本にある紹興酒について、このようなものに出会ったことは、ほとんどありません。

(ソムリエでも唎酒師でもないので説得力は低いかもしれませんね。。)


僕の味の捉え方もあると思います。


僕は、酒の味は大体が個性だと思っています。そう思うことが酒の生きる道を広げることに繋がるからです。

ある人にとっての「これはイマイチ」は、ある人にとっての「おいしい!」になりえます。人の味覚って本当に十人十色で。10人中9人がしかめ面をしたとしても、1人が「これ好き!」となることは、よくあります。

僕が今でも中華料理店に立っていたり、以前は黄酒専門のECサイトで販売する立場の影響があるかもしれません。酒の可能性を潰さないこと。それが自分の役割だとも思っています。

提供する側としては、9人のしかめ面に照準を合わせていると、その酒の可能性を狭めてしまうことになってしまいます。(もちろん、その感想も大事で、無視はしません。どちらもフラットに持っておくことが大切、という意味です)

これは粗悪品の存在とは少し話がズレているかもですね・・・。味の個性と、粗悪品は別か。


良し悪しを見極める視点は大事です。でもその基準もないのに、どこで判断すればいいのでしょうか?僕にはわかりません。

紹興酒は年数で評価されやすいです。「3年ものだからあまりよくない」「さすが20年もの!」

僕も最初はそういう目で見ていました。でも、今は違います。実際に黄酒専門店を運営して中華レストランに酒を卸しているとき、某銘柄で20年物よりう12年物の方が人気が高かったことがありました。一つの店舗さんだけでなく、複数店舗でそういう現象が起きたのだから、12年物の方が評価が良かったと言ってよいでしょう。だから年数で評価するのも、僕はあまりしないようにしています。

そもそも粗悪品という基準って、いるのかなぁ・・・日本酒だって、ワンカップは安価でおっちゃんなイメージがありますけどワンカップらしさ・良さは持っていますよね。粗悪品とは言わない。他の酒で粗悪品ていうものは、あるのでしょうか。

紹興酒の専門家資格も、酒の良し悪しではなくて、個性を見極められるためのものであってほしいなと思いました。そっちの方が可能性が広がるし、楽しいと思うんですけどね。甘いのかなー。


といったようなことをある程度は、LINEでやりとりして直接お話したのですが、結局「また直接お話しましょう」となり。今度お会いしたときに、↑の思いを伝えてみようと思います。


さて、明日は酒蔵見習いの日!日記が更新できていません。近々アップしようと思います。

▼前回log.


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