符亀の「喰べたもの」 20221211~20221217

今週インプットしたものをまとめるnote、No. 117です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

コワい話は≠くだけで。」(1巻) 景山五月(漫画)、梨(原作)

提供者から聞いたコワい話を、深掘りなどせずただ描いてまとめただけの怪談集です。

この「キくだけ」フォーマットがとても怪談と相性がよく、発明だと思いました。ホラーものの謎が残るモヤモヤに「そうしないと怪談が本当になりそうで怖いから」と理由づけることでストレスを減らせていますし、ちゃんとしたオチを付けなくていい分、情報提供者の思考や後日談エピソードに得体の知れなさを付与しやすくなっています。何よりそうまでして遠ざけている真相、複数の情報がなんらかの輪郭をかたどろうとした瞬間のコワさが増幅され、身の毛もよだつ恐ろしさを感じさせてくれます。「防御力」増強とフリとを兼ねており、素晴らしいフォーマットの作品でした。

最後に。本作は紙の単行本で購入し、特に帯を大切に保存することをオススメします。


セールだったので50冊ぐらいの漫画を注文し、20冊ほど届きました。そして1冊読みました。なにかがおかしい。


一般書籍

漫画だけでなく、こっちも数冊買ったんですけどね。もう持ってるやつすらほぼ進まなかったっすね。


Web記事

ひとり用ゲームを研究する

ソロダンProject」を踏まえながら、一人用のボードゲームについて考察された記事です。Board Game Design Advent Calendar 2022の13日目の記事でもあります。

一人用ボードゲームを作る際の問題がまとまっており、その裏を突こうと考え始めるための考察材料として使えそうな記事でした。例えば、「状態異常のようなステータス管理もなかなか大変」ならばボードゲームに実装しやすい状態異常を作る、とかですね。


引き算型のゲーム作りと、そのための細かい技術

ゲームデザインを足し算型と引き算型にモデル化し、引き算型における製作手法やデベロップ用の細則をまとめられた記事です。Board Game Design Advent Calendar 2022の14日目の記事でもあります。

「アイデアをとりあえず形にするテクニック」部分が、リファレンスとして有用だと思いました。個人的には、「終了条件は『規定ラウンド数』『レースゲーム=誰かがゴールに到達したら』『リソースが枯渇したら』あたりが一般的です。」「裏向きカードで読み合いをやらせたいなら、選択肢は不均等にしてください。」あたりが特に参照したい部分でした。


コンセプトからはじめるゲームデザイン

ゲームの作り始めからプロトタイプの作成までの方法についてのnoteです。Board Game Design Advent Calendar 2022の16日目の記事でもあります。

自分が欲しいゲームの特徴を「コンセプト」とし、それを従来のゲームにはないレベルにまで差別化しても長く (細かく) なりすぎなければいいコンセプトだという指針がとても分かりやすく、参考になりました。こういう発案法の参考文献はあまりないので、その点でも助かります。


ワーカープレイスメントのデザイン上の分類

Board Game Design Advent Calendar 2022が埋まっていたため普通に公開された、ワカプレの利点やパラメーターを整理されたnoteです。

シンプルに勉強になるnoteで、ワカプレを作る際には必ず読み返すことになるであろう記事でした。私のやつの代わりにアドベンドカレンダー枠で公開してもらうべきだった気がします。


マッチョなトリテを作った話

筋肉マッスルテイキング」のデザイナーズノートです。Trick-taking games Advent Calendar 2022の12日目の記事でもあります。

内容をちょっとだけ補足します。テストプレイで私が提案した「手札を全てドラフトするとプレイヤー負荷が重く、あまりにもだったため余り勝敗に関わらない弱いカードはランダムにして、強いカードのみドラフトすることで、ドラフトの内容を濃くしました」について。レーンフォローの強みは「ゲーム開始時にある程度展開がわかる (からとっつきやすいし、その想定をひっくり返すのが楽しい)」ことだと考えているのですが、手札全ドラフトだとそれが活きないんですよね。なのでこういうのを提案いたしました。

本作を紹介している私のnoteにも触れてくださり、ありがとうございます。くしくも私のBoard Game Design Advent Calendar 2022の担当回と同日で驚きました。


快楽の多層構造理論 ~『かぐや様』で考えるゲームデザイン~

書きました。


映画「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」を見ました。面白かったです。

同じ1週間を繰り返すタイムループもので、主人公含む社員が次々このループを確信していくが、ループを終わらせるためのカギと思われる部長だけがそれに気づかず…という話なのですが、当然観客は (タイトルにも入っているので) タイムループものだと思って観始めるわけです。しかし、映画開始時では主人公さえそれに気づいておらず、観客と主人公とで所持している情報量が異なるわけです。この差の埋め方が面白かったですね。(以下ネタバレ)

タイムリープなんてあるわけないと信じない主人公に、既にそれを確信している後輩2人は手を机に叩きつけ一言、「鳩です。」と伝えます。まずこの叩きつける音が主人公と観客の両方に驚きという共通した感情を与え、強制的に主人公への共感をさせます。その後タイムリープした瞬間に鳩が窓にぶつかった瞬間、主人公も観客も後輩の奇行の意味を理解し、かつ主人公に欠けていたタイムリープへの確信が付与されて両者の目線がそろうわけです。この「今そろいましたよ!ここからは主人公と同じ目線で世界を見てくださいね!」と明示する手法は「君の名は」で2回オープニングを流すなど別の映画にもあるのですが、主人公にも観客にも謎を与えそれが解決する瞬間に目線をそろえる技は、そろったことへの気持ちよさも感じやすく上手いなと思いました。

もう1つ構造的に面白かったのは「すべてを失って」の描き方なのですが、こちらは重要な展開のネタバレになるので言及は避けます。観てからこの記事を書くまで時間が空いてしまいましたが、まだ各地でやってるみたいなのでぜひ見ていただければと。

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