ワーカープレイスメントのデザイン上の分類
ワーカープレイスメントはケイラスまたはバスから始まり、今なお人気のメカニクスである。
本noteではワーカープレイスメント(以降ワカプレ)をいくつかの項目毎に分類する。
読者として、ボードゲーム製作者または作りたい方を想定している。特に初めて中重量級のゲーム製作を考えてる方の何かしらのお役に立てれば幸いである。
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アクションの入力と出力
戦略的なボードゲームは、基本的に「どうアクションを選択させるか」と「アクション選択の結果何をさせるか」の2つの柱で構成されている。
本noteでは前者をアクション入力、後者をアクション出力と呼ぶ。
入力例:ワーカープレイスメント、アクションポイント制、ロンデル等
出力例:エリアマジョリティ、セットコレクション、トラック上げ等
ワーカープレイスメントの定義
ワカプレには狭義と広義の定義がある。
まず狭義としては、ワカプレはアクションのロチェスタードラフトであるというもの。
ロチェスタードラフトとは、複数枚のカードが表向きでテーブルの上に並び、プレイヤーはそれを1枚ずつ獲得していく方式である。
本来だとこれをカタン式(またはスネーク式)のように行って戻ってを繰り返しながら行う。
ドラフトとして良く知られる「手札から一枚取って、残りを隣に渡す」はブースタードラフトと呼ばれる方式である。
アクションのロチェスタードラフトとはどういうことだろうか。
アグリコラを例に挙げて考えてみよう。
アグリコラのメインボード上のアクションプレイスを全て分割し、バラバラのタイルとしてテーブル上に並べたとする。
プレイヤーはアクションをする時、ワーカーを配置するのではなくアクションが書かれたタイルを1枚獲得する。
アクションが行われる毎にタイルは減っていき、他のプレイヤーが獲得したタイルはもう獲得することは出来ない。
このやり方でもワカプレと同じようなアクション入力が可能だ。
このアクションのロチェスタードラフトまたは排他的なアクションの行使、アクションの多面同時競りがワカプレである、とするのが狭義の定義である。
広義としてはUIとしてのワカプレである。
つまりワーカーがいて、それをアクションプレイスに配置するという見た目上の定義である。これを満たすならばそれは全てワカプレであるとする。
排他的である必要は無いため、既に配置されてるアクションプレイスに後からワーカーが乗っても良いし、「メインボード上のアクションプレイス」も必須ではない。
使い古されたワカプレの利点
べよさんが翻訳された以下の記事がある。
この記事では、ワカプレは使い古された安易な実装で、それを選ぶデザイナーは怠慢だと述べられている。
まずワカプレが安易な実装かどうか自体に議論の余地があるが、それを置いておくにしても、そもそも使い古された安易な実装が大きな利点の一つである。
例えばバラージは、ダム建設と水の流れ、そしてホイールのよる資源管理等、独自性の高いメカニクスが取り入れられたゲームとして有名な作品だ。
だが入力だけを見れば「安易なワカプレ」だと言えるだろう。
バラージのダム建設のように、出力として独自性の高いメカニクスを選択した場合、多くの場合入力は安易な分かりやすいメカニクスが選択されることが多い。
これは入出力どちらも特異性に溢れているとプレイヤーの情報過多や理解困難を招き、楽しさの焦点がブレてしまうからだ(または理解し楽しむためのハードルがかなり高くなってしまう)。
一度遊んだことのあるメカニクスであれば、プレイヤーはそのルールを簡単に理解することが出来、他のルールに注目出来る。
プレイのハードルを下げるために「安易な実装」は効果的に使用される。
ワカプレ自体の利点とは別に、ワカプレが長きに渡り愛された良くあるメカニクスとしての利点がここにある。
また、たとえ入出力ともに既存のメカニクスで構成されていたとしても、それが即ち「良くあるプレイ体験」とならないことは近年高評価を得たアークノヴァを見れば一目瞭然だろう。
ワカプレを取り入れたゲーム=安易なゲーム(またはデザイナーの怠慢)とするのは、ゲーム全体が見えてない意見だと言わざるを得ない。
これはもちろん他の安易なデザイン全てにおいても同じように述べることが出来る。
ワカプレのデザイン上の利点
ワカプレ自体のデザイン上の利点も改めて以下に列挙しておこう。
①デザイナーが想定したアクションパターンを同列に並べられる
②各アクションを競りにかけられる(インタラクションの発生)
③増員の快感と動機付け
④UIとしての分かりやすさ
⑤ワーカー駒を用いる
①デザイナーが想定したアクションを並べられる
麦、木、レンガ、羊、柵、建設、駒の移動、駒の配置等、ゲームに登場するこれらを「変数」と呼ぶ。
アクション入力において、扱う変数が多ければ多いほど、その組み合わせは多岐に渡る。
その組み合わせ方をプレイヤーの裁量に任せてしまえばたちまち分析麻痺に陥ってしまうだろう。
ワカプレでは、行えるアクションパターンが基本的に全て明記されている。
ウヴェ作品のようにアクションプレイスがメインボード上にバーっと大量に並べられると気圧されてしまうが、実際の選択肢として考慮しなくてはならないアクションは数個しかないことが多い。
プレイヤーに適度に悩ましい選択肢を、程よい数だけ提供しやすいのがワカプレなのだ。
また、全て「デザイナーが想定したアクション」であるため、入力におけるバグや唯一解を潰しやすいのが利点である。
②インタラクションの発生
狭義のワカプレであれば、各アクションを競り(早取り)にかけるため入力の段階でインタラクションが発生してくれる。
この時発生するのは個人攻撃等の直接的なインタラクションではなく「お互いやりたい事をやっていたら肘がぶつかった」程度の間接的なインタラクションである。
もちろん他者のやりたい事を読み取った上で、先んじてワーカーを置いてしまうこと(いわゆるカット)も可能だ。
アクション出力先に強めのインタラクションがある場合や、そもそもインタラクションをあまり強くしたく無い場合(箱庭系のゲーム等)に適切なメカニクスだと言えるだろう。完全なソロゲーを避けることも出来る。
③増員の快感と動機付け
増員に関しては後述するが、プレイヤーは「アクション数が増え、やれることが多くなる」ことに快感を覚える。
そのためワカプレの増員はプレイヤーに対する動機付けとして働き、序盤中盤の目標設定としても機能してくれる。
増員があれば、少なくとも「最初何をやれば良いか全く分からない」という状態は避けやすいだろう。
④UIとしての分かりやすさ
ワカプレは非常にUIに優れたメカニクスである。
・アクションは何があるか
・どのアクションが行えるか(ワーカーのいないアクションはどれか)
・あと何アクション行えるか(残りワーカー数はいくつか)
・誰がどのアクションを行なったか
これらが明瞭に盤面上へと記録される。
⑤ワーカー駒の存在
ゲームに「ワーカー駒」というコンポーネントを登場させられるのが利点であると考えている。
ワーカーが駒として表現されることで「働きに行く」という世界観がイメージしやすく、また「食わせなければならない」として食糧制も導入しやすい。
そのゲームにおいてワーカーが何であるか、は世界観とシステムを上手く結びつけてくれる。
水が必要だったり(アナクロニー)、食糧が必要だったり(アグリコラ)、または早起きさせて酷使するとボイコットしたり(フレスコ)等だ。
ワカプレの分類
前置きが長くなってしまった。ここからようやく分類していこう。
ここでは狭義ではなく広義のワカプレを考える。
「ワーカーがいて、それをアクションプレイスに配置する」というUI上の観点から見たワカプレである。
ワカプレをその特徴から、以下の項目に分けて考えてみる。
・増員の有無
・ワーカーにかかるコスト
・アクション発動のタイミング
・ワーカーの配置制限
また、本noteはTakeWatch氏の下記の記事と重なる点も多く非常に参考にしている。
【増員の有無】
ワーカーがゲームを通して増えることを「増員」と呼ぶ。
この増員のやり方によって、以下のように分ける。
①固定:ヌースフィヨルド、レイクホルト
②手動増員:アグリコラ
③自動増員:オーディンの祝祭
④条件達成型増員:ロシアンレールロード、シティ・オブ・ザ・ビッグショルダーズ、ガンジスの藩王、ハラータウ
①固定
ワーカー数がゲームを通して増えないタイプ。
固定のためアクション数の差がつきにくく、拡大曲線をデザイナー側でコントロールしやすい。
ただ資源が増えてくタイプのゲームだと、アクション数が増えないので「どんどん増えてく資源が余る」という事態が起こりかねない。
その場合資源自体も絞るか別の吐き先を作る必要がある。
昨今増えてきた「ワカプレ+α」のアクション入力形式の場合は、煩雑さを避けるため増員周りのメカニクスはばっさり削って固定にしてしまっても良いだろう。
ワーカー数は固定でも、ワーカーを用いないサブアクションやフリーアクションを多く入れることで変化をつけてる作品もある(ラセルダ作品等)
②手動増員
アグリコラを代表とする「ワーカーを増やすアクション」があるタイプ。
そもそもワーカー(アクション権)は、資源の中でもかなり重要度の高いところに位置している。
多くの場合、1麦もらうより1アクション追加で出来る方がめちゃくちゃ強いよね、という話。
この増員アクションをゲームに盛り込むことで、プレイヤーに対する
・序盤の方針
・強い快感
の2つを達成している。
ただし問題もいくつか存在する。
1つ目は拡大に大きく関与してしまうという点。
アクション権はめちゃくちゃに重要な資源のため、プレイヤーによってアクション数の差があれば、それ即ち拡大の差、ひいては勝敗の差に直結しやすい。
序盤で上手く増員出来たプレイヤーと出来なかったプレイヤー、どちらが勝利点を伸ばせるかといったら前者だろう(もちろん例外はある)。
これは初期のワーカー数も関係している。
例えば、初期2ワーカーから3ワーカーに増員したとすると、拡大率は1.5倍。これが10ワーカーから11ワーカーに増えたのであれば1.1倍である。
初期ワーカー数が少なければ少ないほど、増員アクションの重要性は高くなる。
2つ目は、序盤の自由度が失われやすいという点だ。
増員アクションが正義になってしまうと、序盤の数アクションは「増員のための最善手」にならざるを得ない。
その快感の強さ、ゲームへの重要度からプレイヤーへの動機付けとしても強く働きすぎてしまうのだ。
とくに増員へのルートが少ない場合、1ラウンド目の動きが完全に固定化を招いてしまい、それはあまりよろしくない。
もし手動増員を取り入れるのであれば、利点ではなく「欠点を改善する」という観点でデザインした方が良いだろう。
③自動増員
ラウンドが進むにつれワーカー数が自動で増えていくタイプ。
固定や手動と異なり、アクション数の拡大もデザイナー側でコントロール出来る。
固定にあった「資源がジャブつきアクションが足りない」という問題も解決しやすい。
アクション数が増えるのは快感が強く、それが自動であってもプレイヤーは気持ちが良い。
ただし「増員アクションというプレイヤーを惹きつけてやまない魅力のある選択肢とその達成感」が失われてしまうという欠点はある。
④条件達成型増員
何かしらの条件が達成されると増員されるタイプ。
条件としては「脇道にそれて無理矢理達成しないといけないもの」ではなく「ゲームを進めていくと自然と達成できるもの」が設定されていることが多く、その点では自動増員に近い。
ただし自らの選択により達成した快感が付与される点においては自動増員に勝るだろう。
また複数増員出来る場合、各々の達成条件は異なることが多く、プレイヤーへの目標としてもいくつかのパターンを与える事が出来る。
例えば「A、B、Cトラックの3本があり、各トラックを一定まで進めたら増員出来る」と設定されてるとすると、プレイヤー毎にABCのどれから上げてくかは異なってくれる。
手動と自動の良いとこどりのようなタイプだ。
迷ったらこの方式を取り入れるのが良いだろう。
⑤減少
ワーカー数が減るタイプ。
調べたところによると、ファウンダーズオブテォティワカンやthe Riverがこれにあたるらしい。が、どちらも語れるほどの知識が無い。
エイリアンフロンティアのように「ワーカーを減らすことで勝利点化出来る」というタイプのゲームはもっと多く存在するかもしれない。
次の項で述べる「ワーカーにかかるコスト」も増員大正義の抑制に働いてくれるが、この減少も一方向的な拡大の抑制に働いてくれる。
勝利点化するとエンジンが回らなくなる、という構造はドミニオンに近い。
ウィングスパンはワカプレではないが、ラウンドが進むごとに自動でアクション数が減っていくタイプのゲームである。
これはタブロービルドによって1アクションで出来る事が加速度的に増えていくため、その抑制のためアクション数を制限してると考えられる。
【ワーカーにかかるコスト】
ワーカーにかかるコストによって、以下のように分ける。
①獲得時コスト:アグリコラ、カヴェルナ
②配置時コスト:デモンワーカー
③維持コスト:アグリコラ、カヴェルナ、オーディンの祝祭
①獲得時コスト
獲得時にコストや条件が必要なタイプ。
手動増員の時と同じように、獲得コストは「序盤の目標」として機能する。
増員がしたい
→じゃあ増員アクションを踏まなきゃ
→その前に増員のための資源や条件を整えなきゃ
と、ゲーム序盤にプレイヤーがやることを指し示してくれる。
この条件や資源集めをどう達成するかについて、ゲーム側からルートが複数用意されてる場合、プレイヤーの選択が反映されやすく「早取り」としてのレース要素も追加することが出来る。
②配置時コスト
ワーカーを配置するたびにコストがかかる。
デモンワーカーのように「ワーカー毎に特徴が異なる」と言ったメカニクスの場合、その特徴の一つとしてワーカーの配置コストを設定することが出来る。
また使いたいワーカーが多ければ多いほどコストがかかるとなると、増員大正義とならず拡大の抑制に働くだろう。
後述する維持コストとの違いは「コストを先に用意しておかないといけない」という点だ。
③維持コスト
ラウンド終了時(またはどこかのタイミング)で、所持するワーカーの分だけコストを支払わなくてはいけないタイプ。いわゆる食糧制。
食糧制の大きな利点は
・序盤の目標設定
・拡大の抑制
の2つが挙げられる。
「ワーカーを増やした? じゃあ次は食糧基盤を整えよう」がプレイヤーに与えられる目標として機能する。
また増員に伴い支払う食糧も増えるため、トップ目の抑制にも働く。
ただし食糧制は「序盤の目標」「拡大の抑制」だけではなく「ノルマ」としても強く機能してしまう。
プレイヤーは基本的に自身のやりたいことをやっていたいため、ゲームルール側から強制されるノルマからはあまり快感が得られない。
そのため、最近の作品ではこのノルマ(食糧制)が強く課せられるワカプレは少なくなったように思う。
【アクション発動のタイミング】
タイミングにやって以下のように分ける
①配置時:アグリコラ、オーディンの祝祭
②除去時:クロックワーカー、スパイリウム、倉庫の街
③配置除去両方:レイダース・オブ・ザ・ノース・シー、狩猟の時代
④一斉発動:ケイラス、カーソンシティ
①配置時発動
ワーカーを配置したタイミングでアクションを行うタイプ。一般的に良く見るやつだ。
このタイプは、プレイヤーの意思決定(ワーカー配置)から盤面への反映(アクション発動)までのタイムラグが無い。
意思決定⇆反映のサイクルが早いほど、計画も立てやすいしテンポも良くなってくれる。
逆に言うと、他の発動タイミングではテンポを犠牲にして、このタイムラグを利用してると考える事が出来る。
そのためタイムラグを有効に活用出来ない場合は配置時発動を選ぶと良いだろう。
②除去時
ワーカーを除去した時にアクションが発動するタイプ。
このタイプでは、配置時と除去時のタイムラグによって盤面の状況が変わることをゲームに活かしている。
スパイリウムでは、配置から除去までの間にアクション発動コストが上がってしまう。
クロックワーカーでは、除去までの間に多くのワーカーを配置出来たらアクションが強くなってくれる。
このように、配置時発動に比べて、長期的な計画性であったりインタラクションを強くする事が出来る。
インタラクションに関して言えば相手の動き(ワーカー配置)を見てからでも邪魔が間に合うと言った点で、配置時アクションに比べて様々なインタラクションが生まれる可能性がある。
だがテンポを損なうといった欠点もあるため、それを補って余りあるほどの魅力的なシステムを提供出来ない場合は避けた方が無難だ。
③配置除去両方
配置と除去の両方のタイミングで発動するタイプ。
これは①配置と②除去の合いの子である、かというと決してそうではない。
この両方タイプでは「配置時のアクション」と「除去時のアクション」で異なる2つのアクションをさせている。
同じアクションを2回させてるわけでは決して無いのだ。
レイダース・オブ・ザ・ノース・シーでは、配置と除去を各々別のワーカーにすることで、プレイヤーは異なる2つのアクションを組み合わせる。
狩猟の時代は、配置から除去までのタイムラグによって、アクション効果が変更される仕組みだ。
単に配置と除去で同じアクションを2回打たせるだけの仕組みだと、ゲームに取り入れる意味合いは薄くなるだろう。
④一斉発動
手持ちのワーカーを全て配置した後、アクションが発動するタイプ。
このタイプでは、アクション発動タイミングがワーカー依存ではなく、アクションプレイス依存となっている。
ケイラス、カーソンシティともに、アクションプレイスには上流(スタート)と下流(ゴール)が設定されており、発動フェイズでは川の流れに沿うように順番に発動していく。
どのタイミングでどのアクションが発動するのか、また「川のどこまで発動するのか(ケイラス)」等に工夫の余地があるシステムだ。
【ワーカーの配置制限】
ワカプレの最も工夫しがいのあるところと言えるだろう。
様々な例が考えられるが、今回は良くあるパターンとして以下のものを列挙する。
①占有(アグリコラ)
②先置き有利(ハラータウ、炭鉱讃歌、狩猟の時代)
③色合わせ(レイルロードレボリューション、アナクロニー)
④ダイスプレイスメント(ガンジスの藩王、美徳、マルコポーロの旅路)
⑤ワカプレ+デッキ構築(デューン、アルナック)
①占有
既にワーカーが置かれてるアクションプレイスにはもう置けないというタイプ。後置き不可とも呼ぶ。
アグリコラを始めとする狭義のワカプレがこれにあたる。
アクションの早取りになるため、他者とのインタラクションは強くなる。
ただラウンド後半でも選択肢が無くならないよう、ワーカー全員が入れるスペースを用意しなくてはならない。
・アクションプレイスを多く用意する
・ワーカー数を少なくする
のどちらかの施策が必要だろう。
・余ったワーカー1体につき3資源もらえる
等の救済措置が用意されてることも多い。
このタイプは先手番の有利さが際立つため、スタートプレイヤー周りのシステムを工夫する必要があるだろう。
・スタピーアクション
・フェルトトラック:あるトラックをコストを払ってあげておくことで、先手番を獲得出来る
・先パスアクション:先に手番を終えた人が、次の手番順とボーナスを決められる(ワイナリーの四季)
また第一ラウンド目の手番については、初期資源に傾斜をつけて対応する。
このタイプの最も大きな欠点は「プレイヤーの不公平感」だろう。
こういったゲームは、多くの場合何かしらのコストを支払い次ラウンドのスタートプレイヤーを獲得する。が、そうなるとコストを支払わずに2番手となったプレイヤーが最も有利となりかねない。
ワカプレでは“今まで”この問題が頻出していた。そのため、多くのボードゲーマーの中にはバイアスとして蓄積されてしまっている。
たとえ新しく出たワカプレが、データ上数値上は手番差を少なくしていたとしても、この「プレイヤーが不公平に感じる」という感情は数字では解決出来ないのだ。
それを払拭するほどの分かりやすい解答(システム)が提示出来なければ、きっとこの「不公平感」に悩まされることだろう。
②先置き有利
アクションプレイスの占有はされず後置きも可能だが、先に置く方が有利である。というタイプ。
先置きワーカーに恩恵があるタイプ(狩猟の時代)と、後置きワーカーに追加コストがかかるタイプ(炭鉱讃歌、ハラータウ)がある。
炭鉱讃歌、ハラータウではワーカーを多く支払うことで後置きが可能だ。
この方式だとプレイヤーにワーカーを大量に与える事が出来、かつワーカー1体=1アクションという図式ではなくなるため、ワーカーの資源価値を大きく下げることが出来る。
ワーカーの価値が下がれば、デザイン上の取り回しが楽になる。
増員で述べた欠点も解消される事が多い。
③色合わせ
ワーカーにいくつかの種類があり、対応したアクションプレイスにしか入れないというタイプ。入れるが色が合わないと追加コストがかかったり、または色が合っていればボーナスが得られるタイプもある。
後述するがダイスプレイメントはこのタイプの亜種である。
アナクロニーでは4種類のワーカーがある。
種類によって、アクションプレイスに入れない、コストが安くなる、ボーナスがもらえる等のルールが付与される。
レイルロードレボリューションでは、5色のワーカーがおり、色毎にもらえるボーナスが異なる。
このタイプのゲームの欠点は「ワーカーの区別をどうするか」というUI上の問題である。
基本的にワーカー駒はプレイヤーカラーで色分けされている。その上でさらにワーカー種ごとに区別しなくてはならない。
レイルロードレボリューションでは、配置するアクションプレイスを個人ボード上にすることで、プレイヤーカラーでの区別の必要を無くしている。
アナクロニーでは木駒ではなく、アイコンが描かれたタイルとプレイヤーカラーのキャップを組み合わせる事で区別している。
「分かりやすく区別する」を侮るなかれ。
パッと見で盤面の状況が読み取れないと、理解困難に陥り、プレイヤーのストレスは非常に上がってしまう。
ワーカー種をいくつも作って、種類毎に色んなアクションを出来るようにしよう。
というのはとても面白そうなシステムに見えるが、この「パッと見で区別出来る」というハードルが越えられないなら実装すべきでないだろう。
④ダイスプレイスメント
色合わせのUI上の問題を解決したのがこのダイスプレイスメントである。
ダイスであれば、プレイヤーカラーに分けることも可能であるし、出目によってパッと見で数値を確認出来る。
もし色合わせパズルをさせたいのであれば、下手にワーカー駒にこだわらずダイスにしてしまった方が実装は容易だろう。
ダイス自体の特徴(ロールやランダム性)が強く反映されてるように思えるが、実のところメカニクス的にはワーカーに1-6のバロメーターが追加された色合わせワカプレである。
そのため
・指定されたダイス目で無いと入れない(ガンジスの藩王、エイリアンフロンティア、マルコポーロの旅路)
・指定されたダイス目以上または以下でないと入れない(オリジンズ、美徳)
・ダイス目の数値を割り振る(ティルトゥム)
という、1-6のバロメーターを活かしたシステムが搭載される。
グランドオーストリアホテルではダイスをピックさせるが、これも1-6のバロメーターが追加されたことにより6種類に区別されたリソースとして取り扱う事が出来るからである。
ダイスによるランダム性はワカプレに特に関与しないので割愛する。
上杉さんの以下のツイートが参考になるだろう。
⑤ワカプレ+デッキ構築
デューン、アルナック等、最近流行りのワカプレ+デッキ構築であるが、ワカプレ単体の制限に注目すれば「手札によってワーカーの行き先が指定されている」という、こちらも色合わせパズルの亜種だと考えることが出来るだろう。
先の色合わせと異なるのは、アクションプレイスによって配置制限を受けるのではなく、自身が構築したデッキによって制限を受ける点だ。
自身がマネジメント(デッキ構築)した結果であるため、強制的な制限よりもプレイヤーの納得感や満足感に繋がりやすいのが利点だ。
ただ実際のところ、これはデッキ構築とワカプレという異なる入力メカニクスを繋ぎ合わせる苦肉の策に思えてならない。もちろんこれは個人的な感想にすぎない。
ワカプレ+αは今後も発展性のあるメカニクスである。お互いを活かせるさらに素晴らしい組み合わせの誕生が楽しみだ。
まとめ
ワカプレを項目ごとに分類しながら、デザイン上の特徴を述べた。
これ以外にもワカプレに関係する細かいメカニクスはいくらでもあるが「良くあるワカプレ」の構成要素はある程度網羅出来たであろうと思う。
中重量級のゲームをデザインする場合「面白いシステム思い浮かんだ!」が出発点となることが良くある。
もしあなたのそれが「面白い(出力)システム」であれば、入力は分かりやすいワカプレを選んでも良いかもしれない。
また「面白いワカプレ」を思い浮かんだのであれば、既存の構造と照らし合わせてより独自性を強める事が出来るだろう。
どちらの場合でも、デザインの一助になれば幸いである。
おまけ『リモートワーカープレイスメント』
ワーカープレイスメントの多くは、「テーブル上のアクションプレイス」に「手元からワーカー」を配置するメカニクスである。
これを逆にして「テーブル上のワーカー」に「手元からアクションプレイス」を配置するメカニクスにしたらどうだろうか。
メインボード上には街が広がっており、各ワーカーの家が点在している。
我々プレイヤーは、家でリモートワークをしてるワーカーに仕事(アクションプレイス)を割り振るのだ。
ワーカーによっては仕事を多く引き受けてくれる。仕事が早いワーカーもいるだろう。または、多くも早くも無いが高品質な納品をしてくれるかもしれない。
ゲームでは手札として持った様々なアクションカードをワーカーに配置していく。
ワーカーはアクションカードを順番に処理し、発動してくれる。
ワーカーには各々アクションカードの配置上限や、1ラウンドでの処理数が決められている。またアクションに付随してボーナスを発動してくれるワーカーもいる。
色合わせの項目でも述べたが「ワーカー駒の特色付け」はかなり難しい。
木駒はカードと異なり、載せられる情報量が非常に少ないからだ。
その点ボード上にであれば多くのアイコンを載せることが出来る。
これならワーカー毎の特色も出しやすくなるという寸法だ。
だがこれだと、メインボード上に並ぶワーカーはアイコンやイラストで良い。ワーカー駒である必要性が薄い。
となると、駒として動いてもらうために、たまには出勤してもらって、通常通りのワカプレとしてアクションプレイスに配置しても良いかもしれない。
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