符亀の「喰べたもの」 20201115~20201121
今週インプットしたものをまとめるnote、第九回です。
漫画
「かぐや様は告らせたい」(20巻) 赤坂アカ
シリーズ累計1300万部突破おめでとうございます。
既に面白さの分析は本連載の初回で終えているわけですが、こんなところで取り上げるまでもなく面白さは知れ渡っているわけですが、面白かったので取り上げます。だって石上好きなんだもんアタシ。
冒頭の話で読者をぶん殴り、そこからあっち方面をジメジメしすぎないようにしつつも掘り下げ、バレンタインとか成績関係の話を天丼を交えつつ中盤に挟んで軽やかに最後のクライマックスと次巻への引きにつなげる。漫画がお上手ですね。そしてネタバレ配慮しつつ褒めるの難しいですわね。
石上は真正面からの好意やハッピーエンドが似合うキャラではないところがありますが、1巻分使って解釈違いにならない着地を見せていただいてありがたい限りです。そして次巻も石上の話ってことですよねこの引き。やったぜ。
「九龍ジェネリックロマンス」(3巻) 眉月じゅん
こちらも第六回で紹介した作品です。なので概要はそちらでご覧ください。
2巻もそれ使ってましたが、冒頭に過去エピソード入れるのはズルいと思います。この作品における過去描写って読者の心えぐってくるタイプですし。そして次の話で速攻現在との対比を突っ込んで追撃してくるのもね、もう我々のHPは0ですよ。
上の「かぐや様」もそうでしたが、単行本としてまとめられた時の構成まで考えられている作品は強いですね。単話販売や読み放題の時代でそういうの考えている作家さんはもう絶滅危惧種なのかと思っていましたが、やはりそこまで計算されているほうが面白く思います。単行本派としてはありがたい限りです。
「19番目のカルテ 徳重晃の問診」(2巻) 富士屋カツヒト(漫画)、川下剛史(医療原案)
分野ごとの専門医に分業化した医療界において、本当に必要な医療を見つけ出すためのジェネラリストである総合診療医が患者と対話していく話。
正確さを担保しつつ専門性のある内容を読者に説明しなくてはならない医療漫画とはいえ、情報量もセリフ量も多すぎる気はします。そのため画面にメリハリが利いておらず、見せ場が埋没している印象も受けます。
ですがセリフ量が多いのは対話を重視しているこの作品のコンセプト的に正しく、それだけの文章量でも読みにくく感じないわかりやすさが本作の特長の一つと言えます。
そして、単純に話が面白いです。この話では、主人公たちが患者と対話してその人の「病い」を見つけ、どの科の専門医にバトンタッチすべきか考える様が描かれています。ですので、医療モノによくあるドラマティックな一発逆転のような「そうなっている時点で医療的にアウト」なシーンに固執する必要がなく、その分人間ドラマに注力できているのが大きいかと思います。
その人間ドラマもお涙頂戴的なものではなく、ある意味では盛り上がりに欠けているとも言えるかもしれませんが、「患者さんに向き合う」という点だけでここまで面白く描けるというのがとても興味深いと思います。
「戦争は女の顔をしていない」(1巻) 小梅けいと(漫画)、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(原作)、速水螺旋人(監修)
積んでたなあ。(2020年1月発行)
第二次大戦時独ソ戦で従軍した女性たちへのインタビューをまとめた同名の書籍を漫画化したものです。なお、タイトルはロシア語で戦争を指すвойнаが女性名詞であることからつけられたものです。
戦争モノであり、あえて内容にはあまり触れません。ここで紹介したいのは構成の妙についてです。まず1話目は、看護師から洗濯部隊になった女性の話なんですね。ここで原作を知らない人たちは、タイトルも合わせ(ステレオタイプな)「女の闘い」についての作品だと思うのではないでしょうか。が、そこから戦場で夫を喪った軍医を描いた第2話、そして狙撃兵2人を前後編で扱う第3話と、一気に「普通に」戦う女性へとスポットライトが当たるわけです。
今ですら戦争は男が戦うものであると考えられ、作中でも性別を理由に志願がなかなか認められなかった女性のエピソードも出てきます。ですがそんな中でも男と同じように戦った女性も、女ならではの苦しみとすら戦った人もいた。それについて作中では、女性だからと賛美することも卑下することもありません。ただ淡々とインタビューに画というディテールを載せながら漫画化しているだけです。しかし、1話目が「男と違う戦い」に見える(洗濯が女の仕事なわけではないのに)エピソードな分、そしてインタビュー相手が女性のみである分、なによりタイトルに「女」と入っている分、読者の頭には「男ではなく女」の意識がこびりつくことでしょう。その残酷さというか既成概念のようなものを、作中ではほぼピックアップせずに構成だけで浮かび上がらせる。語られないからこそ意識してしまうような、そんな作り方がなんとも上手いと思います。
「あなたへの日記」 青春ノ敗北
「微妙な力を身につけた女の子の話」 山田しいた
「骸区」 鈴木祐斗
「ロッカールーム」 鈴木祐斗
Web読み切りから4つです。
ちょっと数が多いので1つ1つへのコメントはしませんが、全てベクトルは異なりながらも面白い作品です。リンクから無料で読めますので、どうぞご自分の目でお確かめください。
今週前半は読みたい新刊が来ずにゲムマ後の渇望が満たせないのではと不安でしたが、後半で一気に供給されて助かりました。まあ、足りなかったので2万円分ぐらい注文したんですけどね。
一般書籍
「NHK『100分de名著』ブックス 孔子 論語」 佐久協
30分番組×週1回×1ヶ月で名著の解説を行うNHKの番組を書籍化したシリーズの1冊で、タイトル通り論語についての巻です。
このシリーズ、専門家が関連作や前提知識をまとめつつ解説してくれるので面白いんですよね。今まで「荘子」と「カラマーゾフの兄弟」は読んでいたのですが、それ以外に5冊ぐらい積んでいたのでやっと1冊崩しました。
上記2冊に比べ、本巻は筆者が高校教師ということもあってかかなりとっつきやすいです。その分漢文の書き下しについてはイメージ優先というか、「そんなん書いてませんやん」みたいなところまで書いちゃっていますが、しっかり原文も併記されているので見比べながら読めば問題ないです。
元が名著なので学びも多いですが、解説部分においては「自己」や「吾」についての記述が面白く、目から鱗が落ちる思いでした。また、実は私は日本の「天道思想」についてそこそこちゃんと学んだことがあるのですが、これが孔子や儒教によって発展した思想だというのは本作を読むまで忘れておりまして。やはり昔とった杵柄状態で放置するのはよくないと思いましたので、どこかのタイミングで学びなおしたいと思います。たぶんここで宣言しておけばサボらんやろたぶん。
という訳で、久々の一般書籍でした。
前々から読んでるアピールしている本はまだ読破できていませんし、「100分de名著」シリーズは積みまくりですし、今週2冊買ってさらに注文したりもしましたが、まあゲムマ終わったしなんとかなるでしょう。
Web記事
「“ドア”から見通すゲームデザイナーの仕事 米国開発者による『ドア問題』」
ビデオゲームに関わる人たちの仕事を、ドアを例にまとめた記事。予想外のボリュームと畳みかけ、そしてラストのオチが美しいため、一度読んでいただきたい文章です。
「とある漫画雑誌が、一年かけて表紙に仕込んだ伏線がめちゃくちゃすごかった。(※百合姫)」
百合姫という雑誌は1年同じ作家さんに表紙絵を制作してもらうそうなのですが、2020年版の担当者さんがやってくれましたよという記事。
普通に記事が公開された直後(10月中旬)ぐらいに読んでいたんですが、何故か紹介し忘れていて今日に至りました。考察記事ということで私から新たに何か付け加えたりはしませんが、「1年かけて表紙に仕込んだ」の部分は多分正しいと思いますし考察の熱もすさまじいです。こんな考察書かれるような作品作りたいわね。
「月間チャンピオン連載の『チキン』、アイマスネタが多すぎてファンでも把握しきれない」
バカ!
「ロックマンは「答えのあるアクションゲーム」だと再定義した『ロックマン11 運命の歯車!!』」
製作者がロックマンのコンセプトを「『答え』のあるアクションゲーム」と言っているのに着目し、その観点から最新作を論じた記事。
コンテンツの面白さの本質を突き止めようとする分析や、それについての製作者からの言及って、面白いですよね。拙作も誰か分析してnoteとかゲムマブログとかに投稿してくれませんかね。ここで紹介しますので。
ボードゲームから、アニメなどのマルチメディア展開ができるコンテンツができないかという記事。
記事と別の観点から考察いたしますと、端的に言ってマルチメディア展開を狙っている作者がほぼいないというのが一つの答えになるかと思います。言い換えれば、「ボードゲームが作りたいんであって、他のメディアの制作には興味がない」という人が多いのだと思います。そもそもマルチメディア展開をゴールとするならもっと適した一歩目がありますし。
とはいえ近年はIP的な作り方をしているゲームが売れる傾向にあると思います(「売れる」ゲームについては個人的に考察していますし「キャラはっつければ売れる」とか言うつもりはないですが、口コミやファンコミュニティの形成においてそういうのが強いのは確かです)し、売り上げを全部拡張やグッズの制作につぎ込む人が多いだけであと一桁売り上げが多くてお金と時間が余ればやりたい人もいると思います。むしろそういう人を見つけるパトロンがいるかの方が重要かもしれません。「講談社ゲームクリエイターズラボ」とか、そういう側面もあった気もしますし。
最後に宣伝しときます。
拙作のカードチェス「リーサルチェックメイト」が、ボドゲ―マ様にて委託頒布されることとなりました。
…委託頒布お願いしてるのに作品ページに説明書いてないのマジ?売る気ないやろこいつ。
もう一つ宣伝です。
東京(の)大学に所属している縁で、東大の学園祭である駒場祭(今年はコロナ禍の影響でオンライン開催)の企画の一つ、コミックアカデミーに参加させていただきました。
私は該当ページで宣伝させていただいているだけですが、他のサークルさんにはライブ配信を行うところもあるようですので、どうぞご覧ください。
なお、申し込み時期の関係で上記ボドゲ―マ様の通販リンクは載っていません。残念。
今週はゲムマが終わった解放感からか、3連休の余裕からか、文量がすごいことになりましたね。ここまでで4300字超えだそうですよ。3時間ぐらい書いて日付も変わってるみたいですよ。すごいね。
来週からはもう少しまとめてコンパクトに書こうと思いますので、今回については読み飛ばしつつ大目に見ていただければと思います。読み切った後に言うな。
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