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とある漫画雑誌が、一年かけて表紙に仕込んだ伏線がめちゃくちゃすごかった。(※百合姫)


これまでの百合姫表紙

 ごきげんよう、みかみてれんです。いつもはライトノベルを書いたり、漫画原作を作ったり、百合妄想をしています。

 さて、本日はですね。百合専門の月刊漫画雑誌『百合姫』の表紙について、おしゃべりさせていただこうと思います。

 ふつう漫画雑誌の表紙というと、表紙を飾るのってだいたいは連載作品じゃないですか。あるいはグラビアの女の子だったり。

 でもそこが百合姫はちょっと変わっていまして。最近の百合姫は毎年ひとりのイラストレーターさんが、1月号から12月号まで担当し、表紙を描き続けるという『カレンダー方式』を取っているんですよ。


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(2017年度表紙担当、べにしゃけ先生)


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(2018年度表紙担当、フライ先生)


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(2019年度表紙担当、白身魚先生)


 どれもこれも、すばらしいイラストですよね……。最愛……。

 百合姫とはその名の通り、女の子と女の子の感情を描く物語である『百合』を題材としたジャンル漫画誌です。

 女の子と女の子の出会い。柔らかさ。かわいらしさが存分に描かれていて、まさにこれこそ『百合姫』! というイメージぴったりの表紙になっていると思います。

 とまあ、こんな風に、毎年がらっとデザインが変わって、次はどんな表紙が来るのかなあ、というのがわたしの毎年の楽しみだったんですね。


2020年度版百合姫

 そしてそして、来たる2020年度版1月号の表紙!

 ついにイラストレーターさんが発表となりました。

 その方は──。


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 ろるあ / 𝙍𝙤𝙡𝙪𝙖 先生の降臨です。

 エッッッッッッッッッッッッッッッモ

 どことなくサイバーパンクを感じさせる服装に、ふたりの女が腕を組みながら歩く情景。ばっちばちのメイクにでっけえイヤリング、黒を大胆にあしらったデザイン、無限に連なる justice for girls?

 そして『在女人爱女人的时候』(※女が女を愛する時)の一文。

 今年は嵐が巻き起こる…………わたしは、そんな予感を抱いておりました。


 百合姫の表紙イラストは今までの通例ですと、だいたい登場人物が固定化されていて、その子たちのストーリーが描かれてゆくんですよね。

 しかしろるあ先生の表紙は毎月毎月、その瞬間のエモさの最大値を更新するかのごとく、ただただ『ふたりの女』を見せつけてきます。 

 百合姫編集部が「まだ2020年??? 遅すぎる! これが2080年の百合姫じゃい!!!」と思っていたかどうかは定かではありませんが、凄まじい““圧””のある表紙の連発です。


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『激烈的接吻前五秒』(キスで殺す五秒前!)

 少女たちを囲むように円を描くロゴデザインは、既存の概念をぶっ壊すような作りで、しかし顔を近づけた彼女たちの表情と赤らんだ頬、ぎゅっと握られた手のひらは、間違いなく『百合姫』以外の何物でもない──。


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 すごいですよねこれ。

 銃弾で打ち抜かれたような“衝撃”が走り、そして、眼鏡にほんのりと映る相手の顔。百合姫の文字なんてもう『え? 邪魔じゃない?』とばかりに右上にいっちゃってる。女の子の間には何人たりとも立ち入ることはできぬ、それが表紙のタイトルであってもな! とばかりに空気読んじゃってる。


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!?!?!?!?!?!?(雑誌の表紙です)


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 11月号。点滴に繋がれた女の子と、白衣の女性。あまりにも世界観すぎる不穏なイラスト。患者を見つめる白衣の子の眼鏡の奥の目なんて、世界が滅んだとしてもこの子だけは絶対に生かすんだ、とばかりに細められてやばすぎますよね。『给我们的故事』(※私たちのための物語)の文字もやばい。


 そして、ついに先日、フィナーレである12月号が発売となりました。

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 裸足で草原を走るふたりの女の子。まっさらな笑顔を浮かべていて、この表紙を前にした人間の感情を『尊い』と名付けるのだな、みたいな発見がありますね。

 ちなみにこの表紙は、折りたたまれている箇所を広げることによって、ポスターのような一枚絵になる、というギミックが仕込まれていて、わたしを大いに沸かせました。わたしを。

 なるほど、今回は統一性のあるストーリーが描かれたわけじゃなかったけれど、とても素敵な一年のイラストだったなあ。百合姫も新しいことにチャレンジしていくんだな、素晴らしいな……。

 と思った後に、ふとわたしは気づきました。


 あれ……?

 11月号と12月号の、蝶の髪飾りをつけた白衣の女の子……同一人物じゃない……?

 しかも…………。

 

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 ここに書いている文字、VRシミュレーター、だよね?


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 女の子が見ている映像(?)って、今までの百合姫の表紙じゃない?

 わたしは考えを改めました。

 ──ひょっとしてこれって、実はひとつのストーリーが描かれていたのでは!?


考察開始

 ──というわけで、考察がしたくなってしまったので(前フリ終わり)します。

 何度も表紙を見比べながら、悩むこと数時間。ようやくわたしの中でぼんやりとした結論が出たので、お話ししますね。

 そう、11月号に描かれた『私たちのための物語』とあるように、これは最初からすべて、患者と白衣の、ふたりの女の子の物語だったんです。

 女の子が頭に取り付けられていたVRシミュレーター。そして、モニターに映し出された1月号からの表紙映像。

 つまり、これまでの表紙はすべて、眠っていた女の子の見ていた、ただの仮想現実です。不治の病の女の子が、女を愛する女がベッドに横たわりながらでも、人生を歩んでいたんです。

 ときには白衣の女性も一緒にVRの世界に潜って、ふたりで幸せな日々を過ごしたこともあったのかもしれません。(願望)

 でもたぶん違うんですよね、白衣の女性は患者の女性に、自分ではない誰かと恋愛をしてでも、患者の女性に幸せになってほしかったと思うんですよ。

 だって、もし自分と一緒に幸せになりたいんだったら、VRシミュレーターの相手役の子だって、自分と似たような外見の女の子にするはずじゃないですか。

 愛する彼女には、ただ幸せな夢を見ていてほしかった。それが白衣の子の願いです。


 しかし、決定的な事態が訪れます。

 唯一モニターではなく、写真立てに立てられていた表紙。それは百合姫15周年記念9月号でした。

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(黒い翼の天使が迎えに来たイラスト)

 わたしはこれが、患者に訪れた決定的な出来事。『死』の訪れだと感じました。

 その理由は、翌10月号の表紙にあります。


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『能走多远走多远』(※どこまで行けるか)

 これまでのどこか閉塞的な雰囲気の漂う表紙と違って、渦巻く雲の下、開放感あふれるふたりの女の子がバイクで旅に出るイラストです。

 これは眼前に迫った『死』から逃避しようとしたふたりの物語なのではないか、と思ったんです。

 しかし、その翌月、ついに死はふたりに追いついて、患者の子をさらっていこうとしています。


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 残された時間もあと僅か。

 愛する女は、死の淵に立たされている。

 白衣の子は最後の決断を迫られます。

 このままVR空間に彼女を閉じ込めたまま、なにも知らずに死を迎える彼女を看取るのか。あるいは──。


 そして──。

 2020年度最後を飾るフィナーレのイラストです。

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 これが、白衣の子の『決断』でした。

 いったいどういうことか。それは最高のデザインに彩られた言葉が、教えてくれます。


MEMENTO MORI(メメント・モリ)

AND TWO BORDERS DISAPPEARED.(※そしてふたつの境界線が消えた)

「ようこそわたしたちのせかいへ」


 メメント・モリは、終末感を想起させる『死を忘れるな』のフレーズですが、ここでは死による救済を意味している、として。

 ふたつの境界線とは、『仮想現実と現実』 さらに『死と生』の境界線。それが消えた。つまり、ひとつになったということです。

 そして、ここで差すわたしたちのせかいとは、本当の意味で、彼女たちしか存在することのない世界──つまり、死後の世界。

 白衣の子は、ふたりで『わたしたちのせかい』に旅立つことを決めました。


 1月号から始まったふたりの女の子の物語は、こうして決着を迎えました。

 1月号から12月号の中で、女の子が目を細めて満面の笑みを浮かべているイラストは、12月号だけなんです。

 白衣の子が彼女の幸せを願うように、患者の子もまた、どんなにVR空間で多くの女の子と愛し合ったとしても、それはただ心を慰めるだけの行為に他ならず。患者の子が本当に会いたかったのは、白衣の子ただひとりだったのだと、わたしは思いました。

 咲き誇る白い彼岸花の花言葉は『思うのはあなたひとり』。

 12月号の表紙とともに、世界観は“完成”を迎えました。

 たくさんの世界で出会った多くの女の子よりも、ただひとりの女の子を求めたストーリーが、ここには描かれていたんです。


 ただ、これは悲しいだけの結末ではありません。(わたしが個人的に、めちゃくちゃ心中エンドが大好き!!!だからではなく……)

 白い彼岸花の花言葉は、もうひとつあります。

 それは──『また会う日を楽しみに』

 2020年度版。いや、ろるあ版百合姫はここで終わり、そしてまた新しい季節と、次のイラストレーターさんがやってきます。

 彼女たちの役割はここまでですが、これから先の百合姫もよろしくお願いします、という優しいメッセージが込められているように、わたしは感じました。


おしまい

 以上で、わたしの2020年度版百合姫表紙についての考察を終えます。

 これがすべてではないと思いますので、皆様もどうぞエモエモのエモだった百合姫表紙についても、いろいろと思いを馳せてみてください。また発見があるはずです! 実際2020年度は、どの表紙も本当に素晴らしかったです。電子書籍ではいつでもご購入できますので、ぜひお手元に置いてみてはいかがでしょうか?

 それでは、言いたいことはたっぷりと言い終わったので、わたしはこれで失礼いたします。

 百合姫を愛する一読者として、2021年度版百合姫の表紙も、心から楽しみにしております。みかみてれんでした!


https://www.amazon.co.jp/dp/B08L5X11RX/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_PfyJFbVJ5MZRW



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ライトノベル作家です。漫画原作を書いてたり、みかみてれん文庫出したり百合妄想してます。 自著一覧はこちら。 https://www.amazon.co.jp/-/e/B01MYRMOYO

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コメント (4)
素晴らしい考察です
なんか、繋がってないイラストだなって思っていたのですが、すごく納得してしまいました
ありがとうございます
表紙を広げると脱ぎ捨てられた白衣とVRゴーグルがあるんですよね。どういう意味かな?と思ってたら、ここで深い考察が読めて疑問が解けました。
さすがの考察です、てれん先生。
今回は前3年と比べると、かなり異質でチャレンジングな試みだったと思います。
これからも単に雑誌の表紙というだけではない、新たな表現が生み出されることに期待したいですね。
ステキすぎる考察です🙏
まだ設定もできてない通りすがりのおっさんですが、エモすぎな表紙に惹かれて来ちゃいました。・・百合は素人ですがゲーム好きな時々4コマ作家の視点からですと、ジャスティス(正義)はタロットだと11なので、11月号の白衣と患者の「私達のための物語」を暗示させてるかも?です。
2020年の20はふたりへの審判と見ることかもです。
意味はその旅の終わり、歩んで来た道を振り返り裁かれる・・意味です(ペルソナ3の保険室の先生の説明では)。
他にも古神道からだと、キスで殺す5秒前と後は・・子の年(🐭だからチュウ)真ん中にして10年・・を意味してる気がします。
なんか暗くしてごめんなさい🙏🙏です。←最近発売された真メガ3ノクターン・・のノクターン(夜想曲)には、新たな世界が創世される夜明け前(最も暗くなる)な意味もあるので、表紙のふたりは一度死んで創世をはじめるのでは?
・・おっさんが口を挟んで申し訳ないでした👴🙏

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