符亀の「喰べたもの」 20201025~20201031
今週インプットしたものをまとめるnote、第六回です。
漫画
「BURN THE WITCH」(1巻) 久保帯人
「BLEACH」の久保帯人さんの新作で、ロンドンの裏側に存在する街でドラゴンを管理する魔女たちの物語です。思いっきり積んでましたがようやく読みました。
画作りや話の展開、設定面については流石の一言だと思います。その一方で正直1話の時点ではあまり面白く感じなかったのも事実(個人の感想)です。たぶん主人公の動機がイマイチ描かれていないせいで共感しにくいせいかと考えているのですが、そんな漫画の教科書を見れば載っているような基本を久保先生が怠っているとも考えにくいですし、2巻以降の布石としてわざとやっているような気もします。終盤の畳みかけはそこまでの評価をひっくり返すぐらいワクワクさせてくれたので、1巻全部が1話目ぐらいのつもりで描いている&読むべきなのかもしれません。贅沢っすね。
「九龍ジェネリックロマンス」(1~2巻) 眉月じゅん
第三回で紹介した「恋は雨上がりのように」の眉月じゅんさんの新作です。下町のノスタルジーを感じさせる九龍で働くヒロインと同僚とのラブロマンスものです。
1話から恋愛ものとして高いクオリティを誇っていたものの、ラブコメ色の薄い恋愛ものがそこまで好みではない私にはnot for meかな…と思っていたら1巻最後の話でがっつり掴まれました。そして第9話(2巻目の最初の話)でトドメを刺されました。そこからはもうストーリーの面白さと恋愛物としてのクオリティとでノックアウトという感じです。
ネタバレにならない程度に少し語彙力を上げると、ストーリーギミックのおかげで何かあったときのリアクションが「キュンキュン系」「ギャグ系」「ショック、ホラー系」の3パターンありえて、かつ予想しにくいんですよこの漫画。その上でそれぞれへの表現力が高いので、結果予想外の角度から高火力で殴られるのが多くなり、印象に残りやすくなっている気がします。
しかしこれも「BURN THE WITCH」も、1巻の最後まで大きく動く話を温存できる(つまりそこまでは読んでもらえるしそこまでで打ち切りを食らうこともないだろうという想定で動ける)のは、なんというか強いですね。
「推しの子」(2巻) 赤坂アカ×横槍メンゴ
推しアイドルの子供に転生した医者(前世)と病人(前世)が、それぞれの思いを胸に芸能界に進む作品の第2巻。この2人ならそりゃ面白い漫画になるわけですが、そのハードルを正面から超えてくるのがすごいですね。
1巻は1巻で1話毎に読者を驚かせて沼にハメてやろうという意図を感じる凄まじい構成だったわけですが、2巻は逆にじっくりと1エピソードを描きにきたなという印象を受けました。もちろんどの話も面白いんですが、1話毎に「ハイここでSNSにつぶやいてください」ポイントを作らなくてもいいだろうという余裕と、それを活かして丁寧にオチまで運んでいく展開力とが光っていた巻だったと思います。
「千年狐 ~干宝『捜神記』より~」(1~4巻) 張六郎
千年生きた狐やその他妖と、人間との交流を描く物語。表題の通り、中国の古典「捜神記」を原作としながら大量の参考文献を基に描かれている作品です。
1巻は発売直後ぐらい(2018年末)に読んだのですが、2巻が贔屓の書店に入荷しなかったためにしばらく読めておりませんでした。4巻発売をきっかけに既刊を買い、ついでに1巻から読み直したという経緯です。
で、正直に言って買っていなかったのを後悔するレベルで面白かったです。というか1巻から面白く読んでいたのになんで注文しなかったのお前。
この作品の特徴として、古典原作ということで、主人公の狐が出てくる以外共通点のないオムニバスのような形で物語が進みます。というか第二話の時点でもう主人公ラストのページにしか出てないですからねこれ。でも個々の話が面白く画力も高いため、なにより古典原作ならまあそんなこともあるでしょうと納得して読み進めてしまう。
と思ったら、1巻ラストでそれらが全てつながったエピソードが語られる。そして2巻でまた短編集構成になり、でも3巻4巻ではまたその話が拾われてラストへと収束していく。この振り回されるような構成も、中国古典原作であることと漫画の上手さによって違和感なく読んでしまう。
こういった群像劇系の話ではどうしても各キャラの説明エピソードで脇道にそれた印象を受けてしまいやすいですが、でもそういう脇道こそが面白かったりもするものでして。本作では、短編集を原作とすることで脇道の「え?今その話する必要ある?」感を低減し、そこで厚みを増したキャラ達が本筋に向かって躍動する構成が非常によくできていると思います。
この構造はぜひ参考にさせていただきたいですね。問題はこれが非常に多数の参考文献と漫画力によって支えられた、素人が構造だけパクってもスッカスカになるタイプのものということですが。
今週は「千年狐」が非常に好みで、他も読んだものが全て面白かったという当たりの週でした。私はかなりつかみに重きを置いているのですが、ヒット作家さんたちがこういうスロースタートな作り方で新作を出している以上、そのスタンスについて再考すべきなのかもしれません。
一般書籍
読む時間がね、ないのよ。
といいつつ説明書の入稿を終えたり他の仕事も落ち着いてきたりしたので、来週は1~2冊インプットできるかもしれません。正直そろそろ読みたい本が溜まってきて消化したいんですよ。
Web記事
本が読めない人たちを、技術が助けてくれるという話。タイトルからは想像できないかもしれませんが、紹介するの間違えてるとかではなく本当にそういう話。
このパワーワードのタイトルで釣ってから一見関係なさそうな時事ネタを挟んで読者に疑問を持たせ、その後タイトルを回収しながら主張を述べることで空いた口に結論を叩き込む文章構成、うまいですね~。FunnyもInterestingもある充実した中身といい、読み応えのあるnoteだと思います。
「80年代懐メロで20代も40代も取る ブシロード新作は『DJ』で勝負」
「コラム『木谷高明の視点』 第34回 求められる〝勝ち組感〟に応えるために」
上は、新コンテンツおよびコロナ禍におけるメディアミックス戦略についてブシロード代表取締役会長である木谷高明氏が語ったインタビュー記事です。その中で語られる「勝ち組感」について、より詳細に語られている2018年初頭のコラムが下です。
詳しい内容はそれぞれを読んでいただきたいのですが、「仲間がいないところよりも、すでにいるところ、もしくは仲間が増えそうな〝勝ち組感〟のあるところに人は流れます。」(下より引用)という分析にはうなづくばかりです。わりと研究科基質というか発掘好きな私も、正直近年はそういう傾向が出てきたなと感じていましたし。
同人ボードゲーム業界は(わざわざ「同人」を好む時点で)原石の発掘を好む方が多く、そのおかげで我々も活動を続けられているところがあるとは思うのですが、どうなっていくんでしょうねその辺。
今週末は「仕事→説明書入稿→体験会(19時~22時)→体験会(明日7時30分~お昼)」とかいうアホスケジュールでしたが、なんとかサボらずにこのnoteを書けました。来週末も体験会があるもののここまで忙しくはないはずですので、まずは早めに寝て明日を乗り切りたいと思います。そんなわけで、東京近郊の方は遊びに来てくださいね。
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