符亀の「喰べたもの」 20210131~20210206
今週インプットしたものをまとめるnote、第二十回です。
(昨日寝落ちしたため日曜日に更新しています)
漫画
「ただいま収蔵品整理中!」 鷹取ゆう
博物館勤務経験のある筆者が、文化財保護や資料展示、不可思議体験について描いた漫画。なお試し読みは見当たらなかったので、リンク先は出版社の公式ページです。
キャラの説明不足描写不足やそれなのに行われる身内ネタ感のあるやりとりなど、漫画としての面白さは高くないかもしれません。不可思議体験を集めた異聞シリーズ(オマケ)は実話ホラーものとして面白く読めますが、それ以外の部分が娯楽漫画としてオススメかといわれると、申し訳ないですが微妙です。
ですが「大人版まんがでわかるシリーズ」として見るととても興味深く、よくできた作品かと思います。専門知識や実体験を持つ作者さんが描いているため、描く内容選びの細かさが秀逸です。漫画以外のコメントや解説コーナーも面白く、実感のこもったコメントが面白いです。随所から著者さんの資料第一な姿勢が伝わってくるのもいいですね。
ちなみにいきつけの本屋さんでは、本書は漫画コーナーではなく一般書籍の人文系エリアに置いてありました。さもありなん。
「研究棟の真夜中ごはん」(1巻) 夏河もか(漫画)、神岡鳥乃(原作)
知的好奇心にあふれつい「なぜ」と聞いてしまう塔山うららと、人付き合いが苦手で知っていることを聞かれるとマシンガントークを炸裂させてしまう鳥見川氷彗。2人のリケジョが、夜食を通じて交流する話(百合描写アリ)。
料理知識を化学的かつ簡易にまとめてくれており、知的好奇心が刺激されます。画力が高いので料理もおいしそうですし、それを食べるキャラたちの表情がいいのでこちらの気分まで高揚します。
漫画自体の面では、1話が食べて聞く側(塔山うらら)中心、2話が作って話す側(鳥見川氷彗)中心で描いているのが上手いポイントです。これにより、1話の視点を提供しているうららの感想を通じ、読者も氷彗のマシンガントークを好意的にとらえやすくなり、作中と読者との乖離を防いでいる点が上手いです。
その他コマ割りや構図などについても1話より1巻最終話の方が違和感のないようになっていると思いますので、2巻以降はさらに面白くなっていそうで楽しみです。
「IQ 005」榎本俊二
作者さんがtwitterに挙げられていたので拝読。人型の電話を使った、エログロ要素のある短編です。
もう最初の1ページが白眉でしょう。「無音→ヴーン→無音」の3コマだけでこの男性が携帯電話であると伝え、次のページでこの世界の電話は基本(または全て)人型だと示す。見事と言わざるをえません。
そのアイデアを活かしながらも、展開やオチはそれに依存していないのも凄まじいです。「人型の携帯電話」という強力なアイデアを、キーアイテムでなく内容のわりに画を滑稽にして読みやすくするためだけに使う。でもそんな電話だからオチも活きる。すごいっすね。
「私の息子が異世界転生したっぽい」(①~④(最終話)、書き下ろし) かねもと
息子がトラックにはねられ亡くなり、彼の本棚から異世界転生ものを読んだことで彼は異世界に行ったのではと思うようになった母親と、その元同級生とが、息子に会いに行く方法を探す物語。透かしアリでよければ書き下ろし以外全話無料で読めます。私は有料版買いました(100円)。
タイトルから「あ、転生した奴の周りの人間を描いたメタコメディかな?」と思わせてからの「死・自死が表現、テーマに含まれます。」の注意書きの絶望感がすごい作品。早逝した息子を思い、その死と向き合う母親の話として非常にクオリティが高かったです。
唐突に自分語りをしますが、私は最近、読者になるべく早く「どういう気持ちで読む作品か」を伝えるのが、面白いと思ってもらえるための秘訣なのではないかと考えていました。その観点から分析すると、この作品は特に序盤にギャグっぽい描写が多く、注意書きさえなければコメディなのではないかと思えるんですよね。というかコメディなら、息子が本当に異世界転生しているなら、救いがあるんですよ。だからコメディ作品、せめてファンタジー作品であってほしいと願いながら読むわけです。冒頭太字の注意書きから、そうじゃないことなんかわかりきっているのに。「コメディとして読む作品であってくれ」という祈りを喚起させつつ、そうじゃなくても裏切られたと思わせない注意書きの仕事は、単に警告を出してミスマッチを回避させる以上のものであり、むしろこれこそがこの作品による体験を何倍にも濃厚にさせていると思います。
書き下ろしも100円で3本もあり、読み応えがありました。1本目を読んだときはやりやがったなお前と声が出ましたが、買ってよかったです。
今週は「まんがでわかる」系の漫画が多く、毛色が違うラインナップになりました。異様に新刊が手に入らず、積読を崩すほどの体力はなかったのがその原因です。とはいえ挙げた作品はどれも面白かったので、こんな週もあるということでどうか。
一般書籍
文庫のくせに上下巻で800ページ越えのやつに手を出し始めました。再来週ぐらいに上巻読み終えられたらいいですね。
Web記事
「スマートフォンでマンガを読む時代における「見開き」の表現について:『怪獣8号』の事例」
Web漫画において、見開きを使う際にも各ページ単体で成立するよう、文字の配置や構図が計算されているという分析についての記事。
「怪獣8号」は本で読んだ際むしろ「Web発にしては見開きが多いな」と感じていたのですが、こういう工夫がなされていたとは気づきませんでした。もっと勉強します。
「講談社ゲームクリエイターズラボ|提出企画書ポストモーテム」
講談社さんの第一回ゲームクリエイターズラボのメンバー公募で一次審査を通過した筆者が、その際送った企画書についてまとめたnote。
時期ごとの考えや制作意図が書かれていて非常に学びのあるnoteです。個人的には、「企画書にゲームルールを書いて仕様書っぽくなってしまうのを避けた。」の一文が刺さりました。今まで書いてきた仕様書化した企画書たちよ、すまない。
「ボードゲーム『ウリカイ』リメイク版は、何をリメイクしたのか」
先週同様、「ウリカイ」のリメイクについて書かれたnoteです。
こちらも、UI面で大変勉強になるnoteでした。めくってラウンドの経過を表すカードがあるのですが、その端に全ラウンド分の枠を置いてカウントダウン感を高めた変更が、特に印象に残りました。いつかパクります。
青春。
青春。
昨日のアナログゲームフェスタでは皆様に試遊いただき、私も久々に拙作を回し、大変楽しかったです。運営の皆様、出展者および参加者の皆様、宣伝にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。そしてはしゃぎすぎて帰宅後即寝たせいでこれの更新が遅れてすみませんでした。
あと久々にやってやっぱ「ツミカブリ」面白いなってなったので、珍しくちゃんと宣伝します。
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