符亀の「喰べたもの」 20210627~20210703

今週インプットしたものをまとめるnote、第四十一回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

るろうに剣心─明治剣客浪漫譚・北海道編─」(6巻) 和月伸宏、黒碕薫(ストーリー監修)

画像1

元伝説の人斬りにして人を守る流浪人となった緋村剣心の活躍を描いた本編から5年後、北海道を舞台に新旧のキャラが登場する続編の、第6巻です。

この前の5巻にて、本編序盤に出てきたアイツがまさかの再登場を果たしたのですが、この巻では奴が大活躍します。(ネタバレに配慮した記述)正直、5巻時点では彼に関する描写が和月さんの強みである少年漫画らしさと噛み合っていないと感じ、彼の再登場自体失敗だと思っていました。しかしこの巻では、本編で敵役に過ぎなかった奴の好感度が爆上がりし、話自体もその魅力に引っ張られる形で面白くなっていました。

この「キャラの魅力」ですが、この巻で活躍した「彼」は、はっきり言って一般的に魅力的とされるタイプのキャラではありません。それでも話を面白くできる程に魅力的なキャラになれたのは、読者がキャラの魅力を感じるには、以下の2点さえ満たしていればいいからなのではないかと考えました。

その1点目が、「そのキャラが何かを判断する時の基準となるキーワードがわかること」です。これは別に、全ての動機が「〇〇のため」で説明できるような単純なキャラしかダメ、という意味ではありません。読者が彼または彼女の行動が予想できること、「この場面、あいつならそうするだろう」という推測が可能であることを指します。この推測は、その通りなら物語への納得感につながり、裏切られれば展開への意外性として働きます。

そして2点目が、「そのキャラの行動が、読者には真似できないものであること」です。1点目と合わせれば、「それをする気持ちはわかるけど俺には無理やわ」と思わせるキャラに魅力を感じる、ということです。1点目が無いとただ奇行をする変人であり、2点目が無いとその辺にいる凡人になる。この2点を両立しているからこそ魅力を感じ、逆にそれらさえあれば、他の要素で点数稼ぎをする必要はない(のかもしれない)。

この気づきは、今後自作のキャラを考える際やセルフプロデュースに役立つことでしょう。願わくば、この仮説が正しいものでありますことを。


戦隊大失格」(2巻) 春場ねぎ

画像2

オモロなってきたやんけオイ!!!

という訳で第三十一回以来の紹介です。この巻で、「人間の気持ちがわからない怪人が、強力な力と歪んだ正義を持った人間の戦隊の中で戦う」という「主題」がはっきりしたと思います。

というかこれを1巻ではっきりさせてください。この連載のスタンス上良い点メインで書きましたけど、1巻時点での正直な評価を言うと「面白かったところもあるけどダメなところも目立つし、面白さを引っ張ってたキャラ死んだからまあここまでで終わりでいいかな」って感じでしたからね。1巻でこの「主題」を匂わせてくれるだけで、期待感と人への勧めやすさが全然違ったんですけど。というか多分売り上げに響いてると思うんですけど。

それはさておき、2巻で心からオススメできるようになったと思います。買う場合はちゃんと2巻まで一気に買うようにしてください。あと打ち切られて謎が謎のまま終わっても責任は取りませんそうなったらごめんなさい。


逃げ上手の若君」(1巻) 松井優征

画像3

鎌倉時代から室町時代への狭間、死を栄誉とする武士の時代に、生き延びることで英雄となった一人の少年の物語。

本人が語られている通り、防御力が高く読みやすいです。その上で氏の強みでありファンの求めているヤバい大人の出し方も上手く、逃げ上手攻撃下手という個性を殺さずに敵を仕留めるため同年代の味方をすぐ用意するあたりも上手いです。最悪な観点ですが、歴史的に無名の味方は生かすも殺すも自由で作話の助けにもなりそうですし。

こういう「上手い」漫画は良さを見つけて言語化するのが難しく、こういう連載にとっては鬼門でもあります。来月2巻が出るとのことですので、良さ探しはそれまで逃げさせていただきましょうか。


デッドプール:SAMURAI」(2巻(完)) 笠間三四郎(原作)、植杉光(作画)

画像4

第二十四回以来のご紹介。問題起こさずに完結しただけで偉いのに最後まで日和らずダレなかったのですごい。それ以上は触れにくい。

漫画的に決めるべき場面を、コラボキャラによる一撃によってしっかり締めていたのが上手いと思います。デッドプールにやらせるとふざけて締まらないですし、そもそもコラボキャラがいる時点でネタ的にも十分ですし。それ以上は触れにくい。編集さんはよくがんばった。


先週修羅場がどうのこうの言っていましたが、その後〆切の一つを1月勘違いしていたことが分かり、余裕をもってインプットができました。これ調子乗ってたら来月改めて死ぬやつですね。


一般書籍

ボツにしました。

その代わりと言ってはなんですが、今読んでいる本が最高級の当たりだったので来週紹介します。


Web記事

ボードゲームの版権について

タイトルの問題について、「16年間ボードゲームの版権の売買に携わった」(原文ママ)筆者さんが4つの観点から意見をまとめたnoteです。

有料(100円)ですが、それ以上の価値があるnoteだと思います。特に「1.システムに版権はない」と「2.(中略)著作権が適用される(ので、流用は盗作である)」について海外の事例を挙げられており、ケーススタディとして有用性が高いです。

一方、3番(どこまでがパクリでどこからがセーフか)と4番(ルールの翻訳について)に関しては、表題の課題を解決する事例を求めている人にとって期待外れな記述だとは思います。(内容が不十分という意味ではないです)また、事例や問題提起のみで明確な答えは載っていない(そもそも「答え」が出る問題ではない)ので、そういうのを求める方はお気を付けください。


アタック25に出演して思った『巧みなゲーム設計』

「アタック25」に出演された芸人さんが、その視聴者と参加者への配慮が行き届いたゲーム設計について語ったnoteです。

ゲーム設計によって、それもそれに応じた人が得をする形の設計によって、視聴者も楽しみやすくなっている。ゲーム製作者として勉強になります。


『1回爆発するしかない』左ききのエレン作者にきく“やりたいことがないそこそこ優等生”の輝き方

左ききのエレン」の作者であるかっぴーさんが、そのキャラになぞらえながらビジネスパーソンの悩みについて語った、R25の連載です。4回分全部載せると長くなるので、上のリンクは1回目のもののみです。

1回目2回目の内容には納得したもののそれを他人に勧めて大丈夫なのか感もありましたが、全体的に勉強になる連載でした。逆張りをしたり天才故の狂った価値観を強制したりすることなく、人一倍経験して考えられた末での結論を話されているのが伝わってきました。いつか人生に詰まったら読み返すと思います。


『「有料版なら広告なし』が生む、持つ者と持たざる者の情報格差

YouTubeの広告を題材に、それを消すための費用を払えるかどうかの経済的格差が情報格差につながっていると述べる論説です。

まず大前提として、YouTubeの広告はプレミアム化のコストを払えないユーザーをターゲットにしているという点に気づいていませんでした。プレミアム欲を煽る意味も込めてのクソ広告なのかと思っていましたが、広告提供者側にメリットないですもんね。これがnotプレミアム民の知能の低さということでしょうか。そういうことではないですねすみません。


急に(勘違いしていた〆切の再認識により)時間ができ、おかげでキャラの魅力についてなど、いいインプットができました。その延びた〆切が追いついてくる前に、他の仕事と勉強を進めたいところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?