符亀の「喰べたもの」 20211205~20211211

今週インプットしたものをまとめるnote、第六十四回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

ミステリと言う勿れ」(10巻) 田村由美

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主人公が雑学や気になったことをしゃべっているうちに事件が解決できてる系ミステリ―。紹介は第二十五回以来。ドラマ化おめでとうございます。

主人公にしゃべりまくらせて伏線になりうる情報をばら撒く手法がきれいにハマった巻だったと思います。このように多様な流れがねじれながら犯行の真実という一点に集結する構成は、まとまらなければ意味がわからず、まとまりすぎてもご都合主義的な印象を受け、難しいものだと思います。そこをこのエピソードでは作品的にも重要なキーワードでまとめあげており、流石にそうはならんやろという部分もあったものの、非常に大きなカタルシスを味わわせていただけました。


SANDA」(1巻) 板垣巴留

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1話が起も承も飛ばして転に次ぐ転という感じで激しく展開しすぎ、正直に言って読者を置いてけぼりにするタイプの作品だと思っていました。しかし本当の「転」の部分で急にその動きが止まり、ここまでの流れが計算されていたのに気づいた瞬間、作品の世界にドはまりしてしまいました。

この後も漫画力の高さで魅せてくれる展開が多く、今後への期待が膨らみます。その技量を見たからこそ、1話冒頭のそこまでで見切りをつけるような読者はいらないと言わんばかりの構成に、ある種の傲慢さを感じつつも、うらやましいとも思ってしまいます。


おとなりに銀河」(3巻) 雨隠ギド

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事故により「婚姻契約」で結ばれてしまった2人が織りなすラブコメ。第八回以来の登場です。

この巻では、その「婚姻契約」について大きな進展がありました。ネタバレ回避のために内容には触れませんが、設定に新たな意味を持たせる「伏線」的な面での上手さと、そのカードをもう切ってくることへの驚きで感動させられてしまいました。

本作のもう1つの魅力が、表情のバリエーションの多さです。本作のヒロインは結構コロコロ表情を変えるタイプなのですが、それが感情ごとにワンパターンでないがゆえに、SFチックな設定でありながらキャラの存在をリアルに感じられます。特に驚きの表情が多彩で、これがデレ顔の前のワンクッションになっているのが、単にイチャイチャしているだけの軽薄な印象を抱きにくい理由なのかと思います。


タコピーの原罪」(1話) タイザン5

マジか。


続刊の2作は、実は両方ともここで前巻を取り上げなかった作品です。もちろんこの巻が面白かったからというのが大きいですが、一度面白さの言語化を諦めてしまった作品の良さをもう一度見いだせたのは、先週課題として述べた「楽しむ力」が戻ってきたのかもしれません。なおもう一つの課題の投稿時間について。


一般書籍

文章は接続詞で決まる」 石黒圭

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「接続詞とは何か」という論考から始まり、その分類や帯文のようなより細かい使い分け、その使用の弊害に文学表現における効果まで、接続詞尽くしの一冊です。

こう書くと校正者と作家以外には不要の豆知識集かと思われるかもしれませんが、本書はそれにとどまりません。こうした接続詞の用法を細かな差異にまで学ぶことで、自分の書く文章の論理展開におけるクセを自覚し、新しい構成を取り入れられるためです。そういう意味でも、本気で1万2000字書く前に読みたかった一冊です。ちなみに一番刺さった記述は、「『また』の多用は、(中略)文章構成が十分には練れていないことを、読者に暗に伝えてしまうおそれがある」の部分です。なんせこれに引用部分除いて10回出てきますからね「また」。これでも削ったんだけどなあ。


Web記事

こどもも遊べるゲームの作り方

Board Game Design Advent Calendar 2021 4日目の記事です。"こども用"ではなく"こどもが遊べる"ゲームにするため、筆者さんが気を付けられていることを書かれたnoteです。

"こどもが遊べる"のかの目安として紹介されていた、「その年齢のこどもがやっている"一番難しいこと"と比較してみる」という方法にとても納得できました。その他も私の考えたことのない"こどもが遊べる"ゲームへの知見が詰まっており、いいnoteでした。


ダイバーシティとインクルージョン

Board Game Design Advent Calendar 2021 8日目の記事です。多様性に配慮しようとしながらも、結果それが不十分であったという反省を述べられた記事です。

王をKingと訳さないなど、私ならスルーしてしまっていたところまで配慮がなされているのが素晴らしいと思いました。それでも「Ballista」のカードが(この文脈を強く意識するならば)画像が出た瞬間にあっと思うほどに類型的(ステレオタイプ)になっており、この課題の難しさを感じます。

そのうえで、キャラクターをアイコンとして用いるゲームイラストの作法と多様性への配慮との相性が悪いというのも、この記事を受けての印象です。他人が後から見ればなんとでもいえますが、「各々キャラの名称や特徴と相性がいいところに入れてほしい」という方針が類型的な描写を招いたのは明らかです。しかし、類型的でない配役がゲーム体験にノイズになってしまう(というのが差別的な物言いではありますが)のも懸念すべきでしょう。考え続けるべき問題だという前提のもとで、しかし難しい問題です。


『はぁって言うゲーム』の制作過程、最初は紙切れだった

Board Game Design Advent Calendar 2021 10日目の記事です。「はぁって言うゲーム」の制作過程をまとめられた、デザイナーズノート的noteです。

ゲーム会以外の場でカードを出すと「『なにか本格的にゲームがはじまってしまう』という圧が出」てしまい、その解決策として財布に入るコーヒーチケット型にするという流れに感心してしまいました。そういう解決策もあるのですね。


学際研究と壁

壁 Advent Calender 2021 8日目の記事です。壁 Advent Calenderってなんだよ。

学際研究(分野をまたいだ研究)をするにあたり、相手の分野についても主体的に頑張り、かつ相手とコミュニケーションをしっかりとることの重要さを説いた記事です。当たり前のように見えますが、じゃあ自分がやれそうかというと自信がなく、改めてえりを正すためにも今のうちに読めたのは大きかったと思います。


Facebookの社名変更が告げるメタバース・VRジャンルのゲーム大隆盛時代の到来

オリジナルIPのVRゲームを開発されている会社の代表さんが、メタバースへの思いを述べられたnoteです。ちなみに11月頭の記事なので、某団体が設立される前に書かれたものです。

まず最初に思いをぶつけ、その直後に数字をもって説明していく構成を示して地に足をつけさせる、この流れが掴みとしていいなと思いました。全体的に文字が大きくて読みにくい点はありますが、VRに初期から関わられて今も第一線を走っている方の記事は読みごたえがありました。


『山で熊に襲われました。』 ~格闘&血だらけ逃走レポート~

タイトル通りのレポート記事です。

最初に内容を4つにまとめてくれているおかげで読みやすく、特に「収支で14万円黒字になる」が3つ目にしている順番の妙により、4つ目の悲壮さを軽減しつつも本題の重さを損ねない構成が見事だと思いました。


寝落ちして体力回復が不十分のまま進捗が悪く帰宅が遅くなりまた寝落ち、という負のサイクルから抜け出せていませんが、まず視覚的ストレスを減らそうと発起し、今日掃除を行いました。これがループを抜け出す一助になればうれしいです。まあそんなわけで、その作業に追われて投稿が遅くなったのは許してもらいたいですね。

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