アマプラ映画レビュー: *****空(くう)をつかむ Touching the void (邦題:運命を分けたザイル)
結論から言うと、去年・今年(今年はまだ2月だけど)見た中では*****一番よかったです。仕事で立ちっぱなし>3時間とか、通勤途中の事故で行列、迂回、遅刻で精神的ストレスとか、普段の生活でもとかちょっと苦しいこととか困難なことは起こった時に、朝早く起きて、ネズミのように車輪をくるくると日々漕いでいる自分のことがちょっと虚しくなった時に、主人公のJoe Simpsonのことを思い出すだけで、力が湧いてくる、そんな映画です。
私事ですが、英国で5年になるのでここ数ヶ月Life in the UKという永住権VISAを取得するための英国政府の公式本を読んでいたのですが(つまりイギリスのことをよく知らないと住んじゃダメだよみたいな感じで、最低限知っておけよ、をまとめた本が発売されている)、その中で英国で作られた有名な映画の一覧の中にこのTouching the Void (2003)がありました。英国版アカデミー賞受賞。こういう勉強している時って内容をただスルーして記憶するだけでは勿体無い(というか記憶に残らない確信あり)ので、たまたま見てみようかと思ってアマプラレンタルで見たのがきっかけです。(勉強ははかどりませんが!)。
映画は本当に起こったことをベースにしているのでドキュメンタリーを見ているのと同じ気持ち(ドキュメンタリー大好き)=docudrama。ベースは主人公のJoe Simpsonが書いた伝記本です。原題はTouching the void。Voidは虚とか虚しさとか空(くう)とか。監督はKevin Macdonaldでドキュメンタリーが得意なようです。邦題は運命を分けたザイルのようですが、この邦題の付け方には疑問を呈しているレビューも拝見して同感です。私は溺れるものは藁を掴む、みたいに手で空を虚しくつかむような動作を想像しました。
日常非日常、実は危険とは隣り合わせで不運は訪れる。私は病院で働いているので、転んだ、滑った、交通事故、はもう当たり前の世界です。誰だって怪我はする、一瞬の間に梯子から落ちて死にいたることもある。そういう不運に対して、主観的にも客観的にも「なんとなくもうダメだろう」という諦める瞬間がある。でも、それは本当にもうダメなんだろうか。
あと20分。Joeは動いた。
私の好きな言葉の一つが「Step by step」=一歩づつ。その次の段階や最後の目標到達地点が見えなかったり遠すぎたりするときに、今できるのは次のステップだけ。あまり遠くの目標ばかり考えるとその不可能さやあり得なさに参って身動きができなくなるだけで、だから大事なのはあと一歩だけ動くこと。
そしてただのマッチョな映画というより、人間模様というか、相棒のSimonの行動が後々まで尾を引く大論争になる、そして答えは白黒つかない難しいヒューマンドラマでもある。
息を飲み、胃がキリキリとし、一緒になって痛くて怖くて絶望的で、最後になんというのか達成感というか何かすごいものを見せてもらったという有り難さに浸れる映画です。とにかくおすすめです。
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