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マネー・竜ダリング!

「親分…どうしやす?これ」
昔々あるところに二人の男がいました。髭面の親分とのっぽの手下。職にあぶれて泥棒に身を落とし、今日は彼らの初仕事。夜の闇に紛れてどうにか街の貴族のお屋敷からこっそり宝を盗んだはいいのですが、彼らは大切なことを忘れていました。
「そうだよなぁ…売り払おうにもどこで売りゃいいんだ」
親分はたっぷり蓄えた髭を扱きながら考えていました。
目の前のお宝にはしっかり貴族の家紋が刻みつけてあります。これだと当然街の質屋では売れません。潰してただの金塊にしようにも小汚い男二人がこれだけお宝を持ち込むのは明らかに不自然。かといって彼らには裏路地の質屋のコネもありません。新人泥棒だからです。
「夜が開けたら気付かれやすよ、それまでに何とかしねぇと」
「分かってらぁ!誰だって最初は失敗するもんだ」
「最初の失敗で首切られちゃ世話ねぇや!あーあ、素直に竜狩りを続けてりゃなぁ…」
「竜ったって今は数が少ないんだから…いや待てよ」親分の目がキラリと輝きます。
「確かこの王国の外れの洞窟に竜が住んでたな」
「ええ…そうなんでやすか?」
「今は霞の季節だから…丁度竜は子供を産むな」
「それがどうしたんで?」
「子育て中の竜は金を集める!こいつを竜の所に持ってって潰して貰ってから、竜狩りとして何食わぬ顔でそいつをブッ殺し…」
のっぽも目を輝かせました。
「誰のか分からなくなった巣の財宝ごと持って帰っちまおうってことですね!」
「そうだ!この屋敷からこのお宝を盗んだ泥棒役は、巣に転がってるガイコツにでもやってもらおう」
「流石親分!そんなら早速やりやしょう、夜が明けないうちに!」
二人の泥棒は笑いながらお屋敷から遠ざかっていきました。目指すは王国の外れ、竜の洞窟!

【続く】


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