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メカニカル・ピルグリム

「おい、そちらに何かあったか」
「いやダメだな…もうガラクタしか」
薄暗い部屋で、二人の泥棒が仕事をしていた。
泥棒。そう泥棒だ。だがそれを咎めるものはいない。とうの昔に滅んでいたからだ。
「こちらもダメだ…このバッテリーはもう切れてるし、この記憶媒体は旧式すぎる」
「おっ!こりゃまだ動きそうだぜ」
一人の男が映像端末を見つけて電源を入れる。
『ロボットの生み出す新しい社会。低燃費で人間に代わる新たな労働力…』
「はん!胸糞の悪い!」男は広告の流れる装置をへし折って破壊する。「おかげで俺らは今こうして食いっぱぐれてるっていうのに」
「まぁそう怒るな…そんな事に怒るのは、それこそ竜巻の責任を蝶に問うようなものだよ」
「お前は頭が良いよなぁ。流石軍にいただけはあるな、もうちょっと俺にも分かるように…おっ、まだ奥があったか」
男の一人が施設の奥に繋がるドアを見つける。彼は「お宝」を期待し、それをこじ開ける…

「…嘘だろ」
彼は目の前の光景を目にして思わず零した。
彼はそれなりに長い間生きてきた。だがこんなものを見るのは初めてだった。
「あなたは…」
目の前にいたのは少女だった。人間の少女。
…とうの昔に、滅んだはずの。
「…っ!」
気絶した彼女を彼は支える。触れてみて分かった。
いま目の前にいるのは間違いなく人間だ。…自分たちを作った存在。ロボットとしてこの世に産み落とした…うまく言えないが…人間達のいうところの神そのものだ。
それもたまのチンケな奇跡しか見せなかった人間の神と違って、我らが創造主は今こうしてここに確かにいる。触れられる。
俺は今間違いなくこの世で一番恵まれた奴だ。いやもしかすると、この歴史上で一番かもしれない。彼はそう思った。
「おいどうした?…ッ!!」
もう一人のロボットも来て…言葉に詰まり、何とか捻り出した。
「なんて事だ…彼女は本物の人間なのか」

【続く】

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