ポイント経済と、新しい市場経済への可能性

現時点での法律解釈では、ポイントで支払った分の物の値段は「値引き」に相当します。(だからポイントを現金で買うことはできません。「値引き」と解釈されなかったらなにになるのかというと、「景品」になります。そうすると、景品表示法上の限度額の規制がかかります。)

上の日経の記事では、ポイントを金銭同様の財産として保護すべきではないかという論調ですが、それだと、「ポイントをもらった人しか使えない」というポイントの特性が失われます。

このように書くと不便そうですが、「使用権を移転できない」という特徴は、以下のノートに書いたように、保険的機能に転用できる可能性があります。

例として、余裕のある高齢者が貯蓄を続ける理由の一つは介護や医療などで将来お金が必要になるかもしれないからですが、仮に、高齢者の貯蓄が全てポイントになれば、必要な時は使える一方、死亡時には相続されずに消えてしまうので、保険と同じになります。このような経済では、お金は「本人が死んだら消えてしまう儚いもの」になります。(高齢者の貯蓄を預金の代わりにポイントに置き換えられれば、富裕層の高齢者が銀行預金を通じて間接的に保有する国債が次の世代に相続されなくなるので、日本の財政問題の解決にも役立つかもしれません。)

日本のキャッシュレス化は、海外に比べて遅れているといわれますが、日本では、海外とは異なり、現金や銀行サービスの使い勝手がよいために、現金や銀行預金を補完的するようなキャッシュレス化が発達しつつある印象です。単に現金を代替するキャッシュレス化よりは、日本にみられる「ポイント」のように、新しい機能を持つ補完的なキャッシュレス決済手段の方が、新しい「お金」の形や、新しい形の市場経済の萌芽となる可能性が高いと思います。

このような方向性での経済の発展を促すためには、キャッシュレス手段であればなんでも金銭と同一して保護・規制をかけるということを避け、各企業が多様な形のキャッシュレス決済手段を選択・発明できるような環境を維持することが重要に思います。