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CO2がエネルギーをもらう 光合成 植物のカーボンサイクル(3)

さて、葉緑体の包膜を通り抜けたCO2は、いよいよエネルギーと電子とプロトン(H+)をもらって変身する(還元されていく)ことになる。この時のエネルギーは、生命のエネルギーの通貨ともいうべきATP、電子受け渡しの通貨ともいうべきNADPHという分子である。

葉緑体内のチラコイド膜には、光合成装置ともいうべきクロロフィル(緑色の色素)やクロロフィルが捕まえた光エネルギーを使って水から引き抜いた電子を伝達する多数のタンパク質などの装置が並んでいる。クロロフィルは緑色をしているが、これは緑色の光をあまり吸収せずに反射し、主に青色と赤色の波長の光を吸収するからである。光からエネルギーを受け貯めておくと自身が熱で焼けてしまうので、クロロフィルは電子の形でエネルギーを誰かに渡さなければならない。焼けた火の玉を渡された感じか。そこでプラストキノンという物質に渡す。クロロフィルは電子を一つ失ったので元に戻るときに水から電子を奪うのである。水は安定だが、クロロフィルが引き抜こうとするエネルギーは凄まじく、無理やり引きはがされる感じか。

H2O+4つの光子 → 4H+ + 4e- +  O2

この時、酸素が発生して植物は酸素を吐き出してくれる。ありがたい。

電子は、誰かが持っているとたまらなくなり、トランプのババのように次々と受け渡される。そうして最終的にNADPHとATPが電子とH+を引き受ける。

道に迷い込んで葉緑体の中を彷徨っているCO2は、「ちょうどよかった、君にこの魔法の力を授けよう」とATPとNADPHから力を授かることになる。3分子のCO2からグリセルアルデヒド3-リン酸という形に姿を変えるのだ(炭酸固定回路)。この反応を触媒するのがルビスコと呼ばれる植物に最も多く含まれるタンパク質酵素である。

こうして、晴れて有機物になったCO2は、グルコースからデンプン・セルロース、ショ糖、アミノ酸、脂質などに多様に進化していくことになる。

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