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月記(2023.10)

10月のはなし。

〔写真:Canon AE-1 & ILFORD ORTHO PLUS〕



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いつだって、僕は、マイペース。

シンプルに良い曲だね、というのは褒め言葉にならないのだろうか?気にし過ぎなだけだろうか?



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良いなぁ。良いアルバムだ。



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『情緒大陸 Vol.3』を見に行った。

幽体コミュニケーションズは多少聴いたことはあったものの、ライブでどんなパフォーマンスをするのかは詳しく知らなかった。3人横並びで座り、左右は向かい合って、真ん中は俯き気味にギターを構えて、全員がフロアでもないどこかの空間に向かっているようだった。視線は重要ではない。視覚ではなく聴覚の焦点を合わせ、幽体コミュニケーションズが生み出す空間を味わう。そう導かれているような気がした。思い返してみれば、これは『情緒大陸』というイベントにぴったりのイントロダクションだった。

the band apartは僕の青春のバンドだ。お金がない学生の頃、ライブに行くというのはかなり贅沢な行為だった。お金を稼いで自由に使えるようになった頃には、都内で彼らが出演するライブは軒並み規模が拡大していた。そのせいか、新宿MARZのステージに立つ4人を見るのは、すこし不思議な感じがした。それでも、いざはじまってみれば、そこにいるのは25年間バンドを続けてきた4人のおじさん達。25年前の曲だろうが、今年の曲だろうが、そのとき一番かっけぇと思う曲を演奏し続けている。the band apartはずっと音楽で遊び続けている。それはきっと、おもしろいから。ただそれだけなのだろう。

JYOCHOのライブを見るのは、おそらく3回目になる。はじめて知ったのだが、どうやらだいじろーさんはキャベツが好きらしい。いつか本当に『情緒大陸』が見つかったなら、その土はたいそう美味しいキャベツが育つだろう。JYOCHOの音楽性を表す際、よく『マス・ロック』という概念が用いられる。この概念には無機的な印象がつきまとうが、JYOCHOの音楽は有機的だ。生き生きと心が動き、自然と身体が踊りはじめる。そこに決められた踊り方など存在しない。ただそれぞれの心と身体のおもむくままに、踊れるだけ踊ることができる。そんな人が集ったフロアを見渡して、だいじろーさんは最後に「みなさんなら自由に、どんな音楽でも踊れるはずです。」と言った。

『情緒大陸 Vol.3』に集った3組を、たとえば「〇〇系」というように、ひと括りにするのは難しいのではないだろうか。おそらく無理して括る必要もない。『情緒大陸』は広い。そこには様々な「〇〇系」があって当然だ。『情緒大陸』では、音楽から音楽へ自由に旅ができる。パスポートは必要ない。必要なのは、踊れる心と身体だけだ。



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『25TH ANNIVERSARY ROCK BAND』を見に行った。ストレイテナーの活動25周年を記念した、日本武道館でのワンマンライブだ。2階席の端っこで、青春のバンドのライブを見た。満杯のアリーナ席を見ていたら、かつてそこにいた若き日の僕の姿が見えた。

OJこと大山純さんが加入して4人体制になり、はじめてリリースされたアルバム、『Nexus』。そのリリースツアーファイナルの武道館。アリーナ席の後方エリアでつま先立ちになり、遠いステージに向かって拳を掲げていた。メンバーの名前を呼び、拍手し、声をあげ、飛び跳ねていた。

ストレイテナーの4人はだいぶおじさんになった。当然、僕も同じようにおじさんになった。筋肉痛になるのでたまにしか拳は掲げないし、メンバーの名前を大声で呼ぶのも恥ずかしい。2階席の端っこにいるお客さんは、比較的おとなしい。その穏やかな雰囲気は、けっこう居心地がよかった。

でももし、もう少し自意識が強くなければ、僕は大声で「ストレイテナー!」と叫んでいただろうと思う。アリーナ席にいるかつての僕になぞ負けない。こちとらお前より何年も長くストレイテナー聴いてんだよ。お前がどんだけ熱い衝動を抱いているかは知ってるが、こっちだって長いこと燃え続けてるもんがあんだよ。ちょっと身体が老いただけだ。なめんなよ。

2階席の端っこにいるお客さんは、比較的おとなしい。年齢も性別も見た目の雰囲気も色々だ。でも、その心の内まではわからない。25年前から見ている人も、今年から見ている人も、その内側にどれだけ燃え盛るものを抱いているのか、そこまではわからない。ただ少なくとも『ROCK BAND』と銘打っちゃってるバンドのライブを見に来ているのだから、相応のアツさはあるんじゃないだろうか。そんな人が集まって、日本武道館を埋めている。めちゃくちゃすげぇな、って思った。



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selfishのデビューライブを見に行った。


また会いたかった人が、いた。

…お見送りハイタッチがあるとは聞いてなかったので、ちょっと心が震えた。いや、マジで。ちょっとね。




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●今月なつかしんだ音楽