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20211220_思考_クロスノエシスについて.txt

2021年12月21日、クロスノエシスの4thワンマンライブ「 blank 」が開催される。


クロスノエシスは2019年5月にデビューしたアイドルグループである。

クロスノエシスは、AMEBA、FLAME、LAKE、RISA、MAIの5人による、「ダークポップダンスアイドルユニット」
ダークでダンサブルなサウンド、華やかで力強いダンスでステージを支配する。
日常に苦しみを抱える「あなた」の暗闇を、一粒の光のように照らします。

クロスノエシス公式HP(http://crossnoesis.com/about)


活動開始からおよそ2年半。感染症の流行による逆風に屈することなく活動を続け、4枚のCDをリリースし、ついに4回目のワンマンライブを開催する運びとなった。新宿MARZ、SHIBUYA O-WEST(現Spotify O-WEST)、恵比寿LIQUID ROOMを経て、Spotify O-EASTを舞台にクロスノエシスの現在の集大成が描き出されようとしている。

クロスノエシスを一目みて、僕はその世界に引き込まれてしまった。メンバーがかわいいとか、曲がいいとか、そういった話で済まない、ステージの背後に広がる、なにやらおぼろげな「世界」が見えてしまったのだ。それからというものの、どうやらこの2年半、しっかりと僕は魅了され、毒でも盛られたように狂わされてしまっていたようだ。

これは、遠足前日の小学生が眠れずにいるように、4thワンマンを前にして、これまでのワンマンを振り返り、じっとできなくなった暴れた思考を、かろうじてテキストとしての形を与えて造り出した「何か」である。




●1stワンマン「Vanishing Point」

記念すべき1stアルバム「chronicle」が発売されての、記念すべき1stワンマン。しかし、奇しくもこの日は初期メンバーであったSODAさんのラストライブともなった。消失点を意味するライブタイトルが、そうした意味まで含めて決められたかについては明らかではない。クロスノエシスというグループの世界を描くこと、メンバーをひとり送り出すということ、これからの道を示すということ。あらゆる意味が混ざり合ったあの新宿MARZという空間は、ひょっとしたら意図しない形で臨界点(ある意味での消失点)となっていたのかもしれない。この日お披露目が決まっていた「previously」。そして急遽この日に向けて作られた「MY LAST DANCE」。消失点から産まれたこの2曲は、今なお重要な曲として位置づけられているように思う(特に後者はわかりやすいだろう)。



●2ndワンマン「Construction」

RISAとMAI、2人の新メンバーを迎え、同タイトルの1stEPを発売し、文字通り新体制の「構築」をテーマに掲げた2ndワンマン。しかしながら、この「Construction」には感染症の猛威が襲い掛かることとなった。2020年5月に予定されていたライブは、緊急事態の名の下に延期を余儀なくされた。この時期、多くのライブハウスが看板を降ろし、多くのアイドルが表舞台から去った。いや、一度も表舞台に立つことなく、その可能性すら閉ざされてしまったアイドルもいただろう。そんな中、クロスノエシスは配信などを通じて活動を継続し、限られたライブの場をむしろ新体制成熟の機会として昇華させていった。
1stワンマンに続き、ここでも意図しない形で、クロスノエシスの「構築」が実質的に進んだうえで「Construction」というライブを表現する、という難題に立ち向かうことになってしまった。とはいえ、終わってから振り返ってみれば、パフォーマンスや知名度は結果的に向上、そしてなによりワンマンを待ちわびていた「熱」がフロアとステージ双方に満ちており、いわば嬉しい誤算となった点も多かったのではないだろうか。



●3rdワンマン「Space」

未だ不安定な情勢、時間の変更などはあったものの、これまでに比べて「予定通り」に開催されたワンマンがこの「Space」だった。2ndワンマン以降、「翼より」と「光芒」の2曲が新曲としてライブで披露され、シングル「moon light」が発売されることが、この「Space」に向けて発表されていた。2ndワンマンからおよそ半年、一目瞭然なパフォーマンスの向上、MCなしで突き進むタフネス、より派手にオーダーメイドされた舞台演出と、圧倒的なクオリティのライブだった。そう、圧倒的に良かったのだ。
だが、なぜか僕は小さな違和感を覚えた。なにか消化不良なような、不思議な感覚。ひょっとしたら、これまでのワンマンで起きていた「予定外」の爆発に、変な順応をしてしまったのかもしれない。当時の僕はこの感覚を整理しきれていなかった。
しかし、その後のクロスノエシスを追う中で、段々とわかってきた。きっとこの時の僕は、再びクロスノエシスの背後におぼろげな「世界」を見たのだ。初めてクロスノエシスを見たときに戻ったのだ。「予定外」のことに翻弄され続ける世界のなかで、再びクロスノエシスという「世界」を正面から読む体勢を整えることができたのだ。「Space」に正面から対峙したからこそ、それはハッキリとおぼろげで、わからなくて、消化不良になっていたのだ。



「Space」の後、4thワンマン「 blank 」の開催が発表された。そしてニューシングル「awake」が発売された。表題曲と、カップリングの「幻日」は、共に「moon light」との対応関係が示唆されている。「awake」のリリースイベントの中で新衣装が披露された日、「 blank 」の告知画像の色は衣装の色に対応して変化し、陽は傾いた。素直に読めば、「moon light」は夜、「awake」は朝、つまり夜が明ける、というイメージができる。ではなぜ「 blank 」は陽が傾き、赤と青の衣装の彩度は落ちるのだろう。そしてなぜ「翼より」は出だしで「月」も「太陽」も共に歌っているのだろう。どうして「幻日」と「光芒」は混じり合うのだろう。「ark」という新曲も披露されているが、「幻日」と似た気象現象として「アーク」と呼ばれるものが存在するらしい。そもそも「Space」の四角形と「 blank 」の四角形は同じものなのか。なぜどちらも空白を意味しうる言葉なのか。その半角スペースはなんなのか。「chronicle」の曲を振り返ってみれば、そこには「宇宙」も「色彩」も「月」も「太陽」も歌われている。

おそらく、「moon light」と「awake」が混じり合うように、「Space」と「 blank 」は地続きだ。「previously」の「空白のループ」という歌詞を思い出す。この半年間、たしかに陽が昇り、月が昇り、時は進み続けた。この時間経過の体感が、「 blank 」と「クロスノエシス」を読むための武器になるような気がしている。


クロスノエシスは僕達を照らす。クロスノエシスは「太陽」なのか?「月」なのか?僕達がいる暗闇とは、「夜」なのか?「朝」なのか?こうして直前になって勢いで書かないと形にも残せないくらい、この「世界」はおぼろげだ。ハッキリとおぼろげで、でもなぜか、心を惹かれてしまうのだ。せめてもの抵抗として、僕はこのぐちゃぐちゃな思考を電子の海に放ち、見知らぬ何かと交わる可能性を生じさせることにする。


きっと、結局はわからない。ただ、わからない「世界」に必死にアクセスしようとすることは、僕の「世界」を構築する糧になるはずだと信じている。