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クロスノエシス『circle』を聴く話[20220526_0]

これからはじまるのは、2022年5月26日の夜、クロスノエシスの1stフルアルバム『circle』に収録されていた、『とある大文字の希望』についての感想文である。

『circle』というアルバムについては、すでに2本の感想文を書いたことがある。5,184文字のものと、16,574文字のものがある。20日もかけてこれだけの文字をひねり出しながら、漠然と『とある大文字の希望』とか『宝物』とかしか書けていなかった、『SEED』について、やっと、不十分ながら、書き加える。


「隠しトラック」というものがある。CDに馴染み深い人なら知っている人も多いだろう、CDというメディアの仕様を活かした小技だ。その手法は、おおまかにふたつ。①最後の曲の後に隠す方法と、②最初の曲の前に隠す方法だ。

僕もそのひとりだが、『circle』のCDを手にした人の多くは、すぐに①の存在に気付いただろう。①の隠し方はバレやすい。たとえば、最後の曲だけ異様に再生時間が長くなっていたり、18曲収録だと思ってコンポを見たら「44曲」と表示されていたり。CDをPCに読み込ませて音楽ソフトでデータを読み込むようになるより前から、①の隠し方はバレやすいものだったといえるだろう。

一方で、②の隠し方は厄介だ。これを聴く方法のひとつは、最初の曲を再生し、その「00:00」時点よりも前まで巻き戻す、というものだ。このとき時間表示がマイナスになることから、「マイナストラック」と呼ばれることもある。「マイナストラック」は、厄介だ。①の隠し方とは異なり、最初の曲だけ異様に再生時間が長くなることもなければ、18曲収録だと思ってコンポを見れば、ちゃんと「18曲」と表示されてしまう。そのうえ、音楽ソフトにも、CD専用のプレーヤーにも、そのトラックの「00:00」時点より前に巻き戻すことができない仕様のものが存在しているのだ。「マイナストラック」こと、①の隠し方は、気付きにくいうえに、アクセスしにくい、二重の厄介さをもっているのだ。

そんな厄介な②の隠し場所に、『SEED』は、あった。

みっともない負け惜しみを言っておくが、ここに『SEED』がある可能性には気付いていた。2022年4月11日の時点で僕は反射的に『circle』のCDケースのトレイ部分を取り外し、裏ジャケの裏にある『SEED』のブックレット(?)を見つけていた。そして同時に、『circle』の「トラック44」の再生時間が「0:44」しかないことにも気付いていた。ただただ、当時の僕は、前述した「マイナストラック」のアクセスしにくさを乗り越えられなかったのだ。更にもうひとつ言い訳を重ねるなら、その日に渋谷で聴いた『SEED』の美しさが、その敗北を埋め合わせてなお余りあるものだったからこそ、アクセスを急ぐ必要を感じなかったのだろう。まだ言い訳を読みたいという酔狂な方は、過去に僕がひねり出した5,184文字16,574文字、随所に「言い訳」が散らばっているので、是非探して笑って頂ければ、と思う。


さて、本来は『SEED』についての感想を書き加え、「ほぼ全曲」ではない『circle』を聴く話を完成させたいところなのだが、プロの物書きでもない僕の力では、いまこの1,502文字をひねり出すのが限界だ。そしてなにより、明くる2022年5月27日は、記念すべきクロスノエシス活動3周年の日である。今日のうちに滑り込むように「マイナストラック」、言い換えるなら「"0"トラック」にアクセスした、その記録としては充分だろう。

そして明日、これまで残した全てを、大事に、大事に、更新するつもりだ。