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夏夜のこごえ 1

日記とか、体験談とかを書かなくなって、もう10年くらいになるでしょうか。

何年か前から、ふと、文章を書きたくなる衝動に駆られたことはあったのですが、その度に結局、億劫になってやめてしまっているというのを繰り返しておりましたが、ようやく時間に余裕ができたっていうのと、何せこのむせかえるような夏の匂いに中てられて、久しぶりに(性懲りもなく)書いてみようかなって思った次第です。

とはいえ、ずいぶんと間も空いて、書く中身にも自信がないので、できるだけひっそりと、再開したいっていうチキりから、この場を選ばせてもらいました。

もし…何かのご縁で僕が書いたものが、兼ねてからご縁があった方や改めてご覧になった方の中に、何かしら得体のしれない、ホワんとした何かしらを残すことができましたら、それはとても嬉しいことなので、その際はぜひご感想などお聞かせいただけたら恐悦至極にごじゃりまする(´∀`*)ウフフ(←顔文字が懐かしい)

では、何を書こうかってことですが、僕もすっかり忘れていたのですが(おい)、実は書き途中のシリーズがあったようで、その続きというか、ちょっと最初から今の自分が書くとしたらっていう視点で手直しをして、書いてみようと思います。

それでは、新シリーズ(!?)いってみましょう!

冒頭だけ、11年前の自分の文章を拝借して…


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さて、これから書くのは、もう何年も前の夏の終わりの生まれた、一夜限りの逢瀬についてだ。

もし、夏のそして、夜にこの話を読む方がいたら、ちょっとだけ、外の風に当たってみらえたらと思う。きっと頬を撫でるであろう、湿った空気と、すこしだけひんやりした風を思い浮かべながら、この夜の事を連想してもらえたら、今より少しだけ自分を重ねてもらえるだろうから。


「優香」


それが彼女が僕に教えてくれた"呼び名"だった。ただそれが、彼女の本名なのかどうか知るすべもないし、知りたいともあまり思わなかった。

なぜかといえば、彼女と僕が実際に会うことがあるとは思っていなかったからだ。

彼女は、関東在住ではあるものの、首都圏ではない所に住んでいたし、何より、彼女には家庭があり、同い年のご主人と、当時2歳になる男の子と暮らしていた。

興味本位で僕の日記を見ては、ひとり、濡らしていたようだが、それはどうしてもリアリティの無い世界だったようで、僕と会うことなど想像したこともなく、ましては、僕が実在することすら信じていないようすで、まるで僕を空想の世界の住人であるかのように扱っていた。

もちろん僕だって、だれかれ構わず実際に会うようなことはするタイプではなかったし、そもそも、いつもとても忙しくしていたし、何より、家庭がある女性をうかつに誘うようなことをしない、最低限の良心を持ち合わせていたからからだ。(…まぁ、自分から誘わないだけで、誘われたらひょいっと着いて行ってしまう程度の本当に最低限の良心なんだけども…)

余談はさておき、そんな僕らだったから、やり取りはしていても、そしてそれが例えば、互いの性癖をさらけ出しあうような、とても際どい内容だったとしても、実際に会うことは想定した、互いの呼び名や個人情報、身体的特徴や、顔写真などは、交換をしていなかった。

また、やり取り自体もそこまで頻繁ではなく、それこそ、月に数度、メッセージが届き、他愛もないやり取りをする程度だったが、それでも、若く幼い夫婦には(当時23歳くらい)様々な諍いやすれ違いがあって、ストレスを抱えている様子は見て取れたが、それでも何か積極的な行動を互いにとることもなく、月日は流れていき、また彼女からの連絡も来ない日が続いていった。

そんなある日、彼女、"優香"から、およそ2か月か3か月ぶりくらいに連絡が届いたとおもったら、そこには、あまりに唐突に、また少しぶっきらぼうに

「今夜、朝まで一緒に過ごしませんか?」

とだけ書かれていた。しばらく連絡がこないとおもったら、今度は唐突に、ある意味投げやりに、僕を誘う優香に少し、戸惑いを感じながらも、それ以上に、彼女に何かただことじゃないことが起こったのでないかという、切羽詰まった雰囲気を感じた。

様々な疑問が脳裏に浮かび、消えていく。だが同時に、自分とは関わりがない世界(バーチャルリアリティ)の住人だと思っていたどこか平面的な存在だった優香が、このやり取りを境に、途端に艶めかしい息遣いが感じられる存在へと僕の中で変わってもいった。

危険な匂い。隠微な香り。少しだけ、自分自身に、疼きを感じながら、僕は優香にメッセージを返す。

『どうしたの?急に。別にお泊りするのは構わないけど…何があったのか教えてくれる?』

すると、間を置かずに、返信が届く。
「いきなりごめんなさい。今夜会えるなら、その時説明します。急にごめんなさい。でもなんか一人で居たくなくて」

事態が深刻であることを感じた僕は、少しだけ及び腰になって、
『今夜だったら…ちょっと遅くなっちゃうけど、23時くらいに、○○に来れる?』

と、北関東に住む彼女にとっては、少しだけハードルが高い条件になってしまったが、何せ急なことだったので、もし、この条件で彼女が無理であれば致し方ないが、それでも…いや、そこまで彼女が僕を必要としてくれているのだったら、何とかして、彼女の力になってあげたいという気持ちもあり、少し遅い時間になってしまったが、彼女に都合を提示した。

すると、またしても間を置かずに、
「ありがとうとざいます!大丈夫です。行きますね!楽しみにしています。」

と連絡がきた。優香からのメールを見て僕は、慌てて入っていた、翌日に朝からサーフィンをする予定をキャンセルすることにした。

この時の時刻は、16時。

この後、友人と食事をすることになっていたが、お酒を飲むのはやめることにした。でも全然がっかりしなかった。なぜかって?それは、もともと、お酒が強くない僕は、飲んでも一杯か二杯くらいのものだから、そんなお酒よりも、よっぽど優香と会うことの方が楽しみだったからだ。

8月の終わりといえど、16時と言えばまだまだむせ返るように暑い。日中じりじりと照りつける太陽の熱は、アスファルトにフル充電され、日が暮れてもお構いましに、夜通しむせ返るように暑い熱波を醸し出してくれる。

暑い夜だが、それが熱い夜になるのかどうか。それが自分でも想像がつかず、少しだけ怖さを感じながら、でもその何倍もわくわくしながら、僕は一緒にサーフィンにいく予定の友達にメールを打つことにした。そして、家で見ていたテレビの画面にふと目をやると、某ニューハーフタレントが、ピンクの衣装を纏いながら、汗だくになりながら、沿道を歩いている姿がやけに白々しかった。夏が終わりかけているサインを少しだけ感じながら、携帯画面にまた視線を戻した。


続く

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