好きなことばたち紹介
読書量の少ない僕でも、ときどき、鳥肌の立つようなことばに出会うことがある。本を閉じ、目をつぶり、上を向いて、そのことばがただ僕の胸を波立たせるのにまかせる。はじめてその経験をしたのは、フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を読んだときだった。2年前の初夏の朝7時半、駒場キャンパスのガラス張りの食堂前のテラスで読み終えて、最後の一節だけを何周も読み直し、「これは自分のために書かれた小説かもしれない」と思った。いわゆる「心震える読書体験」をしたのだった。そのような経験はそ