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マニラで開催されたUX+ Conference 2023に参加してきました

2023年9月、マニラで開催したUX+ Conference 2023に現地参加してきました。freeeのグローバルデザインチームから私(Hal)とfreeeの子会社で、マニラに拠点があるLikha-iTに駐在中のプロダクトデザイナーShotaの2人で参加してきました。

UX+ Conferenceは2019年に設立し、世界中からUXデザインに関わる先駆者をスピーカーとして呼んだ、アジアの中でも大きめなUXのグローバルカンファレンスだそうです。今年も2000人規模の参加者が集まっていました。

今年のテーマは ”"REDEFINING THE UX PATH: EMBRACING GROWTH, INCLUSIVITY, AND IMPACT"

合計9つのセッションがあり、Inclusive Design, Design Career, Design Leader Ship, Design for Business impactなどなど様々なテーマでのトークを聞くことができました。登壇者はMeta, Canva, StripeなどのGlobal ComapnyからGrabやTymegroup, Swarmといったアジアのテック企業からの登壇者もいました。

この記事ではイベントで特に印象に残った記事の紹介や現地の参加者と話して感じたことを紹介しようと思います。

Growth as designer by Yutong Xue and Yunan Xue from Meta

ステージにXueさん姉妹が立っており、Growth as designer というタイトルのスクリーンが映ってる。

このセッションでは、MetaのプロダクトマネージャーとStaff Product DesignerのXueさん姉妹が幼少期から同じような道をあゆみデザインの道に進み、YutongさんはMetaのスタッフプロダクトデザイナーとして、Yunanさんはプロダクトデザイナーからプロダクトマネージャーへのキャリアチェンジした話を例に、デザイナーのキャリアに関する話がありました。同じような道を進んでいたからこそ、そこから今の道を歩んでいる2人の話は説得力がありました。

大学を卒業後、最初のプロジェクトに入りたての頃は覚えることが多く、自分がどんな道を目指していくと良いかわからない。先輩のLead Designerを見ても色々なArchtypesがあり、求められるスキルも違う。だからこそ、自分がなりたいデザイナーは何か?今は正しい道に進んでいるかを考えて最初はDesignという役割の中で成長していくことが大事である。

下から上に行くにつれて細くなり、1番上にいくと再び広がりを見せてる図がスクリーンに映ってる。
ジュニアからシニアまでは特定のスキルにフォーカスし、シニアより上になるとスキルの広がりが必要なことを示した図

一方、2人がジュニアからシニアになり、Leadデザイナーとしてプロダクト間の体験を包括的に考えることに責任を持ち始めたとき、デザインという領域を超えて学び続けていくことが必要だったという話がありました。技術の理解も必要出し、プロダクトマネジメントの理解もなければ、包括的な体験を考えてデザインしていくことが難しいと話していました。

また、領域を超えて学び続ける理由として、デザイナーの役割の変化をあげていました。ここ数年のデザイナーのJob Descriptionを見ても大きく役割が変わっており、テクノロジーの変化によってこれからも起きるだろうという話がありました。

昨今デザインの役割が広がり、ジュニアなデザイナーにとって何でも学ばなきゃいけないのか、何から手をつける良いのか?と不安に感じることも多いと思ってました。今回の話で、ジュニア、ミドル、シニア、そしてLead/Staff というふうに役割ごとに目標が違うので、最初はフォーカスするエリアを絞って学びを深めていく一方、ある一定の責任を持ち始めてから領域にこだわらずに学び初めていくというのは、デザイナーの育成や自身のキャリアを考える上でも参考になりました。

UX Principles by Aditi Kulkarni

ステージで登壇するAditiさん。

昨年のDesign Matters Tokyoにも登壇していたAditiさんからは、UX Principlesをどう活用するか?という話がありました。

デザインのルールや決まりを定める時にValuesやPrinciples、それぞれ使われるケースがありますが、定義の違いを説明した上でPrinciplesがどのような状況で役立ち、いつそれが必要とされるのかについての解説がありました。

まず、ValuesはShopifyのExperience Valuesを例に、自分たちがどのように行動するかを余白を残して設定されていると説明していました。

一方のPrinciplesはValuesと比べると厳格にフォローすべきルールと説明していました。Aditiさん自身スタートアップで働いている時はPrinciplesなんて必要ないと考えていたそうですが、デザイナーやエンジニアの人数が増え、デザインを検討する時間が減ってきたり、エンジニアからHuddleで仕様について教えてよ、同時期に何度も言われる経験をしてその考えが変わったそうです。

Principlesのメリットとして、

  1. 繰り返しの議論を減らすことができる

  2. 集中すべきところに時間を使える

  3. リモートワークや複雑な組織構造でコラボレーションが難しい時にも役立つ

  4. 複数の会社でコラボレーションする時にも役立つ

  5. プロダクトチームで役立つ

つまり、小さい組織で少人数のデザイナーだけで判断できる時には必要なさそうですが、規模が大きくなり、目線を揃えづらくなった時にこそ、チームをプロダクトに集中させるために役立つと話していました。

HOW WE PRACTICE INCLUSIVE DESIGN AT NETFLIX by Fonz Morris

ステージで登壇するMorrisさん

Research is mandatory.

NetflixのInclusive Design Teamで働くMorrisさんは、トークの最後にそう言いました。実際にサービスを使っている人たちのことをちゃんと理解しようと。会社の規模や人数によって、リサーチをするのが難しいかもしれないが、1人のユーザーでも良いから話を聞こうと言っていました。

彼のセッションでは、Inclusive Designがビジネスにどのようなインパクトを与えるかを実際のデータと共に紹介していました。

Netflixは世界中のたくさんな人にサービスを届けており、ユーザーの多様性は広がっている。国ごとにコンテキストがある。言語ごとの違いもある。世界中全ての場所で、あらゆるデバイスで、その国らしい体験を届けるためのアプローチをしていると話していました。

日本語のNetflixのUIを例に対応してる言語の多さを説明しているスライド。

特に驚きだったのは、Netflixでは62の言語でタイトルを表示し、38以上の言語でサブタイトルを作り、32の言語でUIを表示していると。また、言語によって表示が崩れる箇所がないように全ての画面をチェックしていると言っていました。

動画やサムネイルも国によって全く違うパターンのものを表示しており、それがビジネスの成果に繋がっているという話を最後に紹介していました。

Serving the underserved: Becoming a better designer by helping others by Kristian Mikhel

ステージで話すKristianさん。

GrabのLead DesignerのKrisitianさんからは、アクセシビリティの話とOpen Sourceに貢献する話が紹介されていました。

アクセシビリティをやらない言い訳がたくさん書いてあるスライド。

アクセシビリティの話では、アクセシビリティをやろうと言った時に、ステークホルダーから工数が...とか、全て対応するのは難しい...とか、ユーザー数の数%だから...みたいな反応があるかもしれないが、それはやらない理由にはならない、きることからすぐに始めて行こうという話がありました。

また、Open Sourceに貢献してみようという話では、経験の少ないデザイナーがOpen Sourceに参加して実績を積むことで、リアルなプロジェクトをポートフォリオに載せることで仕事につながるだろうと話していました。

僕も今の仕事を始める前にデザインの経験がなかったものの、たまたまインターンで入ることができたけど、そのタイミングでfreeeに入社できていなければ、仕事を探すことに苦労していたと思ってます。

デザインの勉強をこれから始める人、デザイナーへのキャリアチェンジを考えている人への経験の積み方として、OSSのプロジェクトに参加し、エンジニアと働く経験を身につけるのは確かに良さそうだと思いました!

Mind your own business by Jay Demetillo

ステージに立っているJayさん。

最後のJayさんのトークは最高でした。正直、13時から19時までのイベントで休憩は15分しかなかったので、夕方以降はとても疲れていました。

壇上に向かう途中ライトアップされるJayさん。

Jayさんがステージに上がった時、まるで日本のプロレスラーの登場シーンのように、会場の入り口からライトが当たり、音楽が鳴り響き、そのままステージまでマイクパフォーマンスをする登場のおかげで、一気に目が覚めて興奮しました。何か面白いことが始まるかもしれないと。

彼のトークは、「UXデザインの説明を親にできない人はこの中にどれくらいいる?」「デザインの価値をステークホルダーに説明できない人はどのくらいいる?」というあるあるネタで観衆を引き込み、ビジネスの言葉でストーリーを伝えて行く重要性を訴え、カンファレンスの最後に相応しい話だったと思います。

顧客に価値を届けるビジネスが生き残り、競合よりも顧客に価値を届けることで成功する。そして、デザインはその価値を引き上げることができる。だからこそ、デザイナーはビジネスの言葉でステークホルダーを伝えていく必要があると話していました。

トークの後半では、彼のサンフランシスコやアジアで働いた経験から語られたインクルーシブの重要性、そしてロールモデルになろうと言う話がありました。トークの途中、彼が「英語を話せることが賢さではない」が言っていたのが印象に残ってます。

僕自身英語に苦労し、英語が話せないことでグローバルなコミュニティに参加した時、自信を失いそうなこともありました。英語を話せて自分のデザインプロセスを説明できる人たちが凄い人に感じることもありましたが、彼のトークから自信をもらった気がします。

当イベントの録画はないんですが、過去にInclusive Designに関して似たようなテーマを話している動画を見つけたので、気になる方はぜひ見てください。

マニラでのUXカンファレンスに参加してみて

JayさんとHalのツーショット。
登壇者のJayさんとツーショット

イベント用にSlackが用意され、自己紹介の投稿を読んだり、会場でたくさんの参加者と話すことができました。今回のイベントでは30人以上の参加者と話すことができたんですが、僕が出会ったほとんどの人はスピーカーを除いて、エンジニア、コピーライター、またはIT以外の業界からUXデザインに興味をもっている人が大半でした。

今回のイベントで様々なスピーカーが「広い視野を持って学び続けよう」「ビジネスサイドの人たちが理解しやすい言葉でデザインのストーリーを伝え、関係性を構築しよう」と言っていたんですが、2000人規模のイベントで、デザイン以外の領域からデザインに関心をもっている人が集まることに驚きを感じ、これからのフィリピンでデザインの盛り上がりを感じました!

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