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在宅勤務は育児に悩む家庭を救えるか

ワンオペ育児、特に母親側のワンオペが多く負担が偏っている問題は、今では広く知られるようになりました。

かつてはそんな問題なかったと言う人もいますが、そもそも今の社会情勢や家庭環境自体が昔とは大きく異なっています。

男性側の無理解や社会の無関心にも問題は確かにあるでしょうけれど、そもそもの問題は家事・育児を夫婦二人だけで行おうとする難しさがあります。

核家族化、特に実家と離れて暮らす家庭が増えたことで、家事育児の負担を夫婦だけでこなさないといけなくなりました。

昔はそれこそ夫婦とその片方の親、あるいはもっと大きな家族や近所に親類が住んでいれば、何かの時に子どもを預けたり、育児の相談をしたりも出来ます。

近代以降、特に戦後は労働者の環境を法律で守ることが当たり前となりました。労働時間や労働日数もそれより以前よりははるかに減りました。家庭で見ると、夫・父として家庭のために外で働く男性は、法律によって一定時間に労働が抑えられている一方で、妻・母として家事と育児に専念している専業主婦は土日朝夜関係なくオペレーションが続きます。

20世紀後半の夫婦と、それ以前の夫婦との大きな違いはここにあると思います。かつては外での仕事も休みはあまり無く、働くことは辛いことでした。それでも自分と家族が生きるためには必要であり、そのために家の用事を全て女性に任せざるを得ず、かといって女性側も男性側がそれだけ働いていることは理解していたことで成り立っていた関係でした(何の不満も無かったとは言いませんが)。

夫の労働時間が減っても妻の家事時間が減らなければそりゃ喧嘩もするに決まっています。

また、共働きでも結局女性側に負担が偏ってしまうのですからどうしたって夫婦のみでの家事育児には無理もあります。それに加えて保育所不足という問題もあります。

もっと昔と比べると、仕事場と家庭が同じ場所もしくはすぐ側にありました。それならもし何か家事や育児にトラブルがあってもサポート出来なくもないです。

公共交通機関が発達し、仕事場から遠い場所に家を構えることが当たり前になりました。その方が、都会で暮らすよりも生計に余裕が生まれるからです。その代わり、通勤時間の増大による夫側の家事育児参加時間の減少というデメリットも生まれました。朝早く家を出て、夜遅くに戻ってきたら家事にも育児にも参加出来るわけがありません。

もちろん昔はみんな自宅で仕事していたというわけではありませんが、その代わりに今よりも多くの人数が家族として一緒に生活していたため、妻(母親)一人の負担は相対的に少なかったはずです。

一人っ子の多さにしても同様で、今は子どもが増えるとその分、経済的負担に加えて育児負担も増えますが、兄弟姉妹が多かった時代であれば、上のきょうだいが下の幼い子の面倒を見るものでした。

戦後に地方からの移住者が都会に増え、そこで結婚して家族になっても核家族となります。さらにその子ども世代たちはアングロサクソン的な、子どもは成人したら家を出るのが当たり前という意識によって、さらに核家族の家庭が増加していきます。かつては家にいても仕事が無い、生活が苦しいから成人したら実家を出たのに、倫理観によって脱実家が大人の条件と見なされるようになりました。

それに平行して女性の社会参加、共働き家庭が増加することにより、家事や育児についての負担が限界を迎えたのが現代なのでしょう。

何か一つの対策で、家事育児の負担軽減や少子化問題の解消なぞ出来ないでしょうけれど、もしかしたらコロナ禍の不幸中の幸いとして、増えた在宅勤務・テレワークがその問題解決の一助になるかも知れません。

テレワークを認めている企業側の理解が前提ですが、自宅で仕事をしながらの家事・育児が出来るようになれば、夫婦間の負担の偏りの解消にもなるでしょう。そう簡単な話でもないとは思いますが、遠く離れた職場にいるのと、扉一枚隔てた部屋にいるのとでは全く違うでしょう。

自宅で仕事をする親を見ながら育つのは、子どもにとっても悪いことではないでしょう。仕事とは何か、働くとはどういうことか、ということを間近で学べます。

コロナ禍が起きて良かったなどと言うつもりはサラサラありませんが、これを機に何か良い方向に変わることが出来るものがあれば、ためらうべきでもないでしょう。

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