平成レトロという言葉に震える

年末にふとした拍子に「平成レトロ」という言葉をネットで目にして震えました。

いや確かに平成の初期は昭和末期につながっているので、そう捉える面も分からなくはないのですが、平成が始まった日を記憶している人間としては、平成という時代が「レトロ」という扱いになりつつあることに軽く衝撃を受けています。

まあ、平成に入ってからは昭和の時代が古い時代の代名詞になったのと同じなのですけれど、一口に昭和と言っても63年もの長い期間をひとまとめにするのは無理があって、
・昭和初期
・戦前
・戦後
・昭和中頃
・昭和後半
・昭和末期
といった時代の分け方それぞれで、捉えられる年代も期間も異なります。

それぞれの時代で、特徴的な文化や風習、言葉遣いやファッションも異なりますし、金銭価値も全然違います。第一、昭和初期はラジオ放送が始まって数年で、昭和末期はテレビのBS放送が試験的に開始され、パソコン通信も始まっていましたし、電話もお大尽しか持っていなかった昭和初期と、自動車電話・携帯電話が実用化され始めた昭和末期を同じ「昭和」でひとくくりするのも無理があります。

平成は1989年と2018年でどれだけ変わったかというと、それもまた昭和の最初と最後くらい違うようにも思えますが、主としてテクノロジー関連の技術の進歩は大きかったでしょう。ただ、昭和の方では政治体制(そもそも憲法が違う!)も社会も丸っきり違っていますので、その点では平成の30年で全然違うとまでは言えません。

30年という期間は長いようで短いものです。昭和の終わり時点で昭和の始まりを知っている人は既にご老体でしたが、私自身がそうであるように平成の終わり時点で平成の始まりを知っている人はまだ中高年であってたくさんいました。昭和の場合は戦争で多く亡くなったという面もあるのですが。

ともかく、平成が過去の時代になった今、平成の初期についてはいろいろ誤解する人も出てくるのだろうなと思います。それに対して、オッサンが「いやそれは違うよ」と言って老害扱いされることも多くなるのでしょう。

時代考証というのは時代劇では当たり前ですが、明治や大正、昭和を舞台にしたドラマでも必要です。そしてもはや平成を舞台にしたドラマであっても時代考証という概念も必要になってくるのでしょう。

昭和末期で当たり前で平成には無かったものを平成中頃にあったような描写をしたら、SNSで突っ込むオッサンオバサンがアリの大群のように湧いてくるのは目に見えています。

そして数十年後に、令和の初めの頃を描くドラマがあるとして、そこで2019年なのに人々がマスクをしていたり、あるいは2021年なのに室内で誰もマスクを着けていなかったりしたら、その時代に中高年になっている今の若者が、やはりその時代におけるコミュニケーションツールで指摘・批判をするのでしょうね。

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