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簡単に聴けるけど自由に聴けなくなった音楽

私自身は音楽を聴くにしても音質の違いはあまり気にしません。というよりも音質の違いが分からないと言った方が正確かも知れません。ある程度以上からは多分分からないと思います。

今は音楽はストリーミングで聞いています。先日まではAppleMusicを利用していましたが、iPhoneからAndroidに変更したこともあり、YouTubeMusicをここ最近は利用しています。どちらにせよ、ストリーミング配信です。

音楽や音質にこだわりがある人が、ストリーミングやダウンロード配信あるいはデジタル音楽自体を批判というか、あまり好意的に見ていない意見をチラチラ見かけましたが、最近は減ってきましたかね。ほとんどの歌手・バンドの音楽がどこかのストリーミングで聴けるようになったと思いますし。

ストリーミングやデジタルの音質が低いから聞く気がしないというのは詭弁じゃないかとも思います。確かに聞く人が聞けば、生の音やレコードあるいはコンパクトディスクなどよりも圧縮音楽の音質が分かるのは確かでしょう。私だって128kbpsのMP3と64kbpsのそれとで同じ曲を聞き比べたら分かります。

しかし、それこそ昔はアナログレコードの音源をAMラジオから流して、それを家庭のラジオで受信して、居間で周りの生活音混じりで聴いて楽しんでいたはずです。もちろんその時代でも防音個室でこだわりのオーディオ設備を整えていた人はいましたが、圧倒的多数の一般人は音質が悪いからといってラジオやカセットテープを使わなかったわけではありません。

デジタル音楽、特にストリーミング配信に対する抵抗感というのは、その音楽を聴く権利だけを定期的に購入しているだけで、将来無期限に聞くことが出来るとは限らないことに対する抵抗感でもあるのかな、とも思います。これは時代の流れでもありますし、配信を行う企業が音楽業界にどれだけ還元できているか、という問題でもあります。

また、デジタル配信されたものは、やろうと思えば劣化無しのデジタルコピーを無限に作成出来ます。オリジナルの価値が限りなく減っているわけですが、先述のレコード→ラジオ→カセットテープなんかだと経由する度に音質は劣化します。CDからカセットテープにコピーする時も劣化して、カセットテープからカセットテープにコピーする時にも劣化していきます。

今は100パーセントのデジタルコピーを簡単に作られるため、著作権保護を気にせざるを得ません。音楽の制作側に全く還元されない違法コピーは防がないといけませんが、それをいろいろな業界に求めていく肝心のJASRACがそれ以外のところで評判が悪いのはかえって音楽業界のためにならないのではないかとも思ってしまいます。

著作権保護の仕組みはあってしかるべきではあったのですが、21世紀に入り音楽視聴の新時代としてアップルのiTunesは、逆にDRMを外して誰もが気楽に音楽を楽しめるようにしました。気軽には聴けるようになった一方で、
「この音楽を所有しているのは誰か?」
という問題も提起されてきました。

iTunesは始めはダウンロード販売でしたが今ではストリーミング配信の2強の一角です。ストリーミング配信では、その音楽の権利を持っているのは誰でしょうか? そもそも、「音楽の権利」とは何でしょうか?

製作者(歌手や作詞作曲者)、提供者(レコード会社)、配信者(AppleやSpotifyなど)
、購入者(私たち消費者)など立場が色々ありますが、1つの曲の権利が様々に分割されています。レコードやCDの時代にも同じ立場はありましたが、最終的に購入した消費者が、その円盤を持っている限り、かつ個人使用に限り好きなように出来ました。今のストリーミング時代ではそうではなくなったことで、気軽には聴けるけど気楽には聴けない状態になってしまったのではないかな、と思います。

個人的な想像では、その気軽さと気楽さのギャップがストリーミング配信に嫌悪感を持つ人がいる理由ではないかと思います。

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