スクリーンショット_2019-05-18_11

思い込みで批判してはいけない

環境が変わったのに人の意識が変わらないためにギャップが生まれて問題が生じる、ということはよくあります。

産業革命以降、労働者の権利として少しずつ労働時間などの労働環境が法的に保護されてきたことにより、今の労働者は原則として週40時間労働となりました。これは日本での話で、韓国では昨年減少となりましたが日本よりも長時間となっています。

韓国でも「働き方改革」がスタート-1週間の労働時間の上限が52時間に:基礎研レター
https://www.huffingtonpost.jp/nissei-kisokenkyujyo/korea-20180712_a_23477501/
韓国では、残業時間を含めた1週間の労働時間の上限を従来の68時間から52時間に制限することを柱とする改正勤労基準法(日本の労働基準法に当たる)が7月1日から施行された。

一方、労働者の権利保護意識が強いフランスでは週35時間制となっています。

基礎情報:フランス(2013年) 4. 賃金・労働時間・解雇法制
https://www.jil.go.jp/foreign/basic_information/france/2013/fra-4.html
法定労働時間:1週35時間又は年1,607時間

単純に時間が多いから、あるいは少ないから良い悪いというのは、歴史的経緯や時間以外の労働環境や経済的な生産性など色々な観点から見るべきものだと思いますが、おそらくどの国においても長期的に見れば労働時間は減っていくものだと思います。

そういった傾向に対して、「昔はもっと働いていた」という感想を持つ人はいると思います。しかし、単純に労働時間だけはなく労働するのに必要な拘束時間、言い換えると、自宅を出てから自宅に戻ってくるまでの時間で見比べるとおそらく話は違ってくるのではないでしょうか。

都市の規模が小さかった昔は、自宅から仕事場まで長距離移動することは無しに働くことが出来ました。企業密集地と住宅密集地がそれほど離れていなかったはずです。そのため通勤に要する時間が少なければその分長時間労働可能だったはずです。

しかし、都市の人口密度が高くなり都市周辺に住む労働者が郊外に住むようになって、そこから都市に長時間通勤して労働するようになると、職場での長時間勤務が過重労働となってしまい難しくなります。

ですので、都市化の進行によって労働時間を削減していくのは労働者の総労働時間(労働時間+通勤時間)を考えると当然のことなのです、とここまで書いてきておいて、実際にデータあるかなと思って探してみると、こんなのが見つかりました。

日本人の労働時間は減少したか?
―― 1976-2006 年タイムユーズ・サーベイを用いた 労働時間・余暇時間の計測 ――
https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/publishments/dp/dpj/pdf/j-174.pdf

東大の先生(当時。今は早大にいるそうです)の論文が見つかりました。
政府が出している社会統計調査を元にしているようですが、ここまで私が書いてきた内容を全部否定するような内容でした。

昔よりも今の方が労働時間も総労働時間も長くなっています。

思い込みだけで推論を組み立てるといけませんね。
「昔はもっと働いていた」というおっさん(もしくはおじいさん)の意見を批判しておきながら、同じ失敗をしております。反省を込めてこの投稿を行います。

しかし、データで改めて見せつけられると、そりゃあ余暇の時間が減ってテレビを見る人は減り、遊びにお金を使う人が減るはずだ、と思わざるを得なくなってしまいますね。

上にキャプチャしたのは男性のデータですが、男女合計でも女性のみでのデータでも傾向は同じです。共働き家庭がレトルトで食事を済ませるのも、出産や子育てが大変なのもこのデータを見るに当然ですよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?