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眠れない理由。

夜中に目が覚めて、再入眠できない。

ああこんなときはだいたい、今日やり終えなかった仕事のことが気になったときだと決めつけて悶々としたが、ちがった。情けないことに自分は自分が眠れない理由さえ直感でわからないんだった。

脳内で紐解いていくと今日、近所のタイ人にしかめっ面で言われたこと。

「JAPANESE CRAZY・・・タイは楽しい。タイに帰りたい。タイではみんなニコニコして、こっちおいで、いっしょに飯食おう!といって笑って酒飲んで寝る。日本は違う、ご飯食べようといってもみんな『また今度』という。JAPANESE CRAZY」

日本人の私はどこか寂しくなって、日本の好きなところはないのか?と聞いたら「アワジシマ」。「アワジシマは海がある。海が好きだ。波があるからたのしいし魚が取れるし」家の前に川あるやんというと「魚とれない」と笑った。

「JAPANESE CRAZY」
アンタら狂ってる、と言われ私の心はシバかれた。

だから寝れないんだわ。彼の言葉にはいろんな意味が含まれていたと思うが、私の中でいっこの概念と直結してしまった。『遠慮』だ。

数日前、立ち話で私が彼に、最近タイ料理すき!ココナッツカレー最高みたいなことを伝えると、昼食時に家のベルが鳴り「カレーつくったからこい」と呼びに来た。たちまち、私の中ですんごい遠慮が吹き出した。いまから急に家いくの失礼じゃないのか、ココナッツカレー好きとか軽い気持ちで私が言ったからか申し訳ないな、お金とか払ったほうがいいかな(せめて食材費だけでも)、ほんとうにいいのか、急に隣人つれてきて彼の妻さん(日本人)はなんというのだ、ださい部屋着なんだけど着替えたほうがいいのかな、あとついでに言うと、我が家もう飯炊いてるとかそういうこちらの都合におかまいなしでびびった。
[でも、ココナッツカレー食べたい]、その心一つで私はお邪魔した。めちゃくちゃうまかった。すり鉢と棒でスパイスを挽いていると。妻さんもタイ夫のこのノリに慣れているのか歓迎してくれた(と思う)。向こうのタイ語と英語の混在と、私の拙い英語では言語によるコミュニケーションはまじで成立せず、たまに正直分かってないのに頷いたりもしていた。(これも分からない、聞き返せない、遠慮だ)
ただしかし、お前がつくった飯がうまいその1点のみで場が成立していた。ごちそうをつくって酒を飲んで、そしてまもなく彼は居間で昼寝をはじめた。うまい料理を食べさせてくれる以外はおかまいなしの姿勢にこちらも正直リラックスできた。その日はもう、お返しの仕方すらわからないし、めちゃお礼だけ言って退陣した。

私は、結局その日は無事にカレーをご馳走になったが、最初は戸惑って、急すぎて、断ろうかと思った。私に蔓延ってる遠慮、遠慮から生まれるしょうもないコメントとか愛想笑いとか分かってもないのに頷くとか、自分で気持ち悪いなと感じていたためにそこを突いて「JAPANESE CRAZY」と言われた気がしたのは被害妄想かもしれないが。

彼の遠慮のないコメントは逆に心地がよく思えた。全身で異文化を突きつけてくるこのタイ人がちょっと怖いが、私をより良くする刺激な気がする。愉快なことに、美味しいものをまた彼と彼の家族といっしょに食べたいという思いだけがある。

こんな良いのか悪いのかもわからないドキドキを抱えてるから、ちょっと眠れなかったんだわ。眠れない理由を仕事のせいにしかけたのも、なんなら職場への後ろめたさからくる遠慮。自分の心すら隠してしまうこれは難儀だ。なんだかこれは病気だ。





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