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第2章【平成型人事制度のデメリット解消】賃金カーブ・給与レンジ・洗い替え給与について

今回は、「平成型人事制度のデメリット解消」と題しまして、目標管理制度やコンピテンシー、賃金カーブ、給与レンジ等のデメリットについてご説明します。

特に本記事では、賃金カーブ、給与レンジ、洗い替え給与についてお話します。

またこちらは当社代表の平康慶浩が2023年7月自社セミナーにて講演した内容を全3回にわたってご紹介する記事です。本記事は「第2章」となりますので、ぜひ全ての記事をご覧いただけると嬉しいです!

*本記事は5分程度で読むことができます。

【第1章はこちら】

【第3章はこちら】

外国語には存在しない賃金カーブ

賃金カーブという言葉は、英語には存在しません。
なぜなら、外国企業は年功型の賃金設計ではなく、職務型の設計であるため、基本的に年齢と賃金に関係がないからです。
日本では逆に年功型が主流であるため、賃金カーブという概念があります。

下の図は、年齢と賃金の関係を示した例です。
左側は一生雇用することを想定した賃金カーブであり、右側は契約的な概念での賃金設計の例を示しています。

左のグラフは、日本にて広まった、いわゆる生活給を示しているとも言えます。つまり、人は年を重ねていくにつれて生活するのに必要なお金が増える、という考え方に基づいています。

しかしながら、世界的には右側のグラフが基本です。ジョブ型や職務等級制といった仕事をベースに考えたグラフであり、給料と年齢には相関関係が本質的にはあまりないことが知られています。
また、これらは職務に合わせた給与をグラフにプロットした結果であり、左側のいわゆる固定的な賃金カーブとは異なります。

賃金カーブでは、初めは信用がしにくいこともあり低めの給与から始まり、それが少しずつ上がっていき、インフレ等の要因にも対応して変化していく、という形になっています。

しかしこの場合、優秀な若い層は低い賃金を理由に辞めていきます
そういった問題点があるため、年功型ではなく職務をベースにして給与を決定するメリットがあります。

賃金カーブという概念を忘れ、なるべく職務をベースにした賃金設計を目指すことが大切です。

接続型給与レンジのデメリット

接続型が流行した背景

ここから、多少人事領域のマニアックなお話になりますが、20年ほど前に接続型給与レンジが流行りました。

接続型給与レンジについては、以下の図をご覧いただければわかりやすいかと思います。
各等級の給与レンジの境界が重なっているものを接続型といいます。

上図のように、給与レンジは主に3つありますが、接続型が流行した当時の背景として、給与レンジが重ならないほど良い、つまり図の右側の方が良いと考えられていました。

しかしながら現在では、この給与レンジは機能しないのが事実です。

現代では接続型が機能しにくい理由

接続型のような給与レンジが重ならない設計が機能しない理由は、先ほど述べた賃金カーブと似た背景があります。

結論から述べると、現代では中途採用が増加し、日本企業特有の「一生雇用の形態」が主流ではなくなりつつあるためです。

一生雇用の時代であれば、接続型レンジのような設計でも定年退職まで見据えた人材がいるため給与面で問題は特にないですが、中途採用が主流となりつつある現代では一生雇用の考え方がなく転職時に職務に合った給与が求められるため、接続型レンジは人材確保に負の影響を及ぼします。

したがって、給与レンジは重複型が現代では向いており、かつ先ほど述べた賃金カーブも無くすことが大切です。

洗い替え給与は心理的デメリットしかない

2000年代頃に、管理職は洗い替え給与にする、という流行がありました。
洗い替え給与とは、以下の図のように年度ごとの評価によって給与を変えるという仕組みです。

洗い替え給与は管理職に責任を持たせるために有効であるとされ、流行しました。

しかし、この洗い替え給与には2つデメリットが発生しています。

1つ目は、年功的評価が横行したことです。
年功的に評価・給与が上がっていく仕組みが多かったため、本来の効果が薄れてしまいました。

そして2つ目に、高い評価であった人が一度普通の評価を受け、年収が減りやる気が下がることで、退職してしまうケースがあったことです。

そういったデメリットが多いことで、洗い替え給与はすすめられていません。

まとめ

今回は、賃金カーブ、給与レンジ、洗い替え給与についてご説明しました。

特に賃金カーブと給与レンジについては、お互いに関係性のある話ですので、合わせて理解していただければ嬉しいです!

次回は第3章の最終回で、マトリクス昇給とグランドデザインについてご説明するので、ぜひそちらもご覧ください!


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