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CHROの職務について

セレクションアンドバリエーションの平康慶浩(ひらやすよしひろ)です。

CHRO(チーフヒューマンリソースオフィサー)の役割とは、事業責任者を確保することだ、と前回書きました。

今後多くの日本企業で、CHROは必須となるだろうと考えています。

特に中小企業では、「事業承継」のタイミングが近付いています。
今の社長が50代後半くらいのタイミングで、20歳くらい若い世代を育てていくと、ちょうど社長が60代半ばくらいのタイミングで40代後半の事業責任者候補が育ちます。

また、両利きの経営、という考え方に基づく、新規事業の立ち上げが増えてゆきます。
多くの既存事業が収益力を低下させてゆく中で、新しい事業、新しいサービスを立ち上げることが急務となる会社が多いからです。
そのためには、世代を問わず、意欲ある従業員にチャンスを与えていかなくてはいけません。

その際の目利きこそがCHROです。
CHROとは、故事成語でいうところの、伯楽なんですね。
皆さんの会社に、伯楽がいると、さらに良い会社になると思いませんか?

では、伯楽としてのCHROは、どのように職務を進めればよいのでしょう。
たとえばおそらくCHROに一番近い役職の方、人事部長が伯楽としてのCHROを目指すには、自分の職務の中で何を優先すればよいのでしょう。

CHROとしての職務は、一言でいえば抜擢です。

ただし、抜擢のためには、周囲の納得が必要です。そして、適切な職務の付与が必要です。
この二つは常に両輪なわけです。

周囲の納得を得るためには、才能が可視化されなくてはいけません。
かつて人材登用で多くの企業の模範となった、ゼネラルエレクトリックのジャック・ウェルチ氏は、9ブロックという人材可視化の仕組みを活用したといいます。
「直近のパフォーマンス」と「将来のポテンシャル」の2軸それぞれを3ランクに分けることで、人材配置方針に反映しました。
たとえば、パフォーマンスはふつうなんだけれど、将来のポテンシャルが高いと判断されれば、新規プロジェクトに配置されたりするわけです。あわせて集中教育の対象として数年間、パフォーマンスを確認されるようになります。
そこでパフォーマンスも証明されれば、晴れて昇格対象となるわけです。

日本企業で9ブロックを導入しようとする場合、今から新しい判断基準を導入しても、判断基準データがそろうのには数年がかかってしまいます。
そこで考えられるのは、多くの企業で導入している、「目標管理の結果=業績」と「行動や能力の評価結果=将来性」を活用することです。
ゼネラルエレクトリックは、3段階の評価基準を、上位20%、中位70%、下位10%に置いたといいますので、それを模倣してもよいでしょう。
結果として、以下の区分での人材が可視化されます。

・スター:業績も将来性も高い人材
・現在のメインプレイヤー:業績が高く、将来性は普通
・次世代のメインプレイヤー:業績は普通だけれど、将来性が高い
・組織の屋台骨:業績、将来性ともに普通(合格点)
・配置に問題:将来性はあるが業績が悪い
・意識・行動変革対象:業績は良いが将来性が低い
・退出:いずれも悪い

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このような可視化手段は、多くの会社ですぐに導入することができます。
しかし問題は、このような判断を行ったとしても「ふーん、そうなんだ」とか「まあそうだよね」というように、具体的な対策につながらないことが大半です。

だからこそ、CHROは伯楽にならないといけないのです。
先ほど書いた、適切な職務の付与が必要なのです。
可能性のある人材を見出し、それらに適切な職務を付与し、育て、成果を生み出してもらうようにします。
大まかな方向性は下記のように整理できます。

・スター ⇒ 今よりも上位のポストへ早急に抜擢する
・現在のメインプレイヤー ⇒ モチベーションを維持
・次世代のメインプレイヤー ⇒ 重点育成候補
・組織の屋台骨 ⇒ 汎用スキル教育&指導的立場への試用
・配置に問題 ⇒ 早急に配置転換
・意識・行動変革対象 ⇒ コーチング対象
・退出 ⇒ 降格あるいは早期退職へ

これらはいずれも、CHROに権限がないとできません。
だから人事部長ではなく、役員としてのCHROが必要になるのです。
また、ジャック・ウェルチ氏がそうであったように、経営者本人がCHROの役割を担う場合もあるのです。

これらの取り組みを、CHROに属人化するだけでは、組織は十分に機能しません。CHROの判断に基づき、採用、配置、評価、教育、報酬、退職の各制度に落とし込むことが重要です。

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この表は一例ですが、ぜひ皆さんの会社でも、CHROの活躍に向けた準備をなさってみてください。


セレクションアンドバリエーション代表