マガジンのカバー画像

『コモンズ思考をマッピングする』輪読会

10
山本眞人さんの『コモンズ思考をマッピングする - ポスト資本主義的ガバナンスへ』をゼミのメンバーと輪読しながら、これからの社会のあり方をディスカッションしています。
運営しているクリエイター

記事一覧

コモンズ思考をマッピングする 補論

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の補論「グレーバー&ヴェングロー “The Dawn of Everything” を読む」について、サマリー、ゼミでの議論内容、感想をまとめました。(文責 M1 高田) サマリー”The Dawn of Everything” は、文化人類学者のデビッド・グレーバーと、比較考古学者のデビッド・ヴェングローの約10年の共同作業の成果です。”The Dawn of Everything

コモンズ思考をマッピングする 第7章(前半)

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第7章「『コモンズ+P2P』思考を地図化する——ポスト資本主義的ガバナンスへ」の前半について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 M1 石井) サマリー現代日本社会の課題と社会運動、抵抗闘争 筆者は、「現代の日本の政治的状況はかなりひどい」と日本の現状に懸念を示しています。 その背景として、日本は、太平洋戦争の失敗から学ぶことなく、戦後

コモンズ思考をマッピングする 第7章(後半)

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第7章「『コモンズ+P2P』思考を地図化する——ポスト資本主義的ガバナンスへ」の後半について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 M1 中川) サマリー1. Commons-based peer play 本節では、ホモエコノミカスvsホモルーデンスという視点で比較を行います。 筆者はこれまでの議論で様々な分野の「コモンズ+P

コモンズ思考をマッピングする 第6章

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第6章「デジタル・コモンズの囲い込みとカウンター・ヘゲモニー」について、本章のサマリ、ゼミでの議論内容、感想をまとめました。(文責 M1 高田) サマリー第6章は、デジタル・コモンズの囲い込みに対するカウンター・ヘゲモニーを取り上げます。デジタル・コモンズは、天然資源のコモンズとは異なる性質を持ちますが、共用資源プールやコミュニティ、自律性などにおいて重要な共通点があります。本章で

コモンズ思考をマッピングする 第5章

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第5章「都市コモンズの囲い込みとカウンターヘゲモニー」について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 中川) サマリー第5章は、J・ジェイコブスとE・オストロムの対比から始まります。 二人の女性は多くの共通点を持つと同時に、対照的なところもあると筆者は述べます。 ジェイコブスは、下町に集積する小規模企業と住民の暮らしの多様性が都市の創造

コモンズ思考をマッピングする 第4章

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第4章「生態系コモンズの囲い込みとカウンター・ヘゲモニー」について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 M1 石井) サマリーハイ・モダニズムvsコモンズ・アプローチ この章では、第3章でも取り上げられていた生態系コモンズの囲い込みについて、いくつかの事例を紹介しながら解説されています。どの事例でも共通していることは、ハイ・モダニズムv

コモンズ思考をマッピングする 第3章

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第3章「過去と現在のエンクロージャー」について、本章のサマリ、ゼミでの議論内容、感想をまとめました。(文責 M1 高田) サマリーコモンズ思考を深めるにあたり理解が不可欠な「エンクロージャー」と、それに対する「カウンター・ヘゲモニー」にフォーカスした章です。第3章ではコモンズの囲い込みの原型と言われるイギリスのエンクロージャーを取り上げ、過去のエンクロージャーを振り返るとともに、デ

コモンズ思考をマッピングする 第2章

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第2章「ヴァナキュラーな領域と複雑性」について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 M1 中川) サマリー第2章は、これまでのE・オストロムによるコモンズ研究の話題を引き継ぎ、前半はオストロムによる「ハイ・モダニズム」への批判により幕を開けます。「ハイ・モダニズム」はジェームズ・スコットによって唱えられた概念で、「単純化」と「把握しやすさ

コモンズ思考をマッピングする 第1章

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の第1章「E・オストロムのコモンズ研究」について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 M1 石井) サマリーE・オストロムは、ノーベル経済学賞受賞経験のあるアメリカの政治学者・経済学者です。彼女の主な功績として、前回の記事であったように、G・ハーディンの『コモンズの悲劇』の偏見を打破したことが挙げられます。 ハーディンは『コモンズの悲劇』

コモンズ思考をマッピングする 序章

研究室で輪読を行なっている『コモンズ思考をマッピングする ——ポスト資本主義的ガバナンスへ』の序章について、全体のサマリ、ゼミでの議論内容、読んだ感想をまとめていきたいと思います。(文責 M2 明石) サマリー序章は、「コモンズ」というものがどのような背景のもとに「再発見」されてきたのかについて紹介したうえで、「コモンズ」をめぐる議論や運動を概観し、本書で描かれるいくつかの到達点を示すという、本書全体の見取り図になっています。 デービッド・ボリアーが“The Wealth