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白鳥哲監督・『魂の教育』を観て

2021年新年に期間限定で白鳥哲監督の7作品がオンラインにて無料公開されていた。

 私はありがたくその恩恵にあずかることができ、いくつか作品を観ることができた。   

 中でも感銘を受けたのは、教育学研究家・七田眞先生のドキュメンタリー『魂の教育』。 

一回では物足りなく、見終わっですぐ二回目を視聴した。                    右脳・幼児教育の第一人者であられる七田先生、映画では七田式の教育方針が紹介されており興味深かったが、特筆すべきは先生の生き方そのものだろう。

 運・鈍・根の必要性(七田先生のお父様からの教え、成功する秘訣)や、 何があっても動じない姿勢。 全ての出来事をプラスに見る習性を身につけている、といったこと… どんなこともプラスにとらえ、トラブルが起きた時も、相手のマイナスを願うのではなく、相手が満足する円満なイメージをして解決に導く、という話は印象深かった。

 それらの中でも一番心に刺さったお話は、先生が若き日に願った三つのこと…。  

 それは、「極貧の生活をすること」「生きるか死ぬかの大病をすること」「最も信頼する人に裏切られること」ー。

 結果、これらの先生の希望は全て叶えられることとなるのだが、このお話には圧倒的に度肝を抜かれてしまった。 

 自ら不幸を望むなんてありえない、と反射的に思った私。次第にその意図が見えてきて、また更にびっくりする、という具合に。

 先生はどうして不幸を望まれたのかー                 映画でははっきりと言及されておらず、推測の枠を出ないが、 どんな時も平常心でいるような修行であり、"ない"ではなく、"ある"に目を向ける。どんなことが起きても、自分は大丈夫だと信じる為のもの。 自分の人生は悪くなりようがなく、全ては最善ということを自身の身を持って受け止める為の勉強、という風に捉えられたのでは… と思うと、七田先生の凄みが迫ってくる。 

 私など、つい、なぜこれがこうなのか…とか、望まない現状を否定し、自分の思考に固執してしまうのだけど、 そうじゃないんだなぁ、全てを引っくるめて、"それでいい"んだなぁ、流れに逆らわず、怒りに身を任せず、ただ淡々と己の魂の正位置で、自分の運命を受け止める、それが最善だといったふうに…。

 七田先生は若くしてそれに自覚的で、不幸なシチュエーションを自ら望んだ、ということが一般人とは大きく異なる精神世界の持ち主だと唸らされる。                     嫌な状況は可能な限り避けたいという、自分の小物さ加減に唖然、としてしまうのだった。

 吉凶はあざなえる縄の如し。 幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくる、という意味だ。 

 人生を味わうのに、表面的な事柄に一喜一憂し、単にこれは上手くいって良かった、これは上手くいかなかったから人生の汚点だった、とはならず、全てを包括する視点で受け入れる。 そして、起きたことから学びを得、その後の人生に活かしていくのだ。 

頭では理解できても実際を行動を伴うとなれば、それは容易いことではないと思わされる。 

 七田先生は、三つの不幸だけでなく、ご長男を幼い時に病気で亡くされているのだが、それについても運命を受け入れる。という事をされている。

 どんなことも魂を成長の為に必要なこと。 マイナスからプラスを引き出す。           その視点の崇高さに心震え、自身を鼓舞させられる思いだった。 やはり、ここでも覚悟が試されるような気がする。人生に対する全幅の信頼。 

それは、昨年読んだ本『マスターの教え』に書かれていた箇所に通じるものがあると思った。

 『正しい態度でいれば、すべての状況をコントロールできる』。 

 いつか先生の視点に少しでも近づくことができたら、と身が引き締まる思いだ。

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