「ふるさと胸中」

わたしは今
すぐさま立ち返って、
ふるさとの冬を描きたい。

わたしの知る中で一番冷たくて
わたしの知る中で一番血に馴染む。

ここが嫌いなわけじゃなくて、
とりわけあの町が好きなのだ。

町に残った旧友が
誇らしい。
少し悪いと思っている。
わたしは置いてきてしまったから。

あの町で働いて、生活をしている。
今感じていなくても、
間違いなく町を支え、
繋いでいるのは彼らで、
決してわたしではない。

わたしが町の子どもだったこと、
誰が覚えているのだろう。
ふるさとの坂道を、
家の下のオオイヌノフグリを
愛していることを
誰が知っているだろう。

この夜半からはとても遠く、
それでもこの胸に近く寄り添うふるさと。

ぼくを町の子でいさせて。

わたしは今
すぐさま立ち返って、
ふるさとの冬を描きたい!

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