DX閑話~デジタル化の試練「標準化」
昨今、DX、DXと言って、さらにDX、DXと言っているのは中々喜劇的な様相を見せておりますが、ここで実務レベルでデジタル化するときの難関である「標準化」が立ちふさがってます。
デジタルツールを入れれば万事OKではない
デジタルツールを入れれば、仕事が自動化されて、効率が上がるというのは、ちょっとした迷信です。
実際は、デジタルツールを入れても、仕事が定まっていなければ、むしろデジタルツールの機能のほとんどが使えていなかったりします。
デジタル化は仕事が標準化されていなければならない
デジタルツールは、設計された動きしかできないから
なので、デジタルツールは人それぞれのやり方に対応することはできません。なので、仕事のやり方がバラバラで、標準化が出来ていなければデジタルツールの導入効果が出ないという事です。
しかし、なぜか属人的に場当たりで、個々人が独自判断で行う作業を「職人技」ともてはやす人が多く、なんとなくうまくいっているので「ヨシ!」とされている現場が往々にしてあります。
教科書的な標準化のメリット
教科書的に言えば、仕事の標準化の目的は、品質や生産性、安全性や効率性を向上させることとなります。そして標準化の成果はだいたい
仕事のムダやロスが減る(管理や手順が減る)
仕事の品質や速度が安定する(作業者による能力のばらつきが減る)
仕事の責任や役割が明確(業務の範疇が明らかなので)
仕事の教育や研修が容易(作業が明確なので)
デジタル化がしやすくなる(やり方が決まっているので)
となります。
業務を標準化するポイント
経営者が「職人技」の幻想を捨てる
職人技が活かせる業務は稀です。今となっては機械の力を借りれば相当なことが出来るのは、生活していて感じていることでしょう。産業革命以降は、どちらかというと、標準化やシステム化の方に職人技がシフトしているでしょう。
例えば、サイゼリヤのテーブルワインのクオリティは、仕掛けを知ったところで大いなる謎です。このシステムを組み上げるところはまさに職人技です。
経営者が、現場が標準化に手間暇をかけることを容認する
先に、わざわざ教科書的なメリットを敢えて書いたのは、これを言いたかったためです。標準化するためには手間暇がかかります。その手間暇は、標準化で得られる成果を考えたとき、投資ととらえるべきです。
経営者は、業務をブラックボックス化する人は、都合がよくても管理職にしない
本来、管理職は業務を掌握し、業務を改善してパフォーマンスを上げている事が大きな仕事です。ですが、不幸なことに業務を属人化・複雑化を進めてしまう人が管理職になってしまう事が見られます。
どんなに、その人が個人やチームで成果を上げていても、業務をブラックボックス化するのであれば、管理職にするべきではありません。その人が転職したら成り立たなくなるような脆弱な業務は、リスクでしかありません。
また、ブラックボックス化された業務は、不正の余地が入りやすいため、別の観点からも経営的リスクです。
さいごに
残念なことに、IT企業のセミナーでは「標準化しないとダメ」という事をいうのを、なかなか見ることが出来ません。
この原因は、かつてユーザーの作業に合わせて機能を作ってきたIT文化の影響が強いと同時に、どうも誤った「職人」観が根強いような気がしてなりません。
綿足は、達人や職人は決して否定せず、むしろ新たな境地を開拓して標準化してくれることに期待をしています。これをうまく図に表しているのがSECIモデルですので、最後にリンクを貼っておきます。