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DX戦記~プロセスデザインは何故うまくいかないのか?

「XありのDX」の構成として、ここまで、ビジネスデザインとプロダクト/サービスデザインを語りましたが、次はプロセスデザインです。

プロセスデザインとは

これも数多の書籍や論議がなされているので、それを読んでくださいと放り投げますが、ここでは、ざっくり「ビジネスを構成する、個々のファンクションと、そのプロセスが連なったシステムを創造すること」と定義しておきます。

しかし、プロセスデザインは、日本企業の多くでうまくいっていないように見えます。現場に裁量を与えて一見動いているように見えても、部分最適さえ果たされておらず、プロセスは人によって異なり、場合によって異なるという薄氷の上を歩むような脆弱なシステムになっているのです。

本文書では、プロセスデザインが大いなる失敗に終わるのはなぜか、そしてプロセスデザインを行うためにどうするかについて考察します。

プロセスデザインが失敗する原因

プロセスデザインが失敗する原因はいくつかありますが、ここでは主なものを3つ挙げます。

プロセスを意識していない

個々人にタスクを与えるだけで、タスクのスタイルを求めないため。その結果、システムはプロセスではなく属人化した作業の集合体となり果てます。

なぜか、ジャンプの漫画の主人公は属人的な作業に長けており、敵役の方がプロセスが明確でシステム化されていることが多いのが特徴的です。フリーザ様とか。そのため、主人公は心理戦によって敵役のトップをスタンドプレーに走らせ無いと勝ち目がないという構図になります。

視野の違い

システムを考えねばならないのに、情報が現場にあるため、プロセスを作る人の視野が現場だけになりがちです。その結果、個々のサイロ化したプロセスの集合体となった非効率なシステムとなります。

ジャンプの漫画の準レギュラーメンバーがサイロ化したシステムの中にいることが多いです。神様や界王様も、権力や権威の構造がシステム化してますが、ストーリーが進んで話がでかくなるに従い、それがサイロ化したプロセスに過ぎないことが露呈します。

 現状のプロセスに満足してしまっている

この満足の原因は2つあります。

  • ベンチマークが難しいため
    現在の市場でおきる競争は、均質的なシステム間の競争であることは稀で、比較基準を定めることが難しいためです。

    ジャンプに掲載される漫画は、ジャンルが多岐に分かれ、ストーリー展開も異なるため、その人気や面白みを比較することは難しいです。しかし、このような極めて複雑な対象であっても、基準を見出し比較可能であることは『荒木飛呂彦の漫画術』を読めば一目瞭然です。

  • 情報技術の知見がなさすぎてプロセスの問題点が分からないため
    競合が優秀な理由を、情報技術の格差に起因するシステムの優劣ではなく、根性に起因した優劣と認識するためです。そうなると、安直に低賃金で労働者を働かせ、使い捨てにするブラック職場が生まれます。

    ジャンプの漫画の多くの主人公は、勝ち負けが根性の良し悪しに帰結する展開が頻繁に見られます。その方が説明不要で楽だからでしょうか。確かに、勝ち負けをプロセスの問題にすると『JoJo』のスタンド戦のように、能力の食い合わせと戦略性を軸にした、複雑で奇妙な冒険となり読者を選ぶことになるのも事実です。ですが、実際のビジネスはこんなものです。

プロセスデザインを行うためにどうするか

というわけで、プロセスデザインを行うのは難しいという話で終わりたいのですが、じゃあ具体的にどうするんだという話もすることを、私は自分に課していますので、私なりの対処法を述べます。

プロセスを可視化する

プロセスは標準化せねば可視化できない。これを利用します。これによって、どんなやばいプロセスであっても、やばいなりに標準化された形になります。

ただし、注意すべきはISO文書でよくある、ウソまみれの可視化です。なので、他の対策と合わせてやらねばなりません。

人をローテーションする

人が変われば、否応なしに可視化されたプロセスの引き継ぎなり、習得なりが行われ、ウソを洗い出すことが出来ます。
昨今のアンチゼネラリストの流れに逆行するじゃないかという方もいるかもしれませんが、人がローテーションする程度で成り立たないような、脆弱なプロセスを潰す方が先です。蛇足ですが、誰を動かして、誰を動かさないかを考えるのも経営者の仕事です。

プロセスを変え続ける

アウトプットが変わらなくても、プロセスは延々と変え続けるべきです。そのようにして、新しい方式、新しい情報技術をプロセスに取り込むことで、システムのパフォーマンスとレジリエンスを高めなければ、あっという間に市場の中で、日本以外の企業に対する相対的優位性を失います。そして何より、次の新たなプロセスを創造するスキルを獲得することができます。

おわりに

ここまで、プロセスデザインの難しさについてダラダラと書いてきましたが、これを何とかしようとするのは、けっこう大胆に覚悟を決める必要があります。マジでやる場合、業績悪化や大量離職などが起きます。

ですが、ゆっくりと低下する業績と、変革に反対する人たちの居心地の良さが大事なのか、それとも、目指したい未来への挑戦が大事なのか、よく考えれば、結論は明らかでしょう。

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