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【医師論文解説】めまい治療の新常識!?"最初の10分ルール"【Abst.】


背景:


エプリー法(EM)は良性発作性頭位めまい症(BPPV)の治療法として知られており、施行直後に頭位性眼振が消失する即時効果があります。しかし、先行研究によると、EM中に間隔時間を設けると即時効果が減少することが分かっています。本研究の目的は、EM中のどの頭位で間隔時間を設けると即時効果が減少するかを特定することです。
方法:
後半規管型BPPVと診断された51人の患者を無作為に3つのグループに分けました:

グループA: EMの第1頭位で10分間の間隔時間
グループB: EMの第3頭位で10分間の間隔時間
グループC: EMの第4頭位で10分間の間隔時間

主要評価項目(POM)は、EM施行直後の頭位性眼振の最大緩徐相速度と、EM施行前の最大緩徐相速度の比率としました。この比率が大きいほど、EMの即時効果が低いことを示します。

結果:

グループAのPOMが最も小さく0.07でした。一方、グループBは0.36、グループCは0.49という結果でした(p < 0.001)。つまり、グループAが最も即時効果が高く、グループBとCでは即時効果が減少していました。
統計的に有意な差が見られたことから、EMの第3頭位および第4頭位での間隔時間が、即時効果を減少させることが明らかになりました。

論点:

研究結果は、EMの即時効果がBPPV疲労そのものである可能性を示唆しています。BPPV疲労とは、Dix-Hallpike試験を繰り返し行うことで頭位性眼振が減弱する現象を指します。先行研究では、EMの第1頭位を維持することでBPPV疲労の効果が持続することが示されています。
本研究では、グループAでBPPV疲労の効果が最も強く現れており、これはEMの第1頭位での間隔時間がBPPV疲労を維持・強化した可能性を示唆しています。一方、第3頭位や第4頭位での間隔時間は、このBPPV疲労効果を減弱させたと考えられます。

結論:

EMの第3頭位および第4頭位での間隔時間は、EMの即時効果を減少させることが明らかになりました。この結果は、EMの即時効果がBPPV疲労と密接に関連している可能性を示唆しています。

文献:

Imai, Takao et al. “Difference in the immediate effect on positional nystagmus for head positions with interval time during Epley maneuver: a randomized trial.” European archives of oto-rhino-laryngology : official journal of the European Federation of Oto-Rhino-Laryngological Societies (EUFOS) : affiliated with the German Society for Oto-Rhino-Laryngology - Head and Neck Surgery, 10.1007/s00405-024-08831-6. 28 Jul. 2024, doi:10.1007/s00405-024-08831-6

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所感:

本研究は、BPPVの治療効果を最大化するためのEMの最適な実施方法について、重要な知見を提供しています。EMの第1頭位での間隔時間が即時効果を維持・強化する一方で、後半の頭位での間隔時間は効果を減弱させるという発見は、臨床実践に直接応用できる価値ある情報です。
今後は、この知見を基に、EMの各頭位での最適な保持時間や、間隔時間の長さによる効果の違いなど、さらなる詳細な研究が期待されます。また、長期的な治療効果との関連性も検討する必要があるでしょう。
これらの研究結果は、BPPV患者の治療プロトコルの改善につながり、めまい症状の早期改善と患者のQOL向上に貢献する可能性があります。同時に、BPPVの病態生理学的メカニズムの理解を深める上でも重要な示唆を与えており、今後のめまい研究の発展に寄与すると考えられます。

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