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伊藤聡
2021年9月5日 21:36
商品が多すぎて選べない半年ほど前である。鏡にうつる自分の顔のみすぼらしさに嫌気がさし、スキンケアをきちんとしなければと思い立った。私の顔は全体的にひどかった。仕事帰り、電車の窓にうつった私はいかにも生気がなく、まるで「会社の金を横領してつかまった経理部の中年男性」といった独特の陰鬱さがあった。われながら、この容姿はどうしたものかと情けなくなったのである。できればもう少し、はつらつとした顔になりたい