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[慶應通信のころ #2]慶應通信の入学願書を書くときに私が出会った一冊

ずいぶん前に備忘録として書いていた投稿をサルベージしておく。慶應通信(慶應義塾大学通信教育課程)法学部甲類に入学願書一式を用意したときのささやかなエピソード。

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慶應通信の入学願書を書こうとして走りまわって探した〈ある一冊〉の本がある。

それは、加藤善夫著『カール・フォン・オシエツキーの生涯 ドイツ・ワイマル時代の政治的ジャーナリスト』(晃洋書房)という本(クソ高くなっている)。

この本、タイトルも著者もあまり知られていないかと思いますが、コラムニストだった故勝谷誠彦さんのメルマガで紹介されていたのです。もとはというと朝日新聞2017/7/30朝刊付のコラム「日曜に想う」のなかで言及されていた本でした。
当時の勝谷誠彦さんのメルマガを引きます。

歴史的な名コラムである。同じコラムニストと名乗るも恥ずかしいが、同業者として、あさいちばんに、いま人々の目に触れるであろうこの文章を紹介しておきたい。朝から霹靂に打たれたような感動を得た。朝日新聞の編集委員の福島申二さんの筆力にはいつも刮目していたが、これは素晴らしい。おそらく、タイトルを最後に書き終えて時に、彼は「やったな」と思ったのではないか。あくまでも推測(笑)。でもこれだけ大きな名句を引いて来るところには、かなりの、今回の文章に関する自信があったと私は思う。切るべきところがないので、やや、長くなる。

日曜に想う/一粒の麦、もし死なずば/編集委員・福島申二
南米コロンビアで、半世紀にわたる闘争を続けてきた反政府ゲリラ組織が、政府との和平合意にもとづいて武装解除を終えた。自動小銃など多くの武器が国連派遣団に引き渡され、約7千人のメンバーは戦闘服を脱いだ。その一人の言葉がよかった。
「敵を殺す生活から、子を育て、種をまく人生が始まる」。12歳で戦争孤児となり、戦闘員になった30代の男性だ。
国民どうしが殺し合った歴史と憎しみの克服は容易ではあるまい。しかし、そこには未来から差し込む光がある。和平を導いた同国のサントス大統領には昨年のノーベル平和賞が贈られている。

このコラム自体は中国の反体制活動家・劉暁波氏の死についての無念さと同じ事の繰り返しをしてはならないという戒めなのだが、彼と同じように、ノーベル平和賞を受賞ししかも獄死した人物がひとりいる。
それがカール・フォン・オシエツキーという人物である。台頭するナチズムに立ち向かった、ドイツの言論人にして平和運動家だった。
その生涯を追った本が、『カール・フォン・オシエツキーの生涯』という本なのである。

さて、どんな本なのか、ちと興味が湧いたので、ネットでさくさくっと検索してみたが、まずAmazonには在庫無し(追記:2023年5月20日時点ではユーズドで在庫アリ)。
ではということでめぼしいネット書店をあたるも同じ結果。
さればということで、「日本の古書店」を当たったが、ヒットせず。

では紀伊國屋で書店注文してみたらと問い合わせたところ、なんと本書は絶版、取り寄せできたないとあっさりと言われてしまった。再販予定もないという。

市中に出回っている現物がないとすると、頼るのは図書館しかない。こういうときは地元の図書館でも検索してみたが、在庫はなし。だいたい予想はできた。
ならばということで、都立図書館にでかけてみた。ここならばあるだろうと電車を乗り継いで行ったところ、たしかに在庫は1冊あった。
あったことはあったが、〈貸出中〉のフラグが立っている。

えっ、都立図書館って、貸出してもらえるのか?

と相談カウンタに問い合わせたところ、一部都内の図書館から要望があれば貸し出すとのこと。返却予定日はずいぶん先になっている。これではお話しにならない。

その他都内の図書館に横断検索をかけてもらったが、ヒットなし。つまりは都内ではこの都立図書館の1冊だけということになる。
がっくりしたわたしの顔を見て、司書さんは一言、
「それでは、神奈川県の図書館にも横断検索をかけてみましょう」。
そうか市立図書館にはなかったが、神奈川県の横断検索ならひょっとして・・・。
はたして、1冊あったのだった!
場所は神奈川県立図書館。かの司書さんは受付カウンタの電話番号も教えてくれたので、早速電話してみると取り置いてくれるという。
霧雨の中、広尾から桜木町・紅葉坂上まで赴いて、無事、加藤善夫著『カール・フォン・オシエツキーの生涯 ドイツ・ワイマル時代の政治的ジャーナリスト』(晃洋書房)を受け取ったのだった。
やれやれ。一日仕事だったよ。

(後日談)
一読しての話ですが、この本を慶應義塾通信教育の出願評論用の本にしてもいいかなと思ったのですが、結果的には出願の〈類〉を変更したので、取りやめたのでした。
こんなに苦労してハントしたのにね!


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