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金ぴか時代

史上最強の金持ちを生み出した資本主義の黄金期

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今、世界で一番お金持ちな大富豪は誰?と聞かれたら、即答できる人も多いのではないだろうか。

そう、Amazonの創業者にしてCEOの、ジェフ・ベゾスである。

じゃあ、物価とかも考えて、世界史上でもっともお金持ちだった富豪は誰か?と聞かれて、即答できるだろうか

それでもジェフベゾスじゃないの?いや、ビルゲイツじゃない?誰だろう…

多くの人は分からないはずだ。

正解は、ジェフベゾスでもないし、イーロンマスクでもビルゲイツでもない。

この人だ

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ジョン・D・ロックフェラー (1839~1937)

その純資産総額はなんと、2530億ドル!(2013年の価値に換算)

25兆円以上!(大事なので2回言った)

この記録を超えるものは、いまだかつて地球上には表れていない…

・なぜロックフェラーはここまでお金持ちになることができたのか?

・彼のような大富豪がゴロゴロ生まれたアメリカ草創期の黄金時代、金ぴか時代とは一体どういう時代だったのか?

・陰謀論とかなしで、ロックフェラーから現代人も学べるビジネスの極意とは?

解説していきたいと思う。

ジョン・ロックフェラーは1839年、アメリカはニューヨーク州リッチフォードに生まれた。

貧しい家庭に生まれ、父は変わり者で、生家も粗末な小屋のようだったが、必死で働いて家計を助けた。その時に簿記の知識を身につけ、1859年、知人と製造委託会社を設立。1863年には精油所に投資、1865年には持ち株を売却して得たお金を使い、精油事業を買収した。

ちょうど同じ頃、アメリカでは歴史的な出来事が起きていた。

そう、南北戦争(1861〜1865)

ロックフェラーが石油精製事業に本格的に乗り出したのと時を同じくして、南北戦争が終結し、アメリカは北部の工業を中心とした経済体制に移行、強固な連邦政府が国全体をまとめて引っ張っていくようになった。

他にも、この当時のアメリカはさまざまな社会変革が起こっていた。

1846年、ニューヨークとワシントンD.C.の間で電信が初めて開通した。それによって情報の伝達速度はかなり早くなったのは言うまでもない。

また、アメリカという国自体も、どんどん拡大を続けていた。建国時には、もともと13州だったものが、フランスとの戦争に勝ちパリ条約でミシシッピ川以東のルイジアナを獲得、さらにスペインからフロリダを、1803年には財政難のフランスからルイジアナを買収、1848年にはメキシコとの戦争に勝利してテキサスカリフォルニアを獲得。

ここで更に歴史的な出来事が起こる

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1848年1月に、カリフォルニアで金が見つかったのだ。

それはアメリカに併合されるちょっと前だったがその後すぐアメリカに併合された。その時点では金が見つかったことはあまり広まっていなかった。

だが噂話が広まるスピードは早いものだ。この年の12月には大統領のもとにも金発見の知らせが届き、連邦議会までもが新天地カリフォルニアで金が発見されたことを正式に発表した。

それからは、カリフォルニアを目指す人がめちゃくちゃ増えたのは想像の通りだ。

金を掘り当ててひと山当ててやろうと試みるさまざまな人々が、農民、労働者、商人、乞食や牧師までもがカリフォルニアに移り住んだ。

金が発見された翌年の1849年だけで、カリフォルニアの人口は10万人増えたと言われている。それまでカリフォルニアの人口が1000人足らずだったことを考えると、かなり重大な出来事だったと分かるだろう。

この、1849年に移り住んだ人々のことを、フォーティーナイナーズ(49ers)と呼ぶ。アメフトが好きな人は馴染みがある言葉かもしれない。

さて、ここまで見てきて勘の良い方はお気づきかもしれないが、アメリカという国は、東から始まってどんどん西へ西へと勢力を拡げていったのだ。領土が広まり、人が移動するにつれ、西側の人口も増えてきて、発展するようになって来た。

そして1865年、南北戦争が終結し、アメリカという国が1つになって大きい方向へと歩み出していった。

国が1つになると言っても、アメリカのような広い国、移動手段も馬車や船などしかない。ボストンやニューヨーク、ワシントンD.C.やフィラデルフィアのある東海岸と、サクラメントやサンフランシスコがある西海岸では大きな隔たりがある。

ところが、その隔たりが埋まる出来事が起きてしまった。

1869年、大陸横断鉄道の完成である!

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そして、この時代、アメリカは東西南北に、文字通り一体となったのである。

さて、ここまでは、ロックフェラーが事業を始めた当時のアメリカ社会の背景をお伝えしてきた。

ではそんな社会の中で、産業がどのように新たに生まれ、発展してきたのかを見ていこう。

1865年に南北戦争が終結した後から始まる輝かしい資本主義の黄金時代、金ぴか時代だ。

金ぴか時代という言葉は、「Gilded Age」の和訳であるが、Gildedとは金メッキを意味する。つまり表面だけ、成金という皮肉というか否定的なニュアンスが込められているのだ。この時代は新たな産業が生まれ、大富豪が誕生した一方で、独占や格差の拡大や政府の腐敗などが表面化していった時期でもある。

しかしあえて言おう。成金の何が悪いのだ。そういう時代の何が悪いのだ。お金持ちが生まれ、新しいビジネスが生まれるのは往々にしてそういう環境であって、それを嫌っていてはビジネスはできないのだ。歴史から学ぶというのならば、そういう時期が昔も、これからもあるという事実を認識し、そこで勝ち上がっていくにはどうすれば良いかを学び取るべきではないか。

だからこそ、私はあえて”金ぴか時代”という言葉を、資本主義の黄金時代とし、肯定的なニュアンスで使っているのである。

少々脱線してしまった。

さて、この時代の産業で特筆すべきなのは、この記事で一番最初に名前を出したロックフェラーが中心となった石油産業鉄鋼銀行などの金融業鉄道などだ。

イギリスで18世紀に始まった産業革命は、1830年代にはアメリカに波及しており、特に蒸気機関車を用いた鉄道が少しずつ敷設されていった。1860年代になると鉄道網は急速に広まっていった。そうなると、当然だが大量の鉄が必要になる。大規模な鉄鋼所をとりまとめて経営し、鉄鋼王となる者が現れる。鉄鋼王にして、史上2番目の大富豪と言われるアンドリュー・カーネギーだ。

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また、鉄道のような大規模な事業には多額の資金が必要になる。そうした事業にお金を供給するのは金融業だ。現在世界屈指の投資銀行である、J.P.モルガンチェースの元になった会社はこの頃誕生した。創業者はもちろん、J.P.モルガン。金融王としてさまざまな会社の資金調達や再建に関わり、アメリカ産業界にとって不可欠な存在となった。

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そして何よりロックフェラーが活躍した石油産業。

1870年には、ロックフェラーが所有していた石油精製所(既に世界最大級になっていた)をとりまとめ、オハイオ州で株式会社として正式に法人化し、スタンダード・オイル・オブ・オハイオ社が誕生したのだ。

ロックフェラーは、ひたすら利益の再投資と、ライバルの石油精製事業の買収を続けた。

普段から倹約してお金は貯めておき、必要な時には惜しみなく投資する

まさに金持ちになる方法を地で行く人だった。

ライバルの買収には、かなり強硬なやり方で批判も起こり、潰されたライバルの石油精製所の娘、アイダ・ターベルが、後に独占を手厳しく批判する記者として戻ってくるなど、社会的な軋轢は大きくなっていくことになる。

さて、このロックフェラーだが、石油産業の王ではあるけれど、油田を発掘して金持ちになったわけではない。

あくまでも油田で発掘された石油を精製し、使えるように加工し、輸送する。流通の部分を牛耳っていたのだ。

スタンダード・オイルという名称も、俺たちの会社が、石油の標準の品質を作り上げるんだという意味が込められている。

ロックフェラーがここまで大規模な企業体・流通網を作り上げられたのは、主に2つの要因がある。

1つめは優秀な科学者を雇い、石油の精製する技術をとにかく他よりも高めたことだ。ライバルをどんどん買収して大きくなるにしても、やはり大元の技術力がないことにはゼロをイチにする段階が出来ないからだ。

2つめは、当時発達しつつあった鉄道の輸送網を抑えたことだ。とにかくロックフェラーの会社が精製した石油の量は他を凌駕していた。圧倒的な数量の差があった。となれば、ロックフェラーの有利な方に取引を動かしやすいというのは、現代人でも容易に想像がつくであろう。鉄道会社はロックフェラーの会社の石油を輸送する際は値段を大幅に値下げするなどした。これはすなわちスタンダード・オイルの競争力が更に高まることを意味していた。

1878年までに、スタンダード・オイルはアメリカの石油精製能力の90%を占めるようになっていた。

さて、ここまで金ぴか時代の産業と成功した事業家について話してきた。

長くなってしまったので、金ぴか時代から学べる現代にも活きる教訓についてまとめていこうと思う。

まず1つめは、産業革命にも通じるものだが、社会的な変革や大儲けのチャンスは、さまざまな要因が重なって起こるということだ。

そして2つめは、そういったチャンスの時に成功する世代というのは、だいたい同じ時期に生まれ、それぞれが自分のできることをどんどん積み上げていき、同じくらいの時期にチャンスに乗れた、だいたい同じ世代ということだ。例えば、2000年代初頭の日本のネットバブルにしてもそうだが、その時に成功した人々は大体同じ時期に生まれ、同じ時期に起業していた。そして自分たちが生きる道を確立し、1つ1つ成功させてきた結果、成功した時期が重なったということだ。筆者はちょうど20世紀最後の年に生まれた世代なので、今後、第4次産業革命で同じ世代の人たちとともに、著名な成功者として肩を並べる日を心待ちにしている。今はそのために努力するだけだ。







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