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均輸法と平準法
国家が商売をする、物価に介入するのは是か非か
時は紀元前115年、中国を支配していたのは、武帝率いる前漢であった。
この時代、北方にある遊牧民族の国家「匈奴」への外征などにより、前漢は深刻な財政難に陥っていた。
財政再建のため、塩・鉄・酒の専売制などをとったが、特に大きかったのが、均輸法と平準法であった。
まず均輸法について説明する。
どの国でもそうだが、地方によって特産物があり、地元で多くとれるものは供給が多いため価格が安く、遠くの地域では希少性が高くて価格も高くなる。
そこで、政府がそれぞれの地域の特産物を強制的に納めさせ、不足している地域へと運び、安い値段で売る。そうすることにより、物価の地域差を無くし、一定にする効果があるというのが表向きの理由だ。
しかし、本当の目的は、国が堂々と商売することにあった。商売の基本のキは、「安く買って高く売ること」
当然、物価に地域差があれば、商人は安い地域で仕入れて高い地域に運んで売ろうとする。
それを国が全てやってしまうのだ。現代風に言うと、民業圧迫というやつである。
当然商人は苦しんだが、国全体の商売の大半を牛耳ってしまうということは、それだけ国庫が潤うということでもあったのだ。
そして、次に平準法について。こちらも似たようなものと言えばそうだが、前110年から施行されたもので、均輸法によって一気に買い付けされる時に物価が高騰してしまうなどしたため、今度は物価が安い時期に物資を買い付けておいて貯蔵し、高くなったら放出するという策を打ったのだ。
これも当然、物価の調整という表向きの理由はあるものの、本当の目的は国が堂々と商売をすることだった。「安く買って高く売る」を、国がやってしまうのだ。
・均輸法は、物価の地域差の解消
・平準法は、物価の時間差の解消
冷静に考えると、これは商売のほぼ全てである。商売のほぼ全てを国がやってしまうのだ。
国全体の商人の儲けに匹敵する額が国庫に入るから財政再建は出来よう。しかし、商人たちはたまったものではない。そして長い目で見ると、健全な市場原理の構築を狂わせるものである。
もちろん、この当時は国の力は現代よりも圧倒的に強かったし、自由権というものもない時代なので、現代の価値観であれこれ言うのは良いとはいえない。
そして現代ではこういったあからさまな行為は行われない。
とはいえ、価格統制や国が商売をするといったものが完全に無くなっているわけではない。
現代の日本、あるいは世界で、こうした行為を大々的にするべきだと主張する人がいたら、要注意と言っていい。
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