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レビュー『ハッカーと画家』

本日は天才プログラマによる、「創造のセンス」と「未来を見通す思考」を磨くための本をご紹介。

タイトルの「ハッカー」とは、コンピュータやネットワークに関する高度な知識や技術を持つ人々のこと。

決して「インターネット上で悪事を働く人たち(クラッカー)」のことではありません。

ハッカーを目指す人には必読書と言われており、会社人間の「ヤバさ」にも触りつつ、物事を創造することの本質に迫っており、独立や起業を考えている人にも、役に立つ視点が盛りだくさん。

本書の重要なメッセージの一つは「ルールに従うな!」ということ。

「ハッカーは規則に従わない。それがハッキングの本質なんだ。」

シリコンバレーが、イギリスやドイツや日本で現れなかったのは、「”正当な理由のある不服従”を許容する空気」がないからだと著者は語ります。

逆にアメリカにはそれがあり、アメリカの富と力の源はルールを破る人々からもたらせれたもの。

そして、ハッカーは例外なくジョーク好きで小生意気であり、コンピュータの世界では「最も賢い解」というのは、「悪ふざけ」と紙一重であることがよくあるそうです。

また、著者は、裕福になるためには、二つの環境を整えなければならないと語ります。

その二つとは「測定とテコ」で、まず「測定」とは、自分の生産性が測れる地位に就かなければならないということ

でなければ、頑張った分だけリターンを得ることができないからです。

そして「テコ」とは、あなたの決定が大きな効果を持つようにすること。

この二つをそろえた具体的な仕事の例は「映画俳優」。

仕事ぶりが映画の興行収入で測ることができ(測定)、自分の演技次第で、映画の成功を左右することができます(テコ)。

もう一つの例がCEOで、会社の成績が自分の成績になり(測定)、自分の意思決定によって会社のすべての方向が決まります(テコ)。

CEOにならずに「測定とテコ」を手に入れる方法は、「難しい問題に取り組む小さな集団に参加」すること、と著者はアドバイスしていました。

最後に、本書から抽出した「ハッカーの価値観」を紹介します。

ハッカーの価値観

前提を疑う

・良いハッカーはすべてのことを疑問に思う習慣を身につけている
・アメリカの会社では、変な服を着ていたり、無礼な発言をしたり、やれと言われたことを拒否するような人間はたいていハッカー
・マーケティング担当、デザイナー、プロダクトマネージャーといった人たちの意見を端鵜呑みにしない

スピード命

・コードは、ピラミッドみたいに、慎重な計画をしてから組み立てていくものではなく、一気に集中して素早く手を動かしながら常に変えていく、木炭スケッチみたいなもの
・ソフトウェアでは腕の良さは、素早い仕事を意味する
・価値は新しいものにあるので、速くやることが重要

手を使う

・作家や画家や建築家が作りながら作品を理解していくのと同じで、ハッカーはプログラミングを書きながら理解していくべき
・良いプログラム、ソースコードを見て学ぶ

好奇心

・ハッカーをとりわけ好奇心が強く、特に、ものが動く仕組みに対して強い興味を持っている
・良いハッカーになるカギは、自分がやりたいことをやること
・ハッカーに、ハッカー自身から望まないことをやらせるのは極めて難しい
・何かうまくやるためには、それを愛さなければいけない。ハッキングがやりたくてたまらないことである限り、それがうまくできるようになる可能性が高い

共感力

・ハッカーはユーザについてよく知る必要がある
・共感能力の高さは、技術的知識のない誰かに技術的な問題をうまく説明できるかどうかで測れる

おわりに

著者のPaul Grahamさんは、プログラミング言語・LISPの達人であると同時に、Yahoo!Storeの前身となるソフトウェアを作り、起業家として大きな成功を収めた人物。

本書では、コンピュータ時代にいかに発想を広げ、美しいものを作り上げるかを、さまざまな切り口から考察しています。

本書はあたりまえなことを、あたりまえに言ってくれており、読んでいて心地よささえ感じました。

また、「ビジネスに関して2つの事だけ知っておけばいい。ユーザが気に入るものを作るということと、使った金より多くの収入を得るということ」といったチャンスをものにするためのヒントに満ち溢れた良書でした。


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