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【映画レビュー】天才彫刻家との最後の思い出『ジャコメッティ 最後の肖像』


『鑑定士と顔のない依頼人』でジェフリー・ラッシュの演技に痺れてから、彼の作品リストを見てみると、『ジャコメッティ 最後の肖像』と興味深い作品があったので早速観てみた。

味わい深すぎる!

特に事件というようなものは起こらず、淡々とジャコメッティという天才と、天才に振り回されるアメリカ人ライターの日常が描かれている。

それだけなのに、なんと魅力的な映画なのだろう。

芸術家としての苦悩や破天荒さを、ジェフリー・ラッシュの見事な演技で描き出している。

ストーリーはいたってシンプル。

舞台は1964年のパリ。

名声を確立した晩年のアルベルト・ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)は、パリにアトリエを構え、妻と弟と一緒に住んでいる。

ジャコメッティの友人でアメリカ人作家であるジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)は、彼から肖像画のモデルを依頼される。

NYに帰国寸前だったロードは、彼の「2日で描き上げる」との言葉を信じ、彼のアトリエへ。

ジャコメッティは真っ白なカンバスをイーゼルに立てかけ、ロードの顔の角度を微妙に調整し、パレットに絵の具を出し、たばこをくわえながら描き始める。

ロードの帰国前日になっても絵は完成せず、仕方なくロードは帰国便の予定をずらすことに。

「いつNYに帰れるのか」とロードの心配など気にも留めず、ジャコメッティは「肖像画とは決して完成しないものだ」と不吉な言葉を発す。

あと少しで完成かと思われる度に、太い筆を使って肖像画をグレーで塗りつぶすジャコメッティ。

絶望するロードに「希望が最高潮になると、私は投げ出すんだ」と笑う。

何度か帰国便の予定を変更した後、このままではいつになっても肖像画は完成しないと悟ったロードは、ジャコメッティの弟ディエゴに相談することに。

「兄貴は時々、期限を守ることがあるから、期限を指定するといい」とアドバイスを得るが、大御所のジャコメッティにそんなこと言えるはずもない。

ひたすら耐えるロードだったが我慢も限界を迎え、ある作戦を思いつく。

果たして肖像画は無事完成するのか。

そしてロードは、恋人の待つNYへ帰れるのだろうか……

ジャコメッティが気に入った娼婦に対して散財し、「見えるものを見えるままに」表現したいが「どうせできない。不可能だ」と苦悩し、すぐに気が乗らなくなって飲んだり食べたりして憂さを晴らし、ロードを誘っての散歩中に核心をついたような発言をしたりで、「破天荒なジャコメッティの平常運転」を描いており決して飽きさせない。

特に絵を描いている途中、キャンバスに向かって「ファ〜クゥッ!」と言い、頭を抱え絶望するジャコメッティの姿が最高すぎる。

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