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書評 『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

現在の職業に関係なく、生涯にわたって身を助けてくれる文章力。

文章力を磨こうと書くことに挑戦し、「書けない」状態にぶつかった人も多いのではないでしょうか。

そんな「書けない」という悩みを「書けた!」に変え、文才は必要ないと背中を押してくれるのが本書です。

本書は以下のような方々にオススメ。
・文書を書くことに苦手意識があり、解決の糸口を求めている方
・ブログやnoteを始めようとしており、文章の入門本を求めている方
・社会人の方で、将来はビジネス書の出版をしたいと考えている方

これまで少なからず文章術の本を読んできましたが、この本に書かれている内容は、新しく、かつ説得力があります。

本書の目的は明確で、「話せるのに書けない状況を打破」することに主眼が置かれています。

本書の書き出しを見てみましょう。

 まず最初に、本書の目標を明らかにしておこう。
 僕は”書くこと”を職業とする、現役のフリーランスライターだ。そしてタイトルからもわかるように、本書は”文章の書き方”について語られた一冊である。ということはつまり、本書の目標は「文章がうまくなること」なのだろうか?
 残念ながら、少し違う。
 文章が上手くなる必要などない。
 本書が第一の目標とするのは「話せるのに書けない!」を解消することだ。
 より正確にいうなら”話し言葉”と”書き言葉”の違いを知り、その距離を縮めることである。

P7

潔い書き出しで、好感を持てます。

たまに出会うダメ本の特徴は、冒頭で「他の本とはどこが違うのか」がわからないこと。

それらの本とは反対に、本書は他との違いを明白にし、すでに話せることを「書く」にはどうしたら良いのか、について語っています。

本書を読んで、目から鱗がおちたのは「読者の設定」について。

それは、「10年前の自分」に語りかけるつもりで書くというものです。

 自分だけにしかわからない、誰にも理解されないと思われる根深い問題こそ、じつは普遍性を持った悩みなのだ。

p162

どんな時代も人間は同じようなことに悩み、苦しんでいるので、自分の抱えていた悩みを掘り下げていくと、普遍的なものを見つけることができます。

280日間、毎日noteを投稿していますが、ターゲットとする読者があいまいで、なんとなく、自分と同年代の男性に向けて書いていました。

今後は、10年前の自分が知っていたら、人生が変わったかもしれない有益な情報を書いていこうと思います。

そして、本書には「これは他人ゴトじゃない!」と読者に思わせる技術がもりだくさんです。

その一つが、文章にリズムを生み出す論理展開の型「起“転”承結」。

「転」を先にもってくることによって、文中の早い段階で独自の仮説を提示し、読者を検証作業に加わることで、「自分ゴト化」することができます。

具体的には以下の流れになります。

起:一般論を語り、「そうそう」と読者からあいづちをたたかれる
転:独自の仮説で一般論の否定をおこない、「ええ〜!」と読者の目から鱗をおとさせる
承、仮説をたてた理由や客観的事実を説明し、「なるほど」と思わせる
結、書き手の結論

著者の古賀史健(こがふみたけ)さんは1973年福岡県生まれ。

1年弱の出版社勤務を経て24歳でフリーランスライターになった経歴を持ち、共著である『嫌われる勇気』はベストセラーになりました。

そんな著者が文章術について語る本書は、タイトルの通り、20歳の自分に読ませたい一冊でした。

一見、堅苦しいテーマにみえますが、最初から最後まで飽きることなく読むことができます。

本書を読む前と読んだあとでは、読んだあとのほうが、明らかに文章に対する見通しがよくなっていることに気づくはずです。


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