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安野光雅『わが友石頭計算機』レビュー

個人的に大好きな絵本作家の安野光雅さん。

彼がコンピューターの絵本を描いているということで、見逃すわけにはいきません。

それが『わが友石頭計算機』です。

コンピューターの基本となる仕組みを、おとぎ話風の物語とイラストで説明してくれています。

スマホやパソコンに完全に依存している現代人は、コンピューターが「どんな間違いをおこすのか」を依然理解していないまま。

本書をつうじて、コンピューターは「加減乗除をくり返す石頭に過ぎない」ということを学ぶことでできます。(それでも十分すぎるほどパワフルなのですが...)


石頭とは?

なぜ石頭とついているのでしょうか?

それは、「コンピューターは間違えない」というような誤解を打破するため。

出版当時は、コンピューターを一人一台持つなんて考えられなかった時代。

いっぽうで「コンピューターの出した答えは絶対正しい」や、「コンピューターはなんでもできる」といった誤った認識がひろまりつつあったようです。

そこで著者は、コンピューターの本質をあばいてやれ!、とその動作原理を説き明かす絵本を描きあげました。

コンピューターは「加減乗除をくり返す石頭に過ぎない」ということをしめしたわけです。

設定のおもしろさ

17世紀にストーン・ブレイン博士が記した“My Good Friend: THE STONE BRAIN COMPUTER”という本を著者が翻訳し、挿画も描いた、という体裁をとっています。

ファンタジーとしても読めなくもなく、中世ヨーロッパを舞台に、コンピュータの原理を説明。

なんといっても、巻頭の「祠」と「序」がおもしろい!

人間がコンピューターを手に入れたことに関して、悪魔が神に文句を言う場面。

それに対しての皮肉たっぷりの著者がコメントがつづき、みごとに読書を物語に引き込んでいます。

内容

内容は大きく分けて以下の3つ。

ハードウェアの「2進法」。
ソフトウェアの「条件式」。
ロボットが「考えること」。

まず、2進数演算マシンとしてのコンピューターの原理について語られます。

(ししおどしを使って2進数を説明という工夫がなされています!)

次いで、その2進数演算マシンに対する指示書としてのプログラムについて。

最後に、ロボットと人間との関係について論じ、本書は幕を閉じます。

かなり前の本にもかかわらず、いまでも充分読み応えがあることに驚嘆!

コンピューターの基本原理が、いかにシンプルであり、強力なものかがよくわかります。

まとめ

本書は大人がたのしめる絵本に仕上がっています。

特別な予備知識は必要ありません。

2進法の計算の原理と、ソフトウェアのさわりがつづられています。

安野さんの説明に耳を傾けつつ、やさしい繊細なイラストを楽しめます。

本書をよんでプログラミングができるようにはなりませんが、コンピューターのパワフルな基本原理を学ぶことができます。

装丁も美しく、所有欲を充分にみたしてくれる一冊です。


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