小手先のテクニックではなく、子どもの存在を理解する

子どもと関わる技術を身につけるためには、何をすべきかだけではなく、どうしてそれをするのかということを知っていくことが大切です。

子どもという存在は、経験を積んだ人間(大人)よりも本能に沿って活動している。
しかし、その活動も子ども皆一人ひとり違うものです。だから、様々なところで子育ての経験談を見聞きし、テクニックを得たところで我が子してもうまくいかないものです。
(表面的にうまくいったとしても、親の一方的なコントロールで終わってしまう場合も多い)

野球選手の投手が、様々なボールの投げ方学ぼうとして、小手先のテクニックである握り方やフォームの改善をしようとしてもうまくいかないのと同じです。
そこで、投手はまずは基本を学びます。
野球の基本的なルールや試合運びの仕方などを学び、ボールを正確に投げられるよう練習をしていきます。
基本的な学びと練習の積み重ねで次第に投げられる球種は増え、たくさんの球数も投げられるようになるでしょう。

しかし、このまま試合に出たのではうまくいかないものです。そこにはバッターという相手がいるため、自分本位だけの投球では打たれてしまうでしょう。

このように、子どものことについて、小手先のテクニックを学び、同じように応用しようとしたとしても、先の野球選手と同じようなことが起こり得ます。


産科施設において、一般には赤ちゃんの抱き方やおむつ交換、授乳方法など、育児における指導を受けます。これ教わったからといって育児がうまくいくものではありません。
機械的に手順通りに支援を行うということは、子どもの感情を置き去りにしてしまっている可能性があります。
では何が大切かというと、子どもが「嬉しそう」とか「気持ちよさそう」というような、子どもの示すポジティブな感情に注目し、子どもの気持ちを“代弁”しながら会話をしてみたり、おむつ換えや沐浴といった支援を行うことが大切です。

実際にこのことを初産婦への支援方法の研究のの取り組みとして、上記の大切にするべきことを実践したところ、退院時の初産婦の様子には、従来と違う結果が見られたそうです。
・面会が楽しみになり、面会回数が格段に増えた。
・子どもへの言葉掛けが増え、赤ちゃんについてのスタッフの質問にはいつも笑顔で答えるようになった。
・退院することに大きな不安はなく、母親として自信を持てるようになった。

子どものとの関わり方を、客観的な知識からみた関わりではなく、より人間らしい基本的な関わり方にしたことで、自然と親が子どもとうまく関われるようになったのです。

だからこそ、子どもと関わるための小手先のテクニックを学ぼうとするのではなく、子どもという存在において正確な理解にもとづいた実用的な知識を身につけることで、親にとっても子どもにとってもよりよい環境の中で関わり合えるのではないでしょうか。

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