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あなたのすぐそばに? 農地減少の不都合とは?

農地の減少は昔からよく言われている問題だ。だが、農地が減って困る事とはいったい何だろう。食料生産性か、はたまた耕作放棄地か。まずはその本質よりも現状の説明をしたい。


日本の農地はこの60年間減少し続けている。農林水産省のデータによると、1960年には607万haあった農地は現在437万haになっている。約30%減っているわけである。


あれ? 意外と大したことないな。


と思ったあなた。農地を農地としてだけ見ると確かにそうなのだ。

農業における単位面積あたりの生産量は、この60年で驚くほど伸びている。若干頭打ち感が出始めているが、まだまだ伸びしろはあるだろう。しかし、オランダ式などの完全環境制御型の農業が良いとされていた時代は過去になりつつあるのだけれど、今はその話は置いておく。


つまりは農地としての能力は上がっているのだから、面積が多少減っていくのは管理維持や作業効率の観点から当然の流れではある。10aで10kgの収量だったのが、1aで10kg取れれば作業も楽になる。無駄な9aの維持管理がなくなるだけでかなり時間が節約できるというわけだ。


では何が問題か?


それは農地の多面的機能と言われる観点にある。

例えば田んぼの多い地域では大雨の際に貯留できる水の量が都市部とは圧倒的に違う。排水も含め土地保全の点で強いのだ。その他にも土砂崩れの被害縮小効果や、生物多様性の保全など、生産の場として以外のメリットが多くある。


知らぬ間に農地の存在による恩恵を私たちは受けていることが多いのである。ただそれは私たちにとって、その恩恵は日常すぎて気が付かないというだけだ。当たり前のようにそこにある景色や出来事としてそこにあるだけに、意外と気が付かないことも多い。そこが農地の良さでもあるのだが。


そしてこの事は国という立場からすれば、農地という場所は国土保全という大きな役目を担っていることになる。だから国はやたら農地に対して様々な支援金を出しているのだ。多面的機能支払交付金制度や、中山間地域等直接支払交付金制度などがそういった目的のために支払われる補助金だろう。


別に国が農業に対してえこひいきしているわけではない。

という事が分かっていただけるだろうか。


畑はいちど人の手を離れると、元に戻すのにかなりの時間がかかる。徐々に集約的に農業を行える環境を作っていく事は様々な観点から良いことだが、その反面、自然災害による被害の予防力は落ちていきかねない。


そのデメリットは地域に住む住民全体に及ぶこともあり、気が付かないうちに受けていたメリットを知らぬ間に失い事につながりかねない。


農業というものは元々暮らしの中にあった仕組みだ。今ではそれを一つの産業として生活や文化から切り離して考えている。その姿の変容によって生まれる微妙な誤差が、今の社会の中で小さな不穏分子になりつつある。


1人の農業人として、そして1人の日本人として出来ることは何か。今の立場で行えるポジティブな貢献を考え行動に移していきたいと、改めて思える話である。


これを読むあなたにとっても、農を身近に思えるきっかけになれたらと思う。




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