見出し画像

雑学マニアの雑記帳(その14)新潟県は何地方?

毎年、梅雨の季節になると、気象庁から梅雨入りや梅雨明けの情報が発表される。(実際には梅雨入りや梅雨明けの日付が正式に確定されるのは、ずっと後になってからであるため、「梅雨入り/梅雨明けしたと見られる」という表現で報道されることが多い。)
その報道の際に、「山口県と九州北部では~」という表現を見かけることがある。その他の地域の場合には、「近畿地方では」とか「関東甲信地方では」といった区分が用いられるのに、何故山口県だけ県単位の発表なのか、不思議である。何故そのようなことになるのだろうか。
気象庁のホームページを見ると、その謎はあっさり解決した。地域名の一覧を見ると、「関東甲信地方」や「近畿地方」と並んで、「九州北部地方」という区分が定義されているのだが、括弧書きで「山口県を含む」と注釈が付いている。山口県、福岡県、大分県、佐賀県、熊本県、長崎県の六県が、「九州北部」という括りなのだ。おそらく、この区分でひとまとまりとすることが妥当(気候的に似通っている等の理由で)という判断なのであろう。報道機関としては、単に「九州北部地方では」と言ってしまうと、山口県が入っていることが伝わらないために、「山口県と九州北部地方では」と言い換えているものと思われる。それにしても山口県を九州に含めてしまうとは、気象庁もなかなか発想が大胆である。
さて、同様に気象庁の地域区分では、「北陸地方」に新潟県が含まれている。一般的に北陸地方といえば、北陸三県(富山県、石川県、福井県)を指すことが多いが、気象庁の区分では、新潟県を含めて北陸四県がひとまとまりとなる。特に冬場は、日本海側と太平洋側で対照的な天候となることが多いことを思えば、この区分は理に適っているのだろう。
このように、日本全国を地方に区分する方法はひとつではなく、微妙に異なった区分方法が複数存在している。気象庁の区分では北陸地方に分類される「新潟県」であるが、この県は特に区分が難しいようである。「中部地方」に区分されることも多いようであるが、「関東甲信越」と区分されることも少なくない。特に、NHKの放送エリアとして「関東甲信越」地区という括りでローカル番組が放送されているため、新潟県民の日常の生活感覚としては、中部地方よりも関東甲信越という区分の方が馴染みが深いのかもしれない。
これが衆議院比例代表制選挙区になると「北陸信越」という、また別の区分が存在する。北陸三県に長野・新潟の二県を加えたもである。さらに、内閣府の「地域経済動向」の集計においては、平成二八年に見直しが行われるまで、新潟県は「東北地方」として区分されていた。
新潟県は日本海に沿って細長く、上越・中越・下越がそれぞれ別の県であっても良いくらい広域に渡るため、地理的・経済的・文化的な隣県との関係性が複雑に絡み合っているようだ。目的に応じて異なった区分が併用される事態も止むを得ないのかもしれない。
ただし、異なる区分が容認されるのは、あくまで「利用目的が違う」ことが大前提だ。同じ目的であるにもかかわらず、異なる地域区分が混在していては困るのだが、現状、そのような残念な状況に置かれている統計情報がある。地域毎の景気動向を見るための統計情報だ。ここで使用されている地域区分は、今のところ所管省庁によって統一されていないのだ。
新潟県は、経済産業省の区分では「関東地方」(実際には山梨・長野を含めた関東甲信越)に区分されているが、総務省・厚生労働省・国土交通省では「北陸地方」、日本政策投資銀行の区分では「東北地方」に区分されている。
同様に静岡県は、経済産業省の区分では「関東地方」、他の経済関係の省庁では「東海地方」または「中部地方」と区分されている。
仮に、こういった経済関係の統計情報が都道府県単位の集計情報と共に公開されているのであれば、利用者は任意の地方区分単位で集計し直すことも可能となるのだが、実際には必ずしも都道府県単位の情報が併せて公開されている訳ではないため、使い勝手が悪い集計情報になってしまっている。
天気予報の地域区分と経済データの地域区分が違っていても問題になることはまず無いと思われるが、経済状況に関する統計データ同士が異なった地域区分で集計されているというのでは、せっかく膨大な量の情報を収集・集計しても、複数のデータソースを有機的に結合して分析するといったことが困難であり、宝の持ち腐れとなる。
各省庁ともこういった問題点の認識はしているようなので、今後の改善が期待される。ビッグデータを有効に活用するためにも、各省庁にはきめ細かいデータの整理と公開を心がけてもらいたいものである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?