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雑学マニアの雑記帳(その15)満月二日前

2017年の仲秋の名月は10月4日であったが、その夜に雲間から顔を覗かせた月は満月には少し早く、やや飯櫃(いびつ)な形のものであった。実際に満月となるのは、その二日後の10月6日なのだ。旧暦に直せば、8月17日が満月となる。旧暦は1ヶ月が29日または30日であるから、真ん中は15日頃のはずで、17日に満月になるというのは、少し違和感がある。
その原因としてまず思いつく理由は、旧暦の日付の数え方だ。旧暦が使われていた頃の日本では普段の生活の中で「ゼロ」という概念は馴染まず、ものを数える時には必ず1から始まっていた。子供が生まれたらその時点で1歳、年が明けて正月が来れば2歳になる。大晦日に生まれた子供は翌日には2歳になる。この「数え年」では、満年齢よりも必ず1、2歳多い年齢となる。旧暦の日付も同様で、新月(月齢ゼロ)を迎えた瞬間に新しい月の1日(ついたち)となるため、月齢15の日は旧暦16日となる計算だ。
しかし、これだけでは17日に満月を迎える説明にはまだ不足だ。これは何か別の要因があるに違いない。早速調べてみることにした。
すると、実は「新月から満月になるまでに要する日数」は一定ではないということが判明した。13.9日で満月になる時もあれば、15.6日もかかる場合もあるという。原因は、月が地球の周りを回る軌道が円軌道ではなく、やや潰れた楕円軌道になっているためだ。つまり、月と地球の距離は近づいたり遠ざかったりを繰り返すのだが、近い時には公転角速度が早くなり、遠い時には公転角速度が遅くなるという性質があるので、新月から満月になる間の月と地球の距離が比較的近ければ短い日数で満月となるが、遠ければ満月となるまでに多くの日数を要することになる。
新月から満月になるまでに要する日数は、平均で14.7日程度であるのに対して、2017年の旧暦8月では15.5日掛けてようやく満月になるため、「17日の15夜」になってしまったのだ。ちなみに、この満月が新月になるまでには14.0日しか要していない。後半急いでうまく帳尻をあわせた格好だ。
これで当初の疑問は解決したことになるが、そうなると、新たに気になってくることがある。地球が太陽の周りを回る軌道も楕円を描く訳だから、地球の公転速度も一定ではないはずである。そのような話を聞いたことも考えたことも無かったが、実際のところ、どうなのであろうか。
地球は太陽の周りを一年かけて一周する訳だが、春分点(厳密な定義は割愛するが、春分の日の地球の位置だと思えば良い)を起点とすると、太陽を挟んで丁度180度反対側が秋分点となる。つまり、春分の日から秋分の日までの間に、地球は太陽の周りを半周回り、残りの半周を秋分の日から春分の日までの間に回って、1年後に元の春分点に戻ってくることになる。
さて、春分の日や秋分の日は、年によって日付は一定ではないが、春分の日は3月20日頃、秋分の日は9月23日頃である。3月20日から9月23日までは187日、9月23日から翌年の3月20日までは178日(うるう年の場合は179日)である。同じ太陽半周であるのに、所要日数はこれ程違っているのだ。あまり知られていない事実だと思うが、理屈には適っている。

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楕円軌道を描く地球の公転で、太陽との距離が最も近くなるのは一月上旬、逆に最も遠くなるのは七月上旬である。ケプラーの法則によって、太陽に近い時は速く、遠い時には遅くなるので、太陽を回る速度は冬に速く、夏に遅くなる。その影響は意外と大きく、前述のように、太陽の回りを半周するのに要する日数は、冬側と夏側で九日程も違ってくるのだ。ここまで大きく違うとは思ってもみなかった。日常生活の中にも、よく見ると興味深い事実はひっそりと隠れているものだ。

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